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ボーナスステージとスポットライトと流れ続けた響の話

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「私立恵比寿中学 Concept Live 〜MOVE〜」の名古屋公演に参加してきました。感想・・・というより白日夢のメモライズを無責任に書きなぐってみようと考えているうちに、時間ばかりが過ぎてゆくのでした。
てなわけで、以下うすれつつある白昼夢。





ええと。
今回のMOVE3公演は、突っ走ってきた6人のためのボーナスステージだったのではないだろうか。ぼくはそんなことを考えているのです。

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思い返せば、発端は4月30日のパシフィコ横浜でした。この日は6人体制最後のツアーとなる6VOICES最終公演。新メンバーの選考も候補者が絞られて合宿審査まで進んでいる状況で、客席のぼくは「嗚呼、きょうで6人ではなくなってしまうのだ」などと、ちょっとした感傷に浸ろうとしていたものだったのです。が、その刹那、突如この公演「MOVE」が全国三か所で開催されるというアナウンスがありまして。

きけば「新メンバーは参加しない3公演」とのことで、ほんのちょっとだけ肩すかしを喰らった気分。
冷静に考えてみれば、新メンバーが5月5日に加入したとしても、本隊に合流できるまでに数か月が必要なことくらいすぐにわかります。チームダイオウイカでレッスンを受けていたカホリコたちでさえ、初ステージまでに2カ月必要だったのですから。てなもんですぐに気持ちにリカバリをかけ、チケットの確保に走ったのでした。

そのMOVEも紆余曲折あったものの、無事に名古屋にて最終公演を迎えました。最後の曲として盛大なハンドクラップとともにジャンプが披露され、メンバーがステージを去ります。きょうも素晴らしい時間でした。

しかし客電の点けられるタイミングが普段より数秒遅いことに気付いたファミリーは、誰もいないステージに向かって再びハンドクラップを打ち鳴らします。声なき声で伝える、なにがなんでもアンコール。7~8分打ち鳴らし続けた手のひらが痛いです。

ほどなくして出てくるメンバー。MOVEで初めてのアンコールだ。
始まった曲は『響』です。

周知のとおり、これはebichu prideにて6人体制始まりの曲としてドロップされた一曲。安本さんが言われた「エビ中にはKSしか残らない」という心無い言葉。校長がときどき口にする「中学校感」という要素、それがだいぶ小さくなる6人での旅路のはじまり。あの日の公演は様々な不安が渦巻いていたと思うのですが、それらを打ち祓うための締めくくりとして選ばれた、6人のエビ中とずっと共にあった一曲です。

MVにはそのテーマがダイレクトによく現れていると思います。
メジャーデビューの日、8人体制になった日、避けられなかったあの日、6人体制になる日。それぞれのスタートライン。夢の後先なんかなく書を捨て走り出した彼女たち。この曲を聴いていると、彼女たちの姿をずっと見てきたこちらにも、このMVのようにたくさんの記憶がフラッシュバックしてくるような感覚になります。

名古屋の会場でぼくがなんとなしに思い出していたのは、2018年のファミえんの一幕でした。
アンコールのサドンデスで、美怜ちゃんが先陣を切ってビーナス宣言をするところ。ふだんなら真山さんや柏木さんによる「ビーナスは私だよ!」「違うよわたし!」という応酬から、ダンスサドンデスに発展する流れ。しかしこの日の美怜ちゃんは、セリフの途中で足を滑らせ軽くすっこけてしまいます。それを見た真山さんと柏木さんは、アドリブで「ちょっとー!だいじょうぶ~?」と台本とは逆ベクトルの平和な発言をかまします。美怜ちゃんも「滑った!」「こわかった!」と、バトルの応酬になり得ない返答をする始末です。

