映画『ラ・ラ・ランド』を観て

 「夢は追うものだよ、どんどん行けよ」というメッセージだったのか。それとも「夢は夢だろ?」といいたかったのか、どっちだろう。「夢は追うもの」と捉えられればこの映画の感想はハッピーだし、そうでなければ約2時間のうちの、1時間50分ぐらいは辛い体験となる。

 ジャズピアニストを目指す男と女優を夢みる女の恋愛や葛藤を、華やかさときらめきを盛り込みながら送る、ハリウッドを舞台にした映画。男女がそれぞれ、音楽と映画という夢を追う。話は時間を追って進むが、置いておかれる小ネタも多くない。名作ミュージカルへのオマージュが多いからか、絵の構図に新しさは感じられなかったし、長回しのカメラワークは効いていないところもある。でもそれらを良い音楽とダンスがまとめていく。上質なシルクの布でサッと覆うように。

 私が涙を落としたのは、主人公のミアが歌う「Audition」。夢を追う“愚か者”への賛歌だ。夢を手にしようとするとき、そこには狂気がともなう。またその境地にたどり着いたとき、世界は色が変わったように見えると歌う。なんて素晴らしいクライマックスなんだろうと涙した。

 しかしこの先で観客はアレ、と気づかされる。もっというと騙される。本当のクライマックスはまだあるのだ。そこで観客は気づく。今までのは全て夢だったのか、と。全体的な印象はとても心地よく、手放しで人にすすめても間違いはない映画だ。しかし、最後の10分強のシーンを思い出すたびに、夢みることを応援されてはいない、夢みるものじゃないんだよといなされている、そんな風に思えてならない。それだけ衝撃なラストシーンだった。構図に新しさはない、と書いたが、新しさがあるとしたらここかもしれない。

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