10の珠玉の楽曲リストと7250字の重力とトレンディガールの話


noteに登録してみたので、せっかくだから記事をちょこっと投稿しておいてみようと思ったのです。お試しの意味も含め、過去によそに出したものを再録することにしておきまーす。以下それ。

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皆様あけましておはようございます。
今年もよろしくお願いし

形ばかりのくだらない年明けの挨拶なんてそうそうに打ち切って、本題に入りますね。きょうぼくが本当にお伝えしたいのは、皆様どうか今年もよろしくお願いしたいということなのです。よろしくね。お願いね。

といった感じで令和2年のブログの出だしもトリッキーなのだか単なる失敗なのだかわからない出来になりましたので、なんだか満足しています。うん。


それはそうと!
皆様、このグラフは何を示したものだかわかりますでしょうか?

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なんとなく見慣れた順序の6色と青。意味ありげなパーセンテージ。青の割合が大きく、水色が2番手、緑色が3番手…。何かしら何だろう。あれのことかしら、ちがうのかしら。


そうです。カンの良い人はわかったかもしれません。ちがうのなのです。いや、違わないのです。めんどくさいな。
詳しく書きますと、エビ中さんの6枚目のアルバムplaylistの1曲目に収録されているちがうのの歌詞の割り振りをグラフ化したものなのです!図ではメンバーのイメージカラーごとに担当文字数のパーセンテージを示しています。青色はメンバー全員で歌う部分のパーセンテージです。


というわけで。
今回もアルバムplaylistの各曲の歌詞をすべてひらがなにして、すべて指折り数えてみました。全部で7250字ありました!これらの言葉がメンバーそれぞれにどの曲でどれくらいの割り振られているのか。それをデータ化していってみます。
果たしてここから見えてくるplaylistというアルバムの正体とは何なのか!ていうか見えてくるものなんて本当にあるのかどうか!ご本人サイドおよび制作サイドにしてみたら大きなお世話ってなもんです。はいごめんなさい。
でも数え始めてしまったものは特快で、いまもう、もう、どこにも止まらないのです。とっても長くなりましたが暇な人ならば読み進めてみればいいじゃないですか。

<数える際のルール>
・playlist収録楽曲の歌詞をすべてひらがなにして、1文字ずつ数えました。
・アルファベットも発音に関わらず1文字ずつ数えています。
・カギカッコやナカグロなども1文字として数えちゃいました。ごめん。
・全員パートは「全員」として数えてます。個人数値に足してはいません。
・一方、デュエット部などはそれぞれ個人の数値に足しています。
・細かいことは気にすんな。わかちこわかちこー。

それではいってみましょ。


■M01.ちがうの

改めまして。
アルバム1曲目はちがうの。シンセの音色が印象的なポップでかわいい曲調。それでいて好きという感情が不確定に揺れ動く様をうたったもので、ひとつ階段を登った少しリアルなシチュエーションを感じさせる恋愛ソングです。

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この曲は上図のような歌詞の割り振りで、りったんさんと安本さんの担当パートが多くなっていることがわかります。これは最後のラップ部分がふたりに割り当てられているためです。
秋ツアーでは美怜ちゃんがここの安本さんパートを担当していましたが、安本さんが戻ってきた折にはこの曲もまた違った表情をみせてくれるかもしれません。エビ中での恋愛マスターと自称していた安本さんと、最年少のりったんさん。早くその掛け合いをこの曲で確かめてみたいですね。
ちなみに柏木さんがパーセンテージ3番手になっているのは、ソロパートの割り振りがひとりだけ3箇所あるためです。


■M.02 SHAKE!SHAKE!

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アルバム2曲目はポルカドットスティングレイによるSHAKE!SHAKE!です。
こちら、ご存知のとおりソロパート19%の小林さんフィーチャー曲。彼女のピースフルな歌声から軽快なロックが始まったと思ったら、途中これぞファンクでござい!って言われてるようなスラップとカッティングが曲を彩り、ラップパートでの煽りライムが勢いを加速させていきます。小林さん→他メンバー→小林さんといった歌詞のワンツーパスがスパスパっとキまってゆくのも、この曲の快活さを増幅させているように感じられます。
歌詞の割り振りですが、1曲目のちがうのとは少し違って全員合唱パートがそれほど多くないことが特徴。そして安本さんのパーセンテージが15%と小林さんに次いで多くなっているのは、膝上20センチでも怯まない無敵さからくるものです。あと、ナタリーでエピソードが紹介されていたのですが、煽りパート収録後にスッキリした表情でレコーディングブースから出てくる柏木さんの表情を想像するのも楽しいので、みなさんにお勧めしときますね。


