感謝の力

「私は神様の前で感謝しただけです。そうしたら病気が治りました。私はこのように祈りました。神様、病気になったことも感謝します。病気で死ぬことになっても感謝します。神様、私は死の前で神様に感謝するしかありません。生かして下さるのであれば生き、死ねと言うならば死にます。神様、無条件、感謝します」

1976年に脊椎ガン3期の診断を受けたアメリカのスタンレー・タン(Stanley Tan)博士が自分が病気が治癒されて後、その秘訣を尋ねる人たちに話した言葉だ。当時、脊椎ガンは手術や薬物で治すのが難しかったガンだが、驚くことに「感謝」がガンを治したのだ。

このように感謝する時に病気が治り得るのは、感謝することが私たちの身体に肯定的な影響を及ぼすように神様が創造しておいたからだろう。実際に私たちの脳は感謝する時と、怒ったり恨んだりする時に活性化する領域が異なる。

腹を立てると、交感神経系が刺激されてアドレナリンのような神経伝達物質が分泌され、これが再び副腎を刺激し、ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌される。これによって血液が筋肉の方に集中し、血圧、血糖が上がって心臓の搏動が速まることになる。

一方、感謝すると側頭葉の中で社会的関係形成に関連した部分と楽しさと関連した快楽中枢が作用して、ドーパミン、セルトニン、エンドルフィンなど、いわゆる幸せホルモンが分泌される。そしてこれらの幸せホルモンの影響で心臓の鼓動が安定して筋肉が弛緩し、気分が良く幸せを感じるようになる。

日本IHM総合研究所所長の江本勝博士の研究はこれをよく示している。彼は片方の瓶に水を留めておいて「愛、感謝」などの単語を、他方の瓶には「憎悪、悪魔」などの単語を書いて貼っておいた。そして一ヵ月後、水粒子を分析してみたところ「愛、感謝」の単語を貼り付けた水は真っ直ぐで輝く美しい結晶体に変わっていた反面、「憎悪、悪魔」など否定的な単語を貼り付けた水の結晶体はその形がぼやけて奇形的にゆがんでいた。

似たような研究として、スウェーデン人女性とタイ人女性に同じ食べ物を与える実験もある。スウェーデン人女性たちは、トウガラシで真っ赤なタイ料理を見て「タイ料理は全く心惹かれない」と言って眉をひそめた反面、タイ人女性らは湯気が立つタイ料理を見て「わあ、おいしそう。タダでこんな食べ物を食べられるなんてありがたいことだ」と言った。そして食後に女性たちの血を分析してみたところ、タイ人女性らは食べ物に入っている鉄分をスウェーデン人女性たちより50%もたくさん吸収したことが分かった。この実験を見ると、食事の前にいつも感謝しなければならない理由を知ることができる。

UCバークレー大学のエミルリアナサイモン・トーマス(Emiliana Simon-Thomas)博士は、人が感謝をすればストレスや困難を克服できる回復弾力性が強化されると言う。感謝する時、他人をもっと助けるようになり、より寛大になるのだ。そして感謝すれば、生理学的により健康な心臓を持つようになって、心血管疾患などのストレスと関連した疾病にもっと強くなると言う。

一方、感謝の気持ちは成功の鍵として作用することもある。実際に世界最高の経営者たちは人生の最も大きな成功要素に「学歴、環境、能力」ではなく「感謝の気持ち」を挙げている。一例としては、日本のナショナル、パナソニックなどを設立して成功に導いた伝説的な経営者松下幸之助は、彼の成功の秘訣として3つの感謝を挙げている。

「とても貧しかったので、幼い頃から靴磨き、新聞売りなど、やったことがない仕事がないくらい多様な経験をできたことがありがたかったし、あまりにも体が弱かったので、健康に気をつけて運動に力を入れ、歳をとっても元気に過ごせるからありがたかったし、あまりにも学がなかったので、すべての人が師匠だと思って誰にでも尋ね、一生懸命に学ぶことができたのでありがたかったです」

ノースイースタン大学心理学科のデービッド・ディステノ(David DeSteno)教授チームも、大人を対象にしたマシュマロ実験を通して、感謝が成功の鍵であることを立証している。彼は被験者たちに何分間か感謝の気持ちを感じた瞬間、何の感情もない瞬間、幸せを感じた瞬間をそれぞれ思い浮かべるようにした後、1年後に100ドルを受け取るか、あるいはすぐに18ドルを受け取るか選択するようにした。

その結果、何の感情もなかったり、幸せを感じた瞬間を思い浮かべた場合には、今すぐの18ドルを選択する傾向が強かったが、感謝の気持ちを思い浮かべた人は1年後の100ドルを選択する人たちが2倍以上多いことが分かった。これを通して研究陣は、感謝する心が心拍数と血圧を下げ、不安や憂鬱感を減少させ、未来をもっと価値あるように思うようになって節制力を強化させると説明した。

アメリカの放送局アンカーであるデボラ・ノービル(Deborah Norville)は、彼の著書『感謝の力』において「ありがとうございます」という言葉によって喜びを感じるようになる時間は0.3秒にすぎないとし、「ありがとうございます」という言葉を「0.3秒の奇跡」と呼んだ。そして「ありがとうございます」という短い言葉が私たち人生全体を変える強力な力になるとし、幸せは「ありがとうございます」で始まって、成功は「ありがとうございます」が保証してくれると力説した。

いつも感謝することで、0.3秒の奇跡が私たちの生活に溢れるだけではなく、もっと大きな喜びと幸せ、そして感謝の好循環が私たちの人生で成されることだろう。

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