私は〝愛〟を書きたかったのだ、という話①
この記事は先日完結を迎えた「渡り鳥の書簡シリーズ」を書き始めるに至った話や、それに伴って色々あったことをあーでもないこーでもない、とアレコレ書いている記事です。
これまでのように書くことに対する技術(?)的な話は一切していないし、身になるような話ではないのでご了承下さい。
無駄に長いよ。
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2018年の12月の中旬。
その年は仕事のスケジュールの関係で、12月の半ばから松の内までガッツリ休み、という驚異の年末年始休暇を頂いていた。
その仕事に就いてから数年間、定時で上がれるような時期もあったものの、割合としては毎日残業が1時間から2時間という方が多かった。
果ては5時間近く残業をして、地元で最も遅い時間に終電を迎える地下鉄を逃すこともあるような生活をしていた私は、すっかり《二次創作》から遠のいていた。
仕事だけが忙しかった訳ではなく、プライベートの状況が大きく変わった上に、その頃自分で創作をする程ドップリとハマっていた何かが無かった、というのもある。
仕事とプライベートとその他色々が重なって、二次創作どころか《オタク》から遠のいていたこの頃の私は、交友関係も大きく狭まっていた。
小学校からの付き合いのある親友がいるのだが、その年末年始休暇の時点で五年近く会っていないくらいだった。
元々仲がいいとはいえ、互いに頻繁に連絡のやり取りをするタイプの人間では無かったので、今思えば当然の結果だったと思う。
果たして、そのえらく長い年末年始休暇は、暫く仕事に忙殺されていた私を退屈させるのは簡単だった。
この頃の私は暇でもPixivどころかTwitterさえ開くことは無かった。
正直この頃暇な時に何をしていたかの記憶が無い。
本当に何をしていたのか。
とにかく、最高に暇を持て余した私は、部屋に積んであった数冊の漫画本を手に取った。
前述した親友から五年程も借りたままの漫画本。
この時借りたままだったのはjojoとHQと、よつや先輩、そしてhrakだった。
どれも借りてすぐに読んだものだ。
借りたままなので数度は読んでいる。
付き合いがとにかく長いので親友の貸してくれる漫画は性癖にピンポイントだしとにかく面白い。
暇を持て余した私はその時hrakを手に取っていた。
もう今思えば運命の瞬間というか、仕事とプライベートに忙殺されて本来私が歩いている道から逸れていた所を軌道修正されたのだなと思う。
借りたままだったのは一巻から三巻だった。
丁度それを借りた時、逢魔ヶ刻動物園をお返しした所だった。
これ超面白かった、と返した所、この先生の新しい連載なんだよ、と貸してくれたヤツ。
一度読んでいるそれを私はもう一度一巻から三巻まで読んだ。
刺さった。
続きが読みたすぎる。
あれそういえばこれアニメ化してたよな?
とそう思った私は、すぐにスマホを手に取って某アニメ配信サイトに課金した。
本当に年の暮れの話だ。
確か12月の30日とかその辺だったと思う。
年越しの最中、私は紅白もガキ使を見ることはなく、ただひたすら家のクソWiFiを使ってDLしては、その時1期から3期まで配信されているhrakを見続けた。
これはやばいぞ。
と、そう思いながらアニメ一気見に興じた私は、そのままPixivの探索に入った。
毎夜毎夜。
とにかくアップされている作品を漁りまくる。
沼に堕ちた。
ヤベェ…、とそう内心で繰り返しつつも、年が明けて2019年になっても読み漁るのは続いたし、本屋で単行本を一気に買うなどした。
今思うと、もうこの時点で引き返せねぇんだよな。
そして年が明けてからもPixivで古い投稿順に作品を漁りまくっていた私の中に、ポツリとあるものが湧き上がってきた。
〝何か書きたい〟
私は基本的に何かのジャンルにハマった時に「このジャンルはROM専でいろよ」と自分に言い聞かせる。
実際それでROM専だけだったジャンルの方が割合的には多い。
それでも二次創作に手を出してしまった作品は数作あるが。
