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迷ってばっかの私たち


今日の朝ごはんはカレーパンだった
カレーパンの中に隠された夢に思いを馳せてるよ
逆三角形にこめられたソフトクリームの一部にも
あと、たい焼きのシッポ

水族館に行った時に、通うはずのない気持ちを指先に辿らせて、閉じ込められた精彩な魚に触れた
見返りは求めていない
ただ、その身体に流しこまれた私の気持ちを水に溶かしてほしかったの
私たちの間には絶対に越えられない透明な壁があるけど
その時の私は、違う生命体を愛おしく思う気持ちがあった

その日の夜に立ち寄った居酒屋は焼き鳥が有名だったね
向かい合って座ったふたりの間にはアクリルパネル
同じ染色体で構成されている私たちにも、越えちゃいけない壁と一線があったのかな

私たちが出会った頃、私はまだ作家を目指していなかった

普通の会社員で、普通に生活して、帰宅ラッシュの信号待ち、ただただ、普通に涙を流していただけ

私が目指していた完璧は、世でいう「普通」なの
だって私は分かっていた
「普通」より上にいく力も覚悟も私にはなかったこと

家の近くのカレー屋は値上がりしていたよ
学生時代によく通っていた本屋は、私が知らぬ間に閉店していて
もう連絡がとれない友達も沢山いるよ
私が変わらなくても、時間や街や流行りや人は変わっていく、素知らぬ顔で通り過ぎて行く

お風呂上がりに開けた窓が知らせる
気がつけば、初夏
涼しい風が、上昇した体温を段々と奪っていくのを感じる
カエルの鳴き声に耳を塞いで
目に見えぬ正体のない存在と私は、この6畳でじゃれあってから共に横たわる
その頃には少し肌寒くなっていて、明日は暑いかもと思っていたのに、深夜に放送される明日の天気予報に裏切られて半袖のパジャマを着たことに後悔するの

眠れないから考えるんじゃなくて
考えるから眠れないんだよね

人生には3度、チャンスが訪れるらしいよ
孤独は死に至る病っていわれてるんだよ
明日死ぬかもよ?って思ったら死への価値観が少し変わったの
私にとっちゃ孤独も、死も、そんな大したものじゃないのにね
言葉に支配されないのは大事らしい
忘れることも、弱さを受け入れる強さも、傷つくのをやめることも、全部大事なんだって

あんなに寝る間を惜しんで読んだ本の内容を覚えていない
自己啓発本は何度読んでも吸収できなくて、他人事にしかならない

海の中に入ったら息が出来なくて怖いけどさ、遠くから見た海は、私の存在なんか関係なく波が打ち寄せるから好き
やっぱり音楽は誰も離してはくれないから好き
トーストは少し焦げてるくらいが美味しくて好き
3分以上経ったカップラーメンも悪くないよ、きっと好きになるよ

忘れたくて忘れたんじゃないけど
忘れたくないから忘れたことにしている

この前、私の言葉は魔法だって言ってくれたよね

本当に魔法にかけられていたのは私なんだよ

明日生きようと思わなくていい、今日の絶望を無理に正当化しなくていい、頑張れないと泣いていいよ

でも、私たち、まだふたりで魔法にかけられて居ようよ。

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