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歌と宿る人格と仲間と大人と舞台を駆け抜けた全力ランナーの話

ネタバレを避けるためとかでアップするタイミングをはかった挙句、いろいろなことを見失ってお蔵入りになっていた舞台レポをこっそりとほぼそのまんまアップしておきます。
以下、7月の初演時に書いたものです。いまさら時制的になんかアレだったりするのはスルーしてあげてください。ぼくたちはこの世界がやさしさに満ちていることを信じています。

■ミュージカルを観てきた!

といったわけで。
日本青年館まで「オープニングナイト」~桜咲高校ミュージカル部~を観にいってきましたよ。

エビ中・星名さんが初めて挑戦するミュージカルで、4日間6公演のスケジュールが組まれたもの。主演はだいすけお兄さんこと横山だいすけさん。星名さんのほかにも超ときめき宣伝部の小泉・杏のおふたりや、元・宝塚星組トップの湖月わたるさん、スーパーひとしくん人形でお馴染みの野々村真さんなど、多岐にわたる豪華なキャスト。けっこうガチな奴じゃないですか。

ぼくも星名さんのチャレンジを見届けようと、奮発して公演初日と千秋楽のチケットをゲット。2回も観に行けて幸せだと思っていたら、まわりの星名さん推しの面々は当たり前のように6公演全通するとのこと。すごい。
や、わかるんですよ。その情熱はもちろんわかるんですよ。でも木曜日~日曜日の4日間で6公演ですよ。皆さん富豪かよ。そして平日ですよ。おしごとは…。いえ、何でもありません。

■たのしかった!

で。無事に千秋楽の幕が下ろされました。
先に言っちゃおうかな。観に行って良かったです。楽しかった。素晴らしかった。6公演すべて観劇した方のお気持ち、本当によくわかります。よし。これでこの記事の論旨はすべて書き終わった!

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というわけでここからは感想とかをつらつら垂れ流そうと思います。
オープニングナイトの運営チームは何か次の展開を考えているようで、なるべくネタバレはしないようにと公式ツイッターに記しています。ぼく的には直接的なネタバレをするつもりはありませんが、以降、所々で何らかに抵触してしまうかもしれませんのであしからず・・・。
本稿は2021年7月公演の感想となりますが、もしかしたら将来の再演の際にでも、このnoteに辿り着く方がいらっしゃいますかもしれませんね。そんな未来人の方々は、ネタバレになる可能性もありますので、何も見なかったことにしてこのページを閉じてしまってくださいな。いいなあ、未来。

■どんなミュージカルだったのか

てなわけで、一応あらすじから。導入のみ。

舞台は全国有数の進学校。幼き頃にこの学校で見たステージに感動し、ミュージカル部を志して新入生として入学したマイ(星名美怜)だが、部は数年前に廃部になっていたことを知る。熱血教師テッペイ(横山だいすけ)と共に仲間を集めミュージカル部の再設立を目指すも、学園の風紀に合わぬと校長(湖月わたる)や配下の教師たちの猛反対を喰らう。しかしマイは校長や学園の理事長と約束をとりつけ・・・


物語的にはスカッとするストレートなやつです。
教師と生徒、大人と子ども、いまの現実と将来の夢など、それぞれの人物のキャラや立場や対立や葛藤がわかりやすく描かれつつ、どんどんストーリーが進んでいきます。
このさいもう書いちゃいますけどね、ラストでは主人公・マイの熱意が実って、学校中を巻き込んだミュージカルが大々的に開催されます。お話的にはところどころご都合主義的な展開も見え隠れしましたが、そんなもんちっぽけなこと。溢れる疾走感とそれを彩る歌とダンスがとてもゴージャスで、観劇が終わってみると納得感しかなかったのでした。

そうなんですよ。
これは演劇ではなくて、ミュージカルなんですよね。もちろんストーリーの辻褄も大事なのですが、それよりも歌のありかたが重要。物語にしっかりした歌が載せられると、ステージ上に広がる世界がまた1ステップ上に上がるのです。そこで起きる様々なことが、様々な感覚を呼び覚ましてくれるものなのです。ミュージカルって素敵。