後者になる度に自作を見ては絶望するので、学習しないなぁと思う。
そしてhrakは後者の方だった。
もうとにかく、自分も何か書きたくて堪らなかった。
新参も新参なのでジャンルの友人など一人もいないし、本当に自分が書きたいという自己満足の為だけに、私は書き始めた。
この時私は何を思ったのか、五年くらい前、最後にハマっていたジャンルでもやらなかったことをやり始めた。
それが「プロットを作る」ということだった。
何故そんなことをしたのか正確には思い出せないが、まだ沼落ちして日が浅かったことと、自分の中の解釈を整理したかった、というのがあったかと思う。
それに最後にハマっていたジャンルの頃は学生だったり、事情があってニートなどを謳歌していたので、その時ほど創作にあてられる時間が少ないということもあった。
プロットを始めたのが、2019年1月21日のことだ。
某林檎スマホに標準で入っているメモに、メモの作成日を表示する機能が無かったら多分覚えていなかった。
私はその時捻り出せる全ての自由時間を、スマホのメモ帳にネタとして書きつける時間にあてた。
最初は話の流れを書きつけていただけのメモに、時系列を整理する為の表まで作られた。
確かこの時、話の中に出てくる戦闘シーンを書く為にその時持っていたレシートの裏に作戦配置図を書いた。
そんなことをするのも初めてのことだった。
そして私はプロットを初めて約2ヶ月が経った、2019年3月25日。
遂にhrak沼における最初の作品「前略、留鳥の君へ」をPixivへアップした。
2ヶ月に渡って謎の熱量に突き動かされて書き上げた作品をアップした時点で、私は達成感と共に満足していた。
よし、ROM専に戻ろう。
そう思った。
この時私は達成感と同時に、今までハマって二次創作に手を出したジャンルのことを思い出していた。
それまで好きに作品を書いてはアップなどしていたものの、大して評価も閲覧数も貰えていなかった。
数字が全てでは無いと分かってはいたものの、数字は間違いなくモチベーションに繋がっている。
私は過去の経験から、そのうち他の方の作品を見ては自己嫌悪するだろう、ということも分かっていた。
書くモチベーションも、自分の作品で胸を張っていられる程の自信も、全くと言っていいほどない。
だから私は「前略」をアップした時点で2作目を書こうなどとは、これっぽっちも思っちゃいなかった。
ところがだ。
完全に沼落ちしたと同時に復帰していたTwitterにあるリプライが飛んできた。
フォロワーじゃない人からだ。
大したことはツイートしていないので、なんだろう、とリプライを読んだ。
自己満足の為だけに書き始めた「前略」の感想リプライだった。
しかも1ツイートだけじゃなく、複数ツイートに渡る、ものすごく真摯に綴られた感想だった。
さらに私の驚きはここでは終わらなかった。
翌日3月26日、Pixivの運営からメールが届いた。
「あなたの作品がランキングに入りました!」
はい?
目を疑った。
ルーキーランキング???女子に人気???
嘘でしょ、とリアルに震えながらメールを見た記憶しかない。
しかもこれもここで終わらなかった。
さらに翌日27日。
また運営からメールが届く。
また震えながらメールを開いた。
デイリーランキング???
正直な話。
「前略」をアップしてからの数日は戸惑いしか無かった。
本当に自己満足だけで書いた話だ。
こんなに評価されて良いものだとは、これっぽっちも思っていなかった。
何せ、私は学もなく、共に沼で遊ぶ友人もなく、本当に自己満足の為だけに書き始めた話をアップしただけだ。
しかしだ。
私は単純なので感想を頂いたことも、ランキングに入ったことも、嬉しくて仕方が無かった。
人生で初めて、ここまでの評価を頂いた。
初めてまともにプロットを立て、作戦配置図を描き、調べ物までして書いた自己満足の作品を、評価して頂けた。
今思えば、ここが私の《創作》のターニングポイントだった。
続く。
追伸。
この文章を書きながら自作を振り返り、「前略」は《誕生日》がキーワードだったな、となんだか懐かしく思う。
そんな私は、本日誕生日だったりする。