一冊のアルバム
教授から一冊のアルバムを借りた
絶対に泣くと思うと言われて渡されたその本は全く文字の書かれていないものであった
文字の書かれていない本でどうやって泣くのだろうと思いながらその本を開いた
そこには何気ない毎日が映し出されていた
スイカ、卵焼き、扇風機、カーテン
家族写真、夫婦の寄り添う姿
あとは書きたくないと思ったので自分が書きたいと思うことだけ書こう
私はどうして写真を撮るのか
綺麗だから
面白いから
そんなふうに応えることが多い
でもどこか今まで納得していなかった
だからなに、それをどうしたいの
今、少し、わかったかもしれない
私はそのものが撮りたいんじゃなかった
時を残したかった
今この時を誰と過ごして何を感じたのか
忘れないように大切に大切に残しておきたいと願っていた
時間が経つにつれて、なんでもない日常は消えていく
楽しかったこと悲しかったこと極端な記憶だけが残されていく
そんな極端な記憶に苦しめられて救われていく
でも確かに毎日の時は流れていて扇風機とエアコンの音が混ざったこの時は確かに存在する
私は写真で自分を救いたい
忘れたくない
そうやっていつまでもあらがっていたい
もし私が次にシャッターを押すとき
なにを忘れたくないのだろう
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