■どんな作品であったのか

それではミュージカルとしてこの作品はどうであったのか。
ぼくは今までミュージカルなんて数えるくらいしか観てきていませんので、だいぶ稚拙な感想しか書くことができませんが、その前提で…。

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まずは歌についてですよね。
主人公のみれいちゃんは、ご存知のとおりエビ中さんというアイドルグループ様の一員です。失礼ながら、彼女はエビ中の中では、いわゆる歌ウマメンバー枠とカテゴライズされることはあまりありません。正直にいうとぼくは彼女の歌が少し心配で、音を外しちゃったらどうしようとか下衆なことを考えていました。

結論、彼女はちょっとした音外しくらいはありました。でもそんなもん、全然問題のないものでした。
まず、彼女の声は音域が広く、地声がけっこうな高い音程にあります。星名美怜特有のちょっと高めのキラキラ感満載の歌声。これが青春一直線の主人公キャラに非常にマッチしていたのです。

そしてちょいと暴論になってしまうかもしれませんが、彼女の音程の少しのブレこそが「大人未満」である高校一年生のマイという女の子の人物描写にピッタリだったとも思うのです。彼女が完璧なピッチを持って完璧に曲目を歌いこなしていたとしたら、マイという女の子の人物像がどこか違ったものになっていたのではないか。ある意味そういったちょっとした隙や無造作感が、主人公への共感の入口として良質に作用していたように思えるのです。

そうそう。念のためのフォローですが、ぼくが観劇していた限りでは、彼女の歌には聞き苦しさに繋がるような音程のブレなどはありませんでした。

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キラキラした主人公に対して、陰のある仲間キャラを演じたのが小泉遥香、通称おはるさん。普段は超ときめき宣伝部というグループアイドルで活動していて、現実世界ではみれいちゃんの後輩にあたります。
彼女の歌を生でまともに聴いたのは初めてだったのですが、これがびっくりするくらいしっかりしたものでした。父親との衝突など悩みと共に生きる役柄を、歌に載せこんで演じていたおはるさん。ある時は困惑の表情、ある時は涙をこらえるような表情を見せながら、軽く震えたり抑揚をつけたり太さと細さを操ったりで歌声にも感情を載せまくる。上手いとは聞いていたものの、ここまでの技術を魅せてくれるものだとは思いませんでした。
彼女が持っていたのは、あまり隙のない側の歌声。これが彼女の演じる、他人に対してガードを作らざるを得なかったレイコというキャラクターにピッタリ。歌声というものにも人格が憑依するのだと、ふたりの歌を聞いて強く意識させられたのでした。

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ひとりずつ書いていくと膨大になっちゃうので端折りますが…
マイやレイコと一緒に新入生役を演じた4人も、魅力的なキャラクターとしっかりとした歌声を持っていました。マイの親友ヒロミ役の河村花さん。おとなしいエリカ役の杏ジュリアさん。不良っぽいラン役を演じた劇団4ドル50セントの前田悠雅さん。大食いキャラであんまし難しいことを考えていないナオ役の竹内夢さん。誰もが個性的に描かれていて、なんだかとっても魅力的。ほんとにこういうクラスがここに存在しているかのような、とても良い空気がそこに流れていたのでした。

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対する大人サイド・先生役の面々は、だいすけお兄さんに代表されるように歌のプロの方々ばかり。聴きごたえのある歌唱を皆様が誇ってました。
その上でキャラもしっかり立っていて、だいすけお兄さんの身近なヒーロー感、湖月さんの宝塚的突出ぶり、野々村真の野々村真っぷりたるや素晴らしいもの。
圧倒されているうちに、2時間超の舞台なんてあっというまにエンディングを迎えていたのでした。


まるでおっさんのぼくですが、早急に高校生時代に戻ってこのキラキラした学園に入学したい。誰かその方法を教えてくれないか。うん。でもここは女子高なので、まずはおっさん落ち着くべき。

終演後、脚本の岸本功喜さんは「キャラクターが手を離れて縦横無尽に動いてくれた」「スピンオフがいくらでも書ける」と仰っています。この言葉からもこの舞台がどれだけキラキラしていたのかが受け取れるような気がします。

