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最初のテイクと最後のピースと600日をかけたジャンプの話

ブラック主体のモノトーンで統一された衣装。
黙ってヘッドホンを装着してその時を待つ6人。
静かに手元のギターの様子を確認する男性。

視線を落とししばし呼吸を整え、
スタンドマイクに向かって目を見開く安本彩花。
彼女のブレスが聴こえた瞬間、予告動画は突然のカットアウト。
画面には青色のバックと共に「水曜22時」の文字が現れる。

いきなり書き始めてしまったけれど、
これはこちらの映像の話。


7月27日の21時にTHE FIRST TAKEの公式ツイッターが更新され、
エビ中が2度目の登場をすることが予告されたのだ。


ギターの男性は石崎ひゅーい。
彼がいるということは、今回の曲目は『ジャンプ』だ。
そうに違いない。

となると本来の歌いだしは真山さんである筈だが、
予告映像を見る限り安本さんが構えている。
今回は彼女のアカペラから入るのではだろうかないか。

予告動画がドロップされた途端、
様々な予想などをして沸き立つファミリー。
心配なニュースが発表された折だったが、
それを前向きな気持ちに変えてくれるような報せだ。
僕らは心をひとつにして、無事を祈るしかないのだから。


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約束の時刻になり、動画が動き出す。

だから、
 愛をこめて。

きょうのジャンプは、
やはり安本さんのアカペラからの導入だ。
歌に魂を載せるかのように絞りだされる声。
一瞬見せる、歌う事の楽しさを放散するかのような微笑み。

その声を受けて
堰を切ったようにかき鳴らされる石崎ひゅーいのギター。
普段ならばシンセのリードとストリングスによって、
どこか壮大な世界観の感じられるようなイントロとなるが、
きょうの世界を描き出すのは、6本の弦と6本のマイクのみだ。

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真山さんの太く静かな低音が、
冷めた目線で世界を眺める主人公を描く。
我武者羅なジャンプをすることで
世界への抵抗と微かな希望を紡ぎだす星名さん。
柏木さん、小林さん、中山さんのやりとりで、
「ぼくたち」はまだ冷めきっていないこと、
命の炎がまだ揺れ動いているのだということが語られ、
そして安本さんの力強い独白へと繋がる。
手を伸ばせば届きそうだと歌われる一番星。
実際は届かないからこその想いだということも、
彼女の息遣いと表情から伝わってくる気がする。


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やっぱり6人のエビ中は最高にかっこいい。
生声とギターひとつという
化粧をそぎ落とした中で作る世界だからこそ、
さらに歌に広がりが見える気がしてくる。


だから愛を込めて
鳴らすよ、鳴らすよ。

それぞれのパートで一人ずつ歌い継いできたバトンが、
全員のパートになって破裂するかのように響き渡る。
重なり合う声にパワーを感じる。
やっぱり6人のエビ中は最高にかっこいい。


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ここまで歌の流れを書き下してきてみて、
ジャンプが如何に丁寧に考えられて
積み上げられてきたものだかがわかるような気がする。

作曲者である石崎ひゅーいの手から離れ、
エビ中メンバーとチームによる紆余曲折を経て、
時にファミリーの手も経てたくさんの人の耳目を通して、
大きな楽曲に育てられたような気がする。

そうだ。
なないろの時は6人が弧を描くような立ち位置だった。
6人が作り上げてきた世界を、観ている側も含めて、
みんなで大切に見守るようなフォーメーションだった。

きょうは横一列になって皆が前を見据えている。
これはきっと前へ前へと声を届けるためだ。
彼女らが6人になった日から、
真剣に大勢の人に歌を届けようとしてきた。
ジャンプはその想いの集大成でもあるのだ。


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もう一度、愛をこめて
だから、愛をこめて

最後にまたひとりひとりにバトンが渡る。
自らの歌声の届きゆく先を見つめる柏木さん。
慎重かつ無造作に力ある声を出し切る星名さん。
詰め込みきれなかった大きな感情を噛みしめる真山さん。
全てを載せこんで放心したかのような中山さん。
自分の込めた愛の大きさを反芻する小林さん。
最後にゆっくりと自信をもって、愛を込める安本さん。


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この動画を観ることになるたくさんの人たちにも、
彼女らのバトンが渡れば良いなと思う。
この歌と静かに燃える目の奥の火が届けばいいなと思う。
ぼくらに届いたのだから、きっとまた多くの人に届くはずだ。


動画の書き下し作業なんて、何も意味がない。
下手なことを書き連ねるよりも、
やはり動画をしっかり観て欲しい。
みんなの目を観て、歌を聴いてほしい。


もう一度、愛をこめて。

石崎ひゅーいが静かなストロークで鳴らすコードに、
安本さんが、凛々しく清々しい笑みと瞳を見せながら、
最後にゆっくりと愛を込めて、この曲は終止符を迎える。

彼女のブレスで始まった曲が、
彼女の息遣いによって美しく締められたように、

ジャンプという曲自体にも、
2019年11月の初披露以来600日あまりたって、
積み上げられてきた様々なピースのうちの、
最も重要な最後のピースが、
最高の形で、あるべく場所にピッタリと着地して、
最高に美しく収まって締められたのではないだろうか。


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やっぱり6人のエビ中は最高にかっこいい。
だからもっともっと多くの人に届いてほしい。

THE FIRST TAKEを視てほしい。聴いてほしい。
できれば、何度も。






またみんなで
声を合わせることのできる日がきますように。
みんなが元気でいることができますように。

9人のエビ中がもっと楽しいエビ中でありますように。
9人によるジャンプもまた素晴らしいジャンプでありますように。
そんな未来がしっかり訪れてくれますように。




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