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最大撮影倍率の話・前編 (11)

「レンズ仕様表の読み方」編シリーズ、その第11回。
今回は「最大撮影倍率」についてだけど話が長くなってしまったので前編/後編の2回に分けた

最大撮影倍率は最短撮影距離と同じくレンズの使い勝手の良し悪しに少なからずの影響がある

最大撮影倍率・前編

 被写体を実画面上に最大でどれだけの大きさに写せるか、それを倍率であらわしたものが最大撮影倍率だ。最大画像倍率ともいう。倍率数値が大きいほど被写体をより大きく写せる。
 撮影倍率1倍は等倍ともいい、1cmが撮像面上またはフィルム面上に1cmで写ることになる。0.5倍なら1cmが5mmに写る。

 仕様表での最大撮影倍率の表記は、かっては各メーカーばらばらだったが最近ではほぼ統一されている。ところが、多くのメーカーでは「0.25倍」とか「0.18倍」などと表記しているのだが、なかにはシグマやタムロンなど一部のメーカーでは「1:4.3」とか「1:2」などと表記している。

ニコンのほか多くのメーカーは最大撮影倍率値を「0.13倍」のように表記している この14-24mmズームの場合は、望遠端での最短撮影距離で最大撮影倍率が得られる
シグマやタムロンなど一部のメーカーは「1:6.8」のように最大撮影倍率を表記している

 ちなみに「1:6.8」とは「1÷6.8=0.147」だから四捨五入して「0.15倍」となる。他の通常倍率数値を表示するメーカーのレンズと性能比較するときに、そのつど換算しなくてはならないのがめんどうではある。

最大撮影倍率は最短撮影距離と「ペア」で考える

 多くのレンズでは最短撮影距離の時に最大撮影倍率が得られるのが一般的。だから最短撮影距離と最大撮影倍率は「ペア」になっていると考えておくとよいだろう。

 ただし、一部のズームレンズでは最大撮影倍率が、広角端のとき、望遠端のとき、中間の焦点距離のときなど、焦点距離によって最短撮影距離も最大撮影倍率も異なるタイプのレンズがある。
 そのため仕様表には、とくにズームレンズの場合だが、最大撮影倍率が得られるときの条件(焦点距離)が記載されている。なにも条件や注記のないときは単焦点レンズもズームレンズも最短撮影距離のときが最大撮影倍率と考えてよい。

こRF24-105mmの最大撮影倍率はやや"変則的"で、AFとMFで最短撮影距離が異なり、
さらにAFとMFで最大撮影倍率は焦点距離によっても異なる

 もちろん、ズーム焦点距離の全域で最短撮影距離は変化せず、最大撮影倍率は望遠側にしたときに得られるズームレンズのほうが多い。
 一般的に言って高倍率ズームレンズなどに焦点距離によって最短撮影距離が異なるものが多いようだ。

撮影倍率はフィルム時代の産物

 そもそも撮影倍率は、フィルム画面上に被写体がどれくらいの大きさで写っているかを基本にして定められた。フィルム画面に写っている被写体のサイズと、実際の被写体とを見比べれば倍率が実感できた。

 冒頭でも述べたが、たとえば35mm判フィルムカメラで500円玉(直径26.5mm)を倍率0.5倍に写したとすれば、フィルム画面上(36x24mmの範囲)に500円玉は実サイズの1/2の大きさ(直径13.25mm)に写る。倍率1.0倍(等倍)で写せば、フィルム面の500円玉画像に実物500円玉を重ねればぴたり一致する。

撮影倍率0.5倍にして500円玉を35mmフルサイズ判で撮影すると500円玉はちょうど半分に写る、撮影したフィルムを見れば1/2サイズに写っていることがフィルムと対比して実感(確認)できる
撮影倍率1倍(等倍)で500円玉を35mm判フィルムに写すと500円玉はぴたり実物と同じ
サイズに写る、左が実際に撮影したもの、右が35mm判フィルム上に500円玉を重ねて写したもの

 このように撮影倍率は、もとはといえばフィルム実画面上に写る被写体像とがモノとして密接にリンクしていたのを、デジタルカメラになってもフィルムカメラの「習わし」をそのまま流用(移行)してるわけで、もやもやしたものがある。

 デジタルカメラ時代になったのだから最大撮影倍率はまったく別の表記方法を採用すべきではないか、と思うわけだ。

 じつはレンズの最大撮影倍率を表すのに、デジタルカメラ時代にぴったりの良い表記方法があるのだが、それは後編で詳しく。


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