■M.03 愛のレンタル

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続いてマカロニえんぴつによる愛のレンタル。
スピード感あふれるSHAKE!SHAKE!から一転、ピアノやチェンバロ、ワウギターによるエモさ極まるミドルテンポ。途中ジャズ風味へのアプローチも見せるなど、聴いていて飽きることのない作りとなっています。
歌詞の世界観も、ジャジーな展開にマッチするような少し大人びたもの。ちがうのが恋愛の歌だとすると、こちらは愛情に関する歌。言葉のチョイスなど、対象年齢層がちょっと高めになっています。
こうなるとフィーチャーされるメンバーは真山さんしかあり得ません。しっとりとした陰のある歌声からファルセット気味な細い歌声までを自在に使いこなし、楽曲の展開にしっかり寄り添い、その完成度を高めています。素晴らしい。
彼女以外で見るべくは、りったんさんの存在感でしょう。10年経って響いたぞといった部分の歌詞で必要なのは、真山さんに求められたアダルティな空気と正対する声です。その声が次いで紡ぎだす忘れないでね、忘れてしまったことという言葉。二人の声の対比を味わうのも、なんつうかエモいんだwaー。実際に歌詞の割り振りもりったんさんが二番手です。
メンバー各人の声質や存在をうまく活かされ、ソロシンガーではなかなか出せない表現の厚みや面白みが隠れている。この曲はそんな傑作だと僕は思うのです。


■M.04 ジャンプ

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アルバムのリード曲、石崎ひゅーいによるジャンプ。ブルースじみた曲調にシンセやストリングスによって味付けが為され、迫力のある作品に仕上がっています。
歌割りの特徴は、なんといっても安本さん。彼女の担当箇所が全体の3分の1を占めており、全員で歌唱する部分よりも多くなっています。
若かりし日の安本さんといえば、エビ中のボーカロイドと言われていたように音階を正確に捉えた歌声が武器。その半面、歌声には感情の起伏が見えづらい部分がありました。しかし今はどうでしょう。繊細で優しい声質を保ちながら、歌に魂が乗りまくっています。大事なものをずっとなくさずに歌い続け成長し続けた安本さんと、エビ中の心臓の音。この曲にはそれが満ち溢れているじゃないですか。
僕らは余計な事など考えずに、正面からしっかり受け止めるほかないのです。


■M.05 I’ll be here

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これはまたエキセントリックな歌割りが来ましたよ。曲のほぼ5割が柏木ソロ。そして残り5割のうちの半分が真山さん。極端だなあ。

この歌割りになった理由というのを無責任に考察してみます…。
僕は楽曲提供者iriさんの作風を知らないのですが、曲としてはナウでR&B風な女性ヴォーカルもの。それらしい歌い方ができる技術がないと安っぽく聴こえてしまう上に、演奏トラックの音数が少ないため、ヴォーカリストがしっかり引っ張らねばならない曲です。
ほんじゃ歌姫ひなちゃんの技術に大半を任せておけば安心さ。はいめでたしめでたし。…というのはちょっと早計な気がするんです。残りメンバーの歌唱も、音源上で決して柏木さんと真山さんの二人に負けていないように思えますから。

だので、歌詞の方から歌割りの理由を探ってみたいと思ったのですが、この曲の歌詞ってだいぶ抽象的。感受性のない僕なぞが詳細を読み解くのはだいぶ難しい作業になります。わかったのは歌詞中の登場人物に君と私のふたりがいるということくらい。
そこで、もうひとつ資料を出してみます。曲アタマから下に向かって歌い分け順序を見える化したものです。細長いです。説明めんどくさいのでなんとなく図の見方はわかってください。伝われー。

↓曲スタート↓

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↓曲おわり↓


歌割り順を見ると、この曲は主に柏木さんと真山さんの往復書簡といった構成になっていることがなんとなく見てとれます。目が眩むようなスパイシーさの柏木パート。甘さ苦さの真山パート。
この曲で描かれようとしているのは、きっと冷たいアーバンな孤独感。だから前半はチームで歌うのではなくて、柏木さんが独りで歌いきる必要があったのかなと。対峙する真山パートっていうのは登場人物の君とわたしだと捉えればよいのかな。どうなのかな。

うん。結局よくわかんなかったです。

だけどI'll be here、つまり「ここにいるよ」という言葉。これは2017年からエビ中の大きなキーワードになっているように僕は感じています。だからきっと大事な曲。ステージでどんな演出が為されるかをヒントに、もうちょっと気長に読み解いてみたいと思います。
公演で観られる日を楽しみにしていきましょっか。