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さて、ここからが見もの。バスターされてしまったその流れをいちばん真正面から喰らうのは、台本上でケンカを止めてダンスサドンデスに皆を誘う役割のリコ中山です。だって、ケンカが始まっていないのだから。それでもダンスサドンデスに繋げなくてはいけないのだから。楽曲は軽快に流れ続けて残された時間は数秒しかないのだから。

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「こいつら段取りにないことを始めやがった!」という微妙な半笑いをみせつつ、メンバーに近づく中山さん。ちょっとだけ噛みながらも「はい!滑らないで!」とだけ言ってとりなして、「それじゃダンスサドンデスでビーナスを決めよう!」とその場を淡々と華麗に強引に処理します。見事な手腕でした。

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注目すべきはこのときの真山さんのカオなんです。満足げな悪い笑顔を浮かべています。まやまさんは悪い笑顔も魅力的でステキなのだなぁ…、という個人的に大切な感情はちょっと次回にとっていて。ぼくがこの笑顔を見て強く感じたのは、厚くなったメンバー同士の信頼感のこと。こういう大舞台で急な無茶ブリをされても、中山ならなんとかするであろうといった信頼感。その感情から出てくるような、悪い笑顔がそこにあったんです。

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声が小さくて頑張って叫んでも地下鉄の車内レベル。「いやさか!」が言えずにもういいよぅと言ってしまう消極性。後年「何を考えてあんなにブルブルしてたの?」と安本さんに言われてしまうくらいの緊張しぃ。
走り出したあの頃の姿からは想像がつかないくらいに、中山さんはたくましくなっていた。そこまでだったらば、見ていたぼくらにも充分に受け取れていたことです。重要なのは、彼女がたくましくなっただけでなく、メンバーにとって頼りがいのある頼もしい仲間になっていたこと。あの数秒間のやりとりには、それを再確認する色々が詰まっていたように思うのです。

思うに、6人体制の終了とは「末っ子としての中山莉子」第一章終了のことなのだ
メンバーの最後尾にくっついてきて、主な役割といえばMXテレビのセットの扉を閉めるだけ。それがいつしかメンバーの背中を見ているだけではなくなって、最後方にいることの美味しさを武器にして、必要に応じて最前ドセンに殴りこんで。腕利きの芸人にも「困ったら中山莉子に話題を振れ」と言わしめるくらいに、存在感と信頼感を増していたのだ。

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話は飛んで。急なたとえ話なんですけどね。
たとえばサッカーで全国大会に出たかったら、強いチームに勝ちたかったら、ある者は味方がギリギリ届くくらいのところにクロスを上げる技術を強いられ、ある者はギリギリの所でそのボールを受けとるようなプレイを求められるようになります。
このストライカーだったらあのゴール前の空きスペースに一瞬で飛び込んで、最小限のタッチでゴールを決めてくれる筈。だから俺はそれを信じて、そのポイントに向けて思い切りボールを蹴り込んでやる!と考えるサイドバックがいて。
一方で、あのサイドバックだったら俺の身体能力を信じて、あのスペースにクロスを蹴り込んでくるはず。だから俺はそのポイントまでいますぐに全力ダッシュをかますぜ!と応えるストライカーがいて。
ノータイムでアイコンタクトでその呼応が出来ちゃうチームは、とても強いんです。

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エビ中っていう6人のチームは、いつしかそういったたぐいの信頼感に裏付けられた、強い強いチームに育っていたのだなと。あの頃の市立船橋にだってACミランにだって、きっと負けるわけなんてないのだと。
サッカーの話を混ぜちゃったのでとっちらかっちゃいましたが、とにかくMOVEでの響を見たぼくは、なんとなくファミえんの1シーンを思い出してそんなことの再確認をしていたのです。


フラッシュバックしてくる映像はまた別のエピソードに繋がって。
先日の5月5日の配信ライブ2部の夏だぜジョニーの途中でしたっけね。中山さんのマイクが突如不調になって、音声がラインに載らなくなった瞬間がありました。
曲の途中、スタッフが持ってきた新たなマイクで無事に声が復旧した際。中山さんの「マイクのった?」という声を受け、美怜ちゃんと柏木さんが「OK!リコ、リコいくよ!」という声のパスをだし、中山さんによるキメ台詞「絶好調です!」のフレーズがゴールすみに華麗に決まります。

