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災害時これだけはガマンができないこと!~みんなに知ってほしい事実~

なかなか語られない事実・・・災害現場の現実

東日本大震災から10年目を迎える2021年3月に災害用トイレの調査を行いました。防災対策の現状と実際の被災者の体験とを比べてみると、疑問に思うことが多く、仕事で参考にするだけではもったいない発見がありますので、ここで披露させていただこうと思います。

私は、防災用品の開発・販売支援の事業を営んでいるので、企業や自治体の防災備蓄を見る機会が多くあります。そのなかで、企業や自治体の防災対策は、どこも一律同じような準備をしているなと感じています。もちろんすべて見て回ったわけではありませんが、騒音や有毒排気のため室内で使えない発電機を燃料も用意しないで避難生活用に備蓄していたり、充電しないと使えない蓄電池が箱に入ったままだったり、非常用のトイレやトイレットペーパー等が人数に対して足りなかったりと企業の備蓄品や、マンションの備蓄を実際に見ると驚きの惨状です。
では一度ゆっくり考えてみてください。


もしご自分が妊娠中だったとして、自宅で一人旦那さんを待っている時に、大地震が来たらどうしますか?
二人の小学生のお子さんとおばあちゃんだけで、自宅にいるときに地震が来て、子供の両親が自宅に2日間帰って来られなかったらどうしますか?
女子だけの学生寮に住んでいて震災で長期間停電になったとして、3日以上その建物で避難生活することになったらどうしますか? 


どの家庭も実は非常に具体的に今の環境にあった対策や準備が必要であり、その内容はそれぞれ大きく異なります。災害時にマンションに住んでいるのと、会社にいて自宅に帰れない状態と、旅行先のホテルにいるのとでは、取る行動もすぐに必要なものも全く異なることが事実です。
災害グッズがまとまって入っている防災リュックや便利な防災対策セットをホームセンターでよく見かけます。しかしどうでしょう、実際に防災セットの中身を試した人はどれだけいますか?
非常用トイレに実際に排便してみた方はほとんどいません。防災用品を販売している営業マンでさえ使ったことがない人がほとんどだと思います。

 そこで今回の調査は、実際に被災経験のある女性だけに絞ってアンケート調査を行いました。
結果、災害時に圧倒的に心配なものは【トイレ】でした。しかし、非常用トイレの備蓄をしている方は、実際に非常に少ないという結果に正直驚きました。
今、この瞬間大地震が発生して停電が起き、建物が大きく破損した時に、みなさん『何が必要ですか?』そう聞かれたら、欲しいものをいっぱい答えるでしょう。
しかし、『本当に我慢ができないものは何ですか?』と聞かれたらどうでしょう、かなり答えは変わってくると思いませんか。
災害に備えるために必要な思考は、『いざ、という時に何が必要ですか?』を考えることではなく、非常時において『どうしても心配なこと』、『我慢ができないもの』を考える思考です。
新型コロナ禍でみんなが知った言葉にエッセンシャルワーカーという医療関係者を指す言葉があります。まさに災害にも本当に我慢が出来ない必要不可欠な備蓄をエッセンシャルグッズと言っていいのではないでしょうか。その災害時の必要不可欠なエッセンシャルグッズこそ、【トイレ】です!

では実際に被災時のトイレが、いったいなぜ一番心配なのか、その理由を想像してみてください。

理由① 我慢がもっともできない!
当然、災害直後にまずやることは命を守る行動です。その後に一番困ることは、生理的に我慢ができないトイレです。携帯もすぐに電源は切れません、明かりも携帯でどうにかなります、水も食料も我慢はできます。

理由② 水洗トイレは流せない! 
停電と災害による配管破損の危険がある水洗トイレは一切水が流せません。
それを知らずに一度でも排便してしまうと、もうその上に非常用トイレも設置できません。
まずは、停電したら非常用のトイレ袋をすぐに設置することです。男性であれば外で立ちションすればと考えますが・・・・・女性はそうはいきません。仮説トイレの設置を待っている間、非常用トイレは優先順位1番の備えです。

理由その③ 停電中のトイレは暗くて使いづらい!
停電時のトイレは、オフィスのトイレも自宅のトイレも、暗くて不安なものです。そのため、初めて使う非常用トイレへ安心して排便することがなかなかできません。トイレにおける小さな灯は重要です。

理由その④ 災害の混乱に乗じておこる悪質な事件!
避難生活中に仮設トイレを使った経験のある女性は、驚きの体験を教えてくれました。それはトイレの周りの不審者です。こんな悲惨な災害時でも女性トイレをのぞく不審者が多くいるそうです。さらに報道機関がなかなか扱わない暴行事件や盗難も発生してます。不安で仮説トイレに行けずに体調を壊す女性が多い理由は、このような現実が起こっているためです。非常時でさえ人間の欲望とは恐ろしいものです。

理由⑤ 男性では気づきにくい女性特有のトイレの悩み!
男性にはわかりにくい事かもしれませんが、女性は排便のためにだけでなく、生理用品交換のためにもトイレに行く必要があるります。そのため、トイレの頻度、トイレ内の照明、トイレ内で物を置ける棚の設置、トイレットペーパーだけでなく生理用品の予備の用意が重要だということです。現在の新型コロナ禍の影響で貧困化した女性の方々が生理用品の支出にも困っている事実は、男性には想像がつかない重大な社会問題になっています。防災も事業も、使う人の立場になってシーンを思い浮かべれば対策の優先順位が見えてきます。

理由⑥ トイレの音!
 避難生活時であってもトイレ使用時の音は聞かれたくないものです。災害発生後の日々はとても静かになり音が一切ありません。トイレに多くの人が行列をしている状態を想像してみてください。家族だけのトイレであっても使用時の音を聞かれたくないのは、大切な心理です

理由⑦ 小さなお子さんの存在!
最後に、防災対策の仮説トイレにおいて見落としがちなのは、小さなお子さんを連れてトイレに一緒に入れないことです。小さなお子さんは災害時のみならず平常時でもトイレに一人で入れません。子育て中の女性を想定して準備をすることは、本当に役立つ防災対策になるということです。

どうですか、いろいろ災害についての現状がわかっていただけたのではないでしょうか?私はもう十分大人で、災害時にもどうにかサバイバルできるなんて思っているビジネスマンのあなた、もし奥さんが1歳のお子さんと自宅マンションで停電の中、あなたの帰りを2日間も待ち続けていると想像してみてください。ご自宅には自分たちに合った対策をされてますか?もしそうなったら頼りになるのは近所の友人やコミュニティーです。しかし準備を怠ったた友人家族に、自分とお子さん用の大切な備蓄品を渡してあげられる勇気は、友人でさえなかなか出ないと思います。

最後にもう一度。歴史上、必ずやってくる大災害に向け生理的に我慢ができないトイレの対策を、最低限準備することを忘れないようにして欲しいと願っています。


株式会社THINK vinc.     https://www.thinkvinc.co.jp/



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