心に近づくこと

自分のことを知れば知るほど、自分が何なのかわからなくなる。
この自分を形作るもの、思考を形つくるもの、そのすべての理由を知りたくて、過去を巡り、何が本当に信じられるかを考えてきた。
正しいと思っていたことが、環境によってそのように型にはめられていたこと。
楽しいと思っていたことが、人との関わりの中で生まれていたこと。
すべてを取り払って、痛みを伴ってでも自分を探したら、そこには自分の心があった。
しかし、心はこちらからは触れられない。
感じることは止められず、そして誘発することもできない。
心に出会えるのはとても稀な出来事で、ただ漂ううちに、不意に顔をあげてはこちらに声を掛ける。
泣きわめくこと、静かに語りかけてくること、微笑とともに背中を押してくれること。
どうすればあなたに会えるのか。
もう感じることに疲れ果て、考える力も湧いてこない。
ただこの宇宙を漂い、無に消えてゆきたいのに、私を捕えて回し、巡らせ、また星々の隙間を縫うように仕向け、手を離す。
探し求めた心にされる仕打ちは、また自分で泳ぐ力を奪ってゆく。

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