安静への道(33日目)

風邪が良くならない。
発症してすぐ近所のヤブ医者に駆け込んで「これ4日間飲んでダメだったらまた来て」の一言とともに速攻で薬をゲット、4日間飲み続けて比較的おとなしくしていたのだがサッパリ症状が変わらない。
ダメだったやんけと明日ヤブ医者に再び駆け込むか、ヤブじゃない病院に行き直すか、はたまた傷ついた野生動物のごとく穴ぐらでひっそりと身体を休めるか迷うところだが、持ち前の社畜パワーで明日の出社時間には回復していることをとりあえず祈るほかない。

しかし風邪を治すには、どんな薬を飲もうとも結局安静にしているのがベスト、という。
この週末、本当におれは安静にしていたのだろうか。

家からはほぼ全く出なかった。日曜の選挙の時だけ30分ほど外出したきりだ。
一見かなりの安静ぶりである。

でも考えてみれば、その間ずっと一緒にいたのは3歳児なのだった。
3歳児と同じ空間にいる人間が果たして安静にしていることは可能なのだろうか。

結論からすると無理である。
思い返せば四六時中遊びに付き合わされていた気がする。
中でも土曜朝の『おかあさんといっしょ』、誠おにいさんと杏月おねえさんの新人体操コンビによる殺人的新コーナー「あ・そ・ぎゅ〜」の記憶が蘇る。
このコーナー、げに恐ろしきは、若さとパワーあふれるふたりがひたすらチビッコを物理的に上げ下げする行動で大半が構成されていることだ。
きょうはみんなで動物園に行くよー。その一言から連想される嫌な予感は的中する。
「ぞうさんだよー」などとのたまいながらチビッコをぶらんぶらん振り回したり、片足立ちの膝にチビッコを載せて手を離し「フラミンゴー」などとにこやかに宣言する、まさに中年親殺しとも言えるメニュー。
これに、3歳児の要望をうけてフルに付き合わされた記憶がある。思ってたよりだいぶ安静じゃない。

子供がテレビを見たりして手が空いた時はどうしていたか。本をめくったりスマホをいじくっていた気がする。
なぜその間に寝ないのか?
3歳児という生き物は、自分が起きているときに親が寝ていると必ずボディプレスなどの暴力的手段を用いて起こしにくる習性があるからである。
でもまあ子供が手を離れてる時間は休みのうちに入るだろう、とタカをくくっていたのだが、今思うと本もスマホも「安静」には入らないのではないか。
例えば、こんな文章を書くのにも、スマホに数十分向き合ってシャカシャカやっているのだ。
わりと集中力を発揮しないとなかなかできないし、終わったあとはそこそこ疲労感がある。
現に風邪は治っていない。

こんなことを毎日やっているから安静になれないのではないか。
ひょっとして安静とは、本当に何もせずぼやっと布団に横たわってい続けることなのではないか。

え、それ無理じゃね?

ちまたの親御さんたちはどうやって治るまで安静にしているのだろうか。
いい手があったらぜひ教えていただきたい。
そしておれはこんなものを書いていないで一刻も早く安静に過ごさねばならない。

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