灰の中のダイヤモンドと柔らかなパルスと泣き虫ジュゴンの話

他所で書いたものの転載シリーズ。2020/10/21


2020年10月10日。
今年もぽーランドが建国されました。配信で入国をさせて頂きました。小林さんが育んできた優しい気持ち。その気持ちで包まれた場所が、ぽーランドの国土。配信とはいえ、入国できて良かったと思える一日でした。

ひとことで言うと、素晴らしい公演。
ステージは落ち着いた明るさに保たれていたけれど、宝石の様な尊い輝きに満ちた空間だったように思えるのです。それがどんなものであったのか。だいぶ遅れてしまったのですが、ぼくの拙い感想とともに、この公演の意味を読み解いていくことにします。

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ええと。
毎年のぽーランドは、ゆったりした曲が多く流れます。それらのリズムと小林さんの持つ波長の相性が抜群なんですよね。そして今年はその波長のパルスの伸びが格別に柔らかく、とても素晴らしい歌声となって響いてきたのです。

ここでちょっと自分語り。
失礼ながら、ぼくは小林さんを1推しとする者ではありません。だので「はぁぁぁぁぁぽーーーーちゃーーーん(泣」・・・といった感じの目線は持ち合わせておりません。おとなですからね。「はぁぁぽーちゃん・・・」くらいかな。
そんなぼくが毎年のぽーランドで陣取るのは、決まってBLITZの一番後ろのスペースです。黄色アクセントのファッションに身を包んだ皆様の後ろから、自分なりに落ち着いてのんびり公演を楽しんでいるものでした。
その状況をいま考えると、過去の自分は、どこかぽーランドを外から眺めて楽しんでいるような、国民としてではなく、よそからの観光客として楽しんでいるような、そんな立ち位置にあったように思うのです。
自分語りおしまい。

ぼくとしては、今年もそんな立ち位置でいるつもりでした。しかし、そこには油断がありました。

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今年のぽーランドは、人魚の歌声に引き寄せられるように・・・いや違う、ジュゴンの歌声に引き寄せられるように、その国の中心にゆっくり気持ちを取り込まれてゆくもの。単なるインバウンドでの出入国に終始しない、そこに留まり溶けてしまいたいような気持ち、つまり国民となってしまいたい気持ちにさせてくるものでした。こんな気持ちにさせられたのは、今までのぽーらんどで初めてです。

正直に書きますと、去年までの公演の感想には、「少々不安定な音程など気にならないほどの幸せな空間」といった、少しだけ捻りを入れた表現を用いる必要がありました。
しかし今年はそんな低いハードルなど軽く凌駕していました。歌唱力が驚くほど各段にUPしていたのです。決して音程を外さなかった訳ではありません。でも彼女はついに、音を外す外さないといったような、低い次元の採点基準など必要ない位置に到達したと思うのです。解釈すべくは、そんな所よりも遥か高いところ。そういうレベルでの、歌唱力の上昇を感じたのです。

 M01. Hello, Again ~昔からある場所~(My Little Lover)
 M02. やさしい気持ち(CHARA)
 M03. ロビンソン(スピッツ)
 M04. 糸(中島みゆき)
 M05. LOVE LOVE LOVE(DREAMS COME TRUE)
 M06. やさしさに包まれたなら(荒井由実)
 M07. 泣き虫ジュゴン(吉澤嘉代子)
 M08. 人生のパレード(チャラン・ポ・ランタン)
 M09. STARMANN(YUKI)
 En10. ぐらりぐら想い
 En11. 日記

本来を男性ボーカルのものとする曲も含め、彼女が載せた歌声は全てが優しい色を纏って響いてきました。幸せな旋律、寂しく切ない展開、悲しげな音色。曲中の言葉や世界観に存在する、彼女の届けたい何かってものを、彼女がとても大切にしているのだと思います。
こう言ってしまったらある種の問題あるのかもしれませんが、ぽーランドで聴くことのできたカバー曲群は、エビ中での持ち歌よりも数段耳なじみがよく鼓膜までスススッと流れ込んで入ってくるものでした。
その理由の一端は会場の静寂にあったように思うのです。
今年のぽーランド、結果的に全席着席指定のようになりました。なんとなく皆が立たずして音を受け容れ始め、そのまんまに時が過ぎていったのです。
客席からのコールなどご遠慮のご時勢。ぽーランドの時間を進めるのも止めるのも、全てが小林さんに委ねられる形になりました。
普段は他人に遠慮しがちな性格の小林さん。
しかしこの人は、時には画用紙の上に、時には段ボールの部屋の中に、誰よりも研ぎ澄まされた自分の世界を作りあげる人。静寂のぽーランドの中心に立って、自身で自分の世界を描き切りました。
普段他人に気を遣ってしまう性格だからこそ、自分で動かすしかなくなったぽーランドの世界を、より強く優しく輝く歌声で満たすことが出来たのではないか。
だからぼくはそこに、二十歳を迎えたひとりの大人の、責任感や覚悟に近い想いがあったような気がします。インナーカラーを纏ったひとりの女性の、ちょっとした勇気と自信が伺えたように感じています。客席の笑顔を目の前にした小林さんの、幸せな気持ちが見えたように思えます。
それらが重なって、5回目のぽーランドは、過去の建国時よりも群を抜いて
素晴らしい公演になったのではないかと。ぼくはそんなことを考えているのです。

かつてアンジェイ・ワイダは自作の映画で、灰のように沈みゆく時代の混沌にまみれたポーランドという小さな国の、ダイヤモンドのような可能性を描き上げています。
21世紀の小林さんは、コロナ禍にあえぐ暗い混沌の世の中にあって、ぽーランドという国の建国をもって宝石の様に尊く強く輝く空間を魅せてくれました。

「自分を大好きになってください。」

国民の未来に向けてプレゼントされた言葉。それは彼女の歌声にも増して、耳に強く優しく響いてくるものでした。

小林歌穂さん、遅くなってしまったけれど、二十歳の誕生日、おめでとうございます。これからも素敵な小林さんでいてください。
歯イドルキッズたちにも宜しくお伝えください。

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といったあたりでそろそろ寝ますです。
おやすみなさいグー。

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