■M.06 PANDORA

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秋ツアー3箇所目の市川公演にて披露された、エビ中史上最速最狂の1曲。美怜ちゃんが美怜ちゃんらしさを爆発させるもので、(全快ではないにせよ)彼女の復調を豪快に見せつけてくれる気持ちの良い佳曲となっています。
白眉なのは美怜ちゃんの音域の広さが感じられる「漫画もゲームも禁止づくしでツマンナイの」のあたり。歌詞のワガママお姫様ぽさと高音域のヴォーカルと美怜ちゃんのキャラクターの三者が重なって、この曲の印象や存在感をグググッと押し上げているように感じます。ディレクションの妙というもので、よそのグループで上記の三要素をここまでガッチリ重ねることなんて不可能なのではないでしょうか。つまりこの曲は、エビ中にしか歌えないものとして完成しているのです。きっと。
そうだ。みれい姫の従者として仕える5人の歌声もいいですよね。中でもひなちゃんがとてもかっこ良いのだけれど、エビ中の歌詞で地獄って出てくるのは後にも先にもこれだけなのではないでしょうかファラユドゥイン。
歌詞の配分は美怜ちゃんをトップに割とオーソドックスになった感じかな。


■M.07 シングルTONEでお願い

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歪み系の悪い悪いギターの音色から一転、オシャレな空間系エフェクトのギターでゆったりテンポの1曲。正直なところ、クレジットを初めて見たときはポセイドン・石川って何者だよって思ったものですが、正体は達郎風味のじんわりしんみりした作品を仕上げてくる曲者でした(誉めてる)。
曲名のとおりメンバーのハモりはほとんどなく、30パーセントある全員合唱部分もシングルトーンで歌いきるもの。ユニゾンって言った方がいいのか。でも実のところは「シンプルに気持ちを伝えてほしい」っていう主題を、シングルトーンという編曲法になぞらえたものですよね。このあたりオシャレなんだなあ。

そういえばこの曲、アルバム中ではフェードアウトでトラックが終了していきます。フェードアウト型のエビ中楽曲って、お願いジーザスなどの数曲しかなかったですよね。でも先日のカウントダウンライブで披露された際には、この曲はアウトロできっちり締められていました。アウトロまで作られた上で納品された楽曲だということが知らしめられたわけですが、それではなぜアルバムではフェードアウトというチョイスになったのでしょうか。
そのあたり、僕は聴く側の誰か、神の手のような存在が「はぁしっとりしたー!ほんじゃ次は早いとこアゲアゲ曲を聴くべ!」と、徐々にボリュームを下げていく様子がなんとなく見えるのです。フェードアウトが用いられた理由は、そんなトータルディレクションからきたものだったのではないかなと夢想します。


■M.08 オメカシ・フィーバー

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少し昭和チックなムードを持った前曲を受け、にぎやかに始まるのはモーニング娘さんとかの連想されるダンサブルなやーつー。作詞の児玉雨子さんはハロプロ系の作家さんなんですね。平成初期のなんだかんだ元気だった頃のニッポンも連想されます。
大学芸会でのお化粧の寸劇でもあったように、この曲はメイクとか凝りそうな美怜ちゃん曲となっても良い気もします。でもここはオメカシ頑張っちゃうことで大変身してフィーバーしちゃうっていう流れからか、隠れたお調子者のりったんさんがフィーチャー。マニキュアを塗るたびに強くなっちゃうりったんさんから今日も目が離せないのですよ。
といったわけで歌割りのパーセンテージを見ると、りったんさんがほかの皆様の2倍に。そして申し訳程度かもしれませんが、美怜ちゃんが二番手につけています。ステージでの彼女のダンスも見どころですね。
ちなみにplaylist収録楽曲のうち、もっとも文字数が多いのがこの客で996字。2番目はPANDORAで957字。最も少なかったのはシングルTONEで481字でした。


■M.09 HISTORY

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HISTORY。
ご存知の通りメンバーの持ち寄った言葉をつないで一曲にしたというもので、10年間の6人の様々な想いが詰まった宝石箱のような作品です。大学芸会でちょっとした想い出の映像とともに初披露されました。このあとどこかで披露されることはあるのでしょうか。

そんな大切な曲なのですが、いつだかのSHOWROOMだったかな。視聴者に、この曲で急に偏差値が落ちると言われていました。言い得て妙ですよね。僕もアルバム中で最も中学生っぽさが生きているのはこの曲だと感じています。
オメカシを落としたノーメイクの6人に選ばれた言葉たちには、洗練されたオシャレさは皆無。非常にゴツゴツとしていて形がそろっていない。各人の歌割りにもそれが表れていて、それぞれのパーセンテージがめちゃくちゃ。統一感がないことが特徴です。
これ、横一列というエビ中の修飾辞と相反するように思えますが、逆に6人の素顔が見えてくるようにも感じられるのです。不揃いの個性が並んでいるからこそ、中学校の教室のように賑やかで楽しくて、色々なドラマがある。
歌の割り振りを見ているだけでも、そんなことまで考えることが出来る…。やってみた自分が言うのもなんですが、なんつうか、すごいものだなあ。


