職務放棄先生

あらすじ

中学校に入学した俺は、やる気のなさ過ぎる担任高見先生のクラスに入ってしまった。掃除当番、日直、委員、なんの役割も決めないどころか、高見先生の担当英語の授業は全て自習。課題も出されず、予習の指示も無く、初日の授業で次のテストの範囲を言われるだけ。こんなのでどうやって英語を勉強しろというのだ?

学校生活における全てのことを、職務を放棄した先生の代わりに、生徒達だけで作り上げていく。混乱し、時に怒りながらも、生徒達は徐々に高見先生が教えようとしていることの真相を知ることとなる。

全て自主性に任された生徒達が不器用に、逞しく成長していくドラマ



春はあけぼの。

だか何だか知らないが、俺にもとうとう中学生になる時がやってきてしまった。

ランドセルを背負わない背中がいつにも増して軽く感じた。初めて制服というものを着る。やたら大きいサイズにされてしまったから、大きくならなければいけないらしい。視界に入る三年生の先輩達がやたら大きく見えてしまう。

本当にこんな風になれるのだろうか、、、


キーンカーンカーンコーン

ガララララ

「おーし、みんな席へつけー。ホームルーム始めるぞー。」

なんとも気の抜けた様子で入ってくる担任は、先生とは思えないほどだらけた様子で教壇に立った。掃除や日直もサボりやすそう。どうやら俺の中学生活は良いスタートを切ったらしい。

「出欠取りまーす。名前と顔覚える気無いから人数だけ数えまーす。席も今日は一応番号順になってるけど、明日から毎日違う席座って良いぞー。あ、視力悪い奴は前の方優先してやってくれー。その辺よろしくー。」

良いスタートではなかった。

最高のスタートらしい。

どうやら俺だけではなく、クラス全体がそう感じているようだ。緊張しながらもお互い周りを見渡し、笑顔が溢れている。


入学式を終え、再度教室へ戻った。

一応まだ番号順に座っているが、明日から好きな席でいいという言葉のおかげで、皆、名前を教え合ったり、どこに座りたいかなどを話している。初日とは思えない笑顔の量だった。

「はい静かにー。ちょーっと話聞いてくれー。早速だが俺の自己紹介をしておく。寝ててもいいぞー。嫌でもそのうち覚えるだろうから。はい、俺は高見。英語担当。このクラスの担任。以上!宜しく!」

なんともあっさりとした自己紹介だ。

「はいほんで、先に言っておくが、このクラスの掃除や日直は無い。各々の有志に任せる。何かあったらその都度みんなで話し合うこと。話し合いの時間が必要であれば、その時は俺に言ってくれ。」

クラスがざわついた。

つい先ほどまで笑顔だった生徒達の顔に曇りが見え始めた。無論、俺もだ。

「え、先生、それはまずいんじゃないですか?」

一番声のデカかった女子が、立ち上がった。

「お、そうか。それならどうする?」

気の抜けた返事が先生から返ってきた。

「流石に掃除や日直、それに委員もありますよね?決めておかないと誰もやらないですよ?ね、そうですよね?みなさん。」

クラス中から声が上がる。当然の反応だ。俺も声は上げなかったが、流石にまずいだろうと思う。なんせ俺みたいにサボる気満々の奴らがたくさんいるのが普通ってもんだからな。

先生が答える。

「お、それならどうする?どうしたい?」

全くもって指示を出そうとしない高見先生。

担任として、いや、人として大丈夫なのだろうか。

「話し合いをしなきゃ始まりません。先生、しっかりしてくださいよ!」

他の生徒も声を上げた。

先生が答えた。

「お、それなら話し合ってくれ。俺は座って見ておく。好きにしてくれ。」

ざわつきながらも、そのままの流れで掃除、日直、委員などある程度ざっくりしたことが決まった。

しかし高見先生は、最初に声を上げた女子が仕切って話し合いが進む間、話し合いに参加することなくただただ話を聞いていた。


どうやら俺の中学生活は、最悪のスタートだったらしい。





なんだかんだで時間は流れ、数日経ち、授業も始まった。相変わらず役目を果たさない担任に不安を感じながらも、他の先生は至って普通に授業をするようだから安心した。

そしてついに、初めての英語の授業がやってきた。

「はーいおはようございます。みんな元気かー?英語の授業始めるぞー。」

相変わらず頼りないだらしないスタートだ。一体どんな授業をするつもりなんだろう。誰もが不安を覚えた。

「はい、まず最初の中間テストの範囲。テキスト最初から37ページ。課題は無い。予習も無い。俺の授業中は、英語に限らずどの教科を勉強しても良い。英語について質問があったら、この授業中、いくらでも質問してこい。同じことだろうが範囲外のことだろうがなんでもいい。その都度時間の範囲内でしっかりと教える。と、言うわけで、基本的に自習です。じゃ、自習開始。」

全員が慌ててテスト範囲をメモしながら、なんのこっちゃわからないままに自習となった。

一体全体なんなんだこの教師は。

職務放棄か?教員免許は持っているのだろうか?

流石に複数の生徒が声を上げた。

「先生!それでは授業になりません!意味が分からないです!授業をしてください!」

当然だろう。いくら小学校でも英語の授業があったとは言え、中学校からはテストがしっかりあるし、なによりその先には高校受験がある。教えてもらわなきゃ、何がなんだかさっぱりだ。この教師は俺達を見捨てるつもりか?給料泥棒か?

そんなことを思いながら、先生からの答えを待った。

ひと息ついてから、先生は答えた。

「じゃあ聞こう。勉強ってどうやってやるんだ?」

教室が静まり返った。

「例えば1+1=2って教えられたとする。そしてテストに1+1=?という問題が出たとする。そしたらみんな、1+1=2って、覚えていたら書くよな?」

立ち上がっていた生徒達が、座り始めた。

「でもそれは、最初に教えてもらったから、テストで答えられた。そうだよな?

でももし最初に全く教わらないまま、テストをだされたらどうする?」

誰も何も答えられ無かった。

「ま、考えてみてくれ。ほい、じゃあ自習!」

何も教わることなく、その日は終わった。









書いていくうちに内容が長くなってきてしまったため、ここまでで一旦終わります。

社会性、自主性、多様性、コミュニケーション能力といった学ぶことが難しいことを、先生が職務放棄することによって学ぶことができるというストーリー。


シナリオ等書いたことがなく、思いつくままに書きました。

30分に収まりそうにない気もしますが、ご検討宜しくお願い致します。

続きはそのうち書きます。



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