普段ミュージカルなんて観ない自分ですが、本格エンタテインメントの楽しさを存分に余すところなく堪能させていただきました。チケットは10000円ほどしたものなのですが、こりゃ2回なんてケチなことせずに、もっとたくさん観ればよかったですよ。みれい推しの皆様大正解ですよ…。

注※再演時はナオ役が竹内夢さんから浅井七海さんに変更されていました。


■まとめ・星名美怜とミュージカル

最後に、思ったこと。
あらすじのところで書いたとおり、この作品はミュージカル部という夢を信じて、ひとりの女の子がまわりを巻き込んでゆく物語です。そして、ぼくはその物語の概観に、なんだか既視感を覚えてやまなかったのです。

で、終演のときに一気にその正体が何だかわかりました。この物語は、エビ中に入った美怜ちゃんのお話そのまんまなんですよ。

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どこで読んだのか忘れてしまったのですが、11年前に美怜ちゃんがエビ中に入った際のこと。当時は単なるレッスンユニットであったエビ中に、「ガチでアイドルをやりたいコが入ってきちゃった」と言われていたという話があったと記憶しています。
ある意味、美怜ちゃんが入ってきたので、エビ中さんがアイドルとしてガチる方向に舵を切ったともいえるのではないかと。

スタダさんにスカウトされて、医者の道から夢を切替えて、前向きにアイドルに取り組んで、グループみんなの潤滑油になって、ファンとしっかり向き合って。キラキラした歌声は前山田健一にも見染められ、楽曲の勢いを付けるときに重宝されて。現在のエビ中の姿の中心には、いつだって美怜ちゃんの笑顔があったのです。

劇中のマイも、いろいろな障害に阻まれながら前向きに突っ走っていきました。どんな障害が現れても、このコは悩むより先に走り出す。まわりの子どもや大人を感化して、どんどん仲間にしていきます。そして彼女のパワーに呼び覚まされて、仲間たちがどんどん本来の力を発揮、やがて大きなものを作り上げてゆくのです。

実際にエビ中でも、いつのまにかメンバー全員がそれぞれ自分の個性を活かして、それぞれの方面で力を発揮して役割を全うしています。ステージに持ち寄られた個性や歌声が一つに合わさって、一緒に仕事をした大人たちもどんどん巻き込んで、いつのまにか大きなものが出来上がっていきます。

ミュージカル終演時には「劇中の主人公が、美怜ちゃんなのかマイなのかわからなくなった」という感想を複数みかけた気がするのですが、それはきっと当然の帰結なんですよね。だってこのお話は美怜ちゃんそのものなのだから。懸命に過ごしてきた彼女の姿がマイちゃんに重なっているのだから。だから、この舞台が面白くならないわけがなかったんですよ。

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初日のカーテンコールでは、拍手こそ大きかったものの、みんななんだか遠慮をしてしまったのか、ぼくの視界内では2~3人しか立ち上がった人はいませんでした。
でも楽日の終演後。この日はカーテンコールで出てきたキャストを前に、満員の客席みんなが立ち上がって拍手を打ち鳴らしていました。座っている人なんかほとんどいない。
盛大に響き渡る拍手の音は、打ち鳴らしている側のこちらにとっても、心の深くに届く感動的なものでした。きっとこちら側のみんなも、美怜ちゃんやキャストの皆様に感化させられ、煌びやかな大きなパワーを注入されてしまったのに違いないです。
演じきった6人のクラスメイトが見たこの風景は、きっととても感動的だったのだろうなと思います。

いまだにアタマのどこかで、テーマ曲と皆さんのコーラスが鳴り響いている気がしています。舞台上で縦横無尽だったキャラクターたちが、次の演目にむけて走り出しているような気がうっすらとしています。2回しか観なかったくせに、もっともっとみんなのドラマを見ていたかった気がしています。
エンタテインメントの力って、本当に凄いものだ。
また次の機会があれば、もっともっともっと楽しみたいと思います。いつかまたきっと、再演されますように。彼女の物語が続いていきますように。

美怜ちゃん、ミュージカルへのチャレンジ、お疲れさまでした。
とっても楽しかったです。

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それではそろそろ寝ますです。
おやすみなさいグー。

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