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悪夢くん

会社のPCを失くしたことが大ごととして、場合によってはニュースや新聞で取り上げられるようになってどれくらい経つか。前に勤めていた会社では、誰々がPCを失くしたという話を数ヶ月に一回は聞いた。大ごとになって各所に謝罪に赴くというようなこともあったが、それにも関わらずPCを無くす事故はなくならなかった。聞くと、たいていはPCを入れた鞄を持ったまま酒を飲み、その帰りに失くしてしまったということだった。酒を飲むもののなかには、いったん飲み出したら前後不覚に陥るまで飲まねばすまないものがいる。失くしたら大ごとになる鞄を持ったまま酒を飲み前後不覚に陥るということは、賭け金ばかり大きくリターンのまったくのぞめない博打に身を投じることだが、なぜそんなことをするのかは当人にしかわからない。自分自身はそのような失敗をしたことはないのだが、いつからか会社の鞄を失くす夢を定期的に見るようになった。はじめのころは夢のなかで鞄を無くすとただ悲観し、びっしょりと汗をかいて目を覚ました。そのうち、鞄を失くしたことに落ち着いて対処しようとするのだが、どうしてもうまくいかないという夢に変わった。夢の中で鞄が見つかることは絶対にないのだが、目覚めた時には「夢でよかった」という開放感を感じられる。悪夢のバリエーションとしては、会社の鞄を無くす、携帯電話を無くす、財布を無くすといった失せ物のほか、重要な打ち合わせに遅れるというものもある。どうしても適切な電車に乗ることができず、いつまでも目的地に着かないというものだ。ただし、これは夢でなく現実でもたまに経験する。


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