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本来はなくても良かったはずの「リコいくよ!」の声があったからこそ、マイクの不調を脱しての絶好調という言葉が二重三重にコ気味良く響き渡ったんですよね。そこでの台詞が「絶好調です!」だったことも、"持ってる"としか言い様がない。持ってる人がいるチームは、ホントに本気でとてもとっても強いんです。

うん。間違いない。
6人のエビ中は、最強で最高だった。

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新たなチームメイトたちがアイコンタクトだけでゴール前に駆け込めるようになるまでには、まだまだ時間がかかるのかもしれない。つまり、このチームは長い年月で培ってきたこの強さを、一旦手放すことになる。

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だけど新メンバーの教育係に挑戦する第二章の中山莉子は、きっともっと大きな力を得ることになる筈だ。そして、その力をエビ中全体に大きく還元してくれる筈だ。だって、かつての安本さんがそうだったのだから。安本さんを中心に、チームがグンと強くなった歴史があるのだから。すでに「頑張ってる途中neo」などでは、新メンバーを引き立てて引っ張ろうと奮闘している彼女の新しい一面が表出しつつあるのだから。


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6人体制が終了となる今日。メンバーは曲中に声が詰まって、笑っているのか、泣いているのか、歌は途中で途切れ途切れになっていました。本来の振り付けには出てこない、円陣を組むようなフォーメーションになって、なんだか、時間が過ぎていきました。
ある意味、肩の荷が降りたことの安堵。ある意味、変貌するチームの形への不安感と覚悟。きっと色々な想いが去来し交錯して、なんかよくわかんなくなっていたのだと思います。


ここにいること歌うことで僕は僕なのです
むずかしいことはわかんない

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本来の6人体制最後のツアー6VOICESでは、6人のメンバーはエビ中の将来に対しての不安や想いをしっかり語っていました。でも、その頃って諸々がぼんやりしていたと思うんですよね。どんなコが新メンバーになるか、まだわかっていない頃だったし。
だから、6VOICESは第一章の最終ページであって、6人体制の終焉に対してのけじめの公演だったと思うのです。

で、桜木さん小久保さん風見さんの3人を前にした5月5日を境に、ぼんやりとしていた不安や期待は、だいぶ明るくハッキリと像を結んで見えてきたのではないかと思うんですよ。

3人が加入して少しひらけた視界を前に、6人で臨んだMOVEの3公演。
これは第一章でも第二章でもあって、第一章でも第二章でもない、いわばインタールードの公演。6人ではなくなる未来を前に、彼女らが6人であったことをもう一度振り返ることのできる公演なのだ。
鳴りやまないオーケストレーションの中を走り抜けた最強で最高な6人にプレゼントされた、彼女らへのご褒美のようなボーナスステージのような公演だったのだと、ステージの下で見ていたぼくは感じたのです。

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MOVE名古屋公演のアンコールの最後。6色のカラーのスポットがステージを照らして。そこに新たな3色のスポットが加わって。とても心に残る演出でした。とても心に残る3年半でした。
このステージの風景も、響のMVの一場面のように、良い思い出のひとつとしてフラッシュバックする未来があるのでしょうか。







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そしてさっそくエンジンがかかっているコがひとり。名古屋公演だったので、きっと観に来ているはずだと思っていました。とても心強いです。きっとあとの二人も同じ気持ちになっているのではないでしょうか。
まずはぼくがあの日にチームとしての強さを目の当たりにしたファミえんの舞台で、書を捨て走りだす9人の姿が見られること。それを楽しみにして、この二か月を過ごしたいと思います。


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それではそろそろ寝ますです。
おやすみなさいグー。

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