■M.10 トレンディガール

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ラストは川谷絵音によるトレンディ・ガールです。
このアルバムの中では唯一シングルカットされていたもので、一部界隈では厳しめな評価をされた曲でもあります。しかしですね、playlistというアルバムにおいてはけっこう重要な役割を担っているとも思うのですよ。

playlistっていうアルバムは、多種多様な楽曲を誇るエビ中が提示する10の世界観のこと。CDメディアというサブスク(表現おかしいけど)でシェアされた、誰かの作成した楽曲リストだとして聴くようなものだと思うのです。歌っていたのはたまたま全てエビ中だったけれど、様々なタイプの音楽が様々な楽しさを教えてくれた。そんな優れた楽曲リスト…そう思えてきませんか?実際、ロックにムード歌謡にR&Bに…楽しかったでしょ?
で、その並びの中で前曲のHISTORYがラストナンバーになってしまうと、ちょっと重いんですよね。うるっときちゃったまんまにアルバムが終わっちゃう。そうなると誰かの楽曲リストではなくて、エビ中のアルバムとして完結してしまう。
だからこのアルバムがplaylistという作品であるためには、ここで整理体操のごとく起伏なく平坦に聴くことのできるトレンディ・ガールが構えていることが重要なんですよ。トレンディ・ガールは、いわゆるアルバムのラストナンバーとしては、あまりどっしり感のない作品。逆のとりかたをすると、最後の曲で満足させることなく、次の音楽への渇望を誘う曲だと思うのです。

あ、僕基準で勝手にそう思っているだけなんであんま本気に捉えすぎないでな。約束だぞ。
そしてもひとつこの曲が最後に配置されていることで優れているのは、川谷絵音作の曲なので、聴かずに飛ばしてしまってもあまり心が痛まないことです。なんつってごめんなさい。

歌詞の割り振りについて書いておこう。全員合唱部分が大半を占め、個人パートの割り振りが少しずつになっていることが特徴。つまり、歌割りにも各人の起伏が少ないことがわかります。


■まとめ

といったわけで1曲ずつ勝手に語ってきたのですが、歌割りのパーセンテージを見るだけでも、何だか色々なことがわかったように思えないこともなかったりするような気がしませんでしょうか?そうでもない?

それではplaylist全体の各人の歌割りをこちらにどーん。

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エビクラシーやMUSiCでは最終的に全員の歌割りが同じくらいのパーセンテージだったのですが、今回は柏木さんの割合が少し大きめになっています。これはI'll be hereでの配分が偏りすぎていたため。あまり意味のないデータですが、I'll be hereを抜いて平均をだすと、ムラサキから順に10%-12%-11%-10%-9%-12%となります。


横一列ってのは美徳ではあるのですが、playlist全体のパーセンテージを見るにですね、数字上での横一列に拘る必要がなくなったと捉えて良いと僕は思うのです。だって、それぞれ各人がフィーチャーされた曲では、それぞれ各人がほんと縦横無尽にその楽曲で存在感を爆発させているのですから。それが個性ってやつで、見かけ上の横一列になんか頼らなくても、しっかり6者6様を体現している。playlistはエビ中がそういう次元に入ったということを知らしめてくれる一枚であるように僕は思うのです。

結成10周年のエビ中が世の中に提示した2枚のアルバム、MUSiCとplaylist。この2作は音楽の楽しさを縦横無尽に味わわせてくれる、素晴らしいプロダクトでした。ひとりのミュージシャンでは表現しきれない幅広さというものを、アイドルという立場から貪欲にカバーしにいった2作品。それも一定のクオリティの高さを保ちながらやりきれているところに、彼女らとチームの培ってきたキャリアと真摯さを大いに感じるのです。

数年前まで色々な音楽のことを知っているつもりでいた僕ですが、彼女らを媒介に更に色々な音楽に出会うことができました。自分なんて小さな奴だったのだな、音楽って本当に楽しいものなのだなあと。MUSiCとplaylistの2作と中学生から教えられたものは、途轍もなく大きなものだったと思うのです。


というわけでだいぶ長くなりました。
歌詞データから見るplaylistはこんなところで如何でしょうか。
やっぱり傑作と言うしかないと思うのですよ。

といった訳で力もつきました。
それではそろそろ寝ますです。おやすみなさいグー。

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