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「尼神インター誠子やAマッソ加納と同じくらいの才能」フワちゃんを最初に見出した元相方・芝山大補がたどり着いたネタ作家という仕事


今回は元お笑い芸人で現在はネタ作家、企画作家として活動中の芝山大補さんをインタビューしました。芸人時代の話から現在に至るまでたっぷり語っていただきました。お笑い関係の仕事をされてる方は特に必見です。

芸人からネタ作家へ


坂本:芝山さんがされてるネタ作家ってどんなお仕事ですか?

芝山:芸人さんから依頼をいただいてネタを提供したり、依頼されたら絶対何かしらの形で会議に入るって感じです。コントの設定を考えるのは得意だけど中身のボケを考えるのが苦手な場合は中身のボケを考える仕事になるし、その逆もあるからコンビによって入り方も正解も違います。

坂本:ネタ作家と放送作家って作家つながりですけど、お二人は一緒に仕事したことってあるんですか?

芝山:土佐兄弟のライブが初めてですかね。僕はネタでしか携わってないけど中を動かしてたのは立川くんで、あとフワのライブとか。

立川:コンビを解散して放送作家とか、まずはネタを頑張ろうと思ったのはどんな理由ですか?

芝山:一番はネタを作るのが好きだからですかね。放送作家になることは考えてなくて、そっちに進む人って芸人でも結構多いし、いけるんじゃないかって生半可な気持ちでいたけど、「水曜日のダウンタウン」とかの藤井さんの書籍を読んだらこんなに考えてるんだってことを知って、そこまでいくのはまだ腹が括れてないみたいなところがありました。

放送作家を目指す人って企画が通るまでパンチがどれだけ効いてるのかわからないし、ずっとパンチを出し続けてるイメージだから、モチベーションの保ち方が大変そうだけど、ネタ作家だったら作ったネタを芸人さんが披露した時点で世に出るからすぐに結果がわかるんです。そのスピードが気持ちいいし、そのサイクルを速くしたいって気持ちもありますね。

天才は自分が思う「おもろい」が世に当たってる人

立川:これまで依頼されてきて一番困った方はどんな方ですか?

芝山:お笑いが好きじゃない人かな。それはほんまに苦労しました。

坂本:そんな人いるんですか!?芸人さんで?

芝山:お客さんなので全力を尽くさせてもらってやりますけど、その人自身が自分なりのおもろいを持ってないとうまくいかないってことが最近わかってきました。好きじゃないから練習もしないし、それが動画見てわかるし、そういう人だと今日は大変な日だなって思います。

立川:他にも今までいろんな方を見てきたと思うんですが、芝山さんが見てきた中で一番の天才って誰ですか?

芝山:難しいですね。結構天才にも分野があるんですけど、演じるという部分やボケ感(ネタでの間などの感覚)では土佐兄弟の有輝で、発想の部分ではジャルジャルさんかな。

天才の定義っていうのは、僕の中で自分がおもろいと思ったことが世に当たってるっていうイメージなんですよ。つまりテレビの第一線まで上がっていく、そこまで行ききれる人って天才だなと思います。土佐兄弟の有輝なんかはTIKTOKを始めて2か月ぐらいでもう20万近くフォロワーいますから、世に当たってますよね。

坂本:今の仕事をやっていくうえで悩んでることはありますか?

芝山:こういう仕事してるわりには人間関係が一番大変ということですかね。例えばネタ会議のとき、芸人さんは「これや!」と思って言ってるけど、これをそのままやらせるとすべってしまうと思うことがあって、傷付けないように断るにはどうしたらいいのかはずっと悩んでます。帰るときに「あれ傷ついてないかな」とか「もっと良い言い方なかったかな」とか考えてしまう。でもそれは違うって言ってあげないといけない部分もあるんですよね。

立川:たしかに頭ごなしにノーと言いづらいですよね。だけどこっちの方がいいよと誘導するっていうか、それの良い言い回しを怒らせないようにしないというか

芝山:芸人って繊細なんですよ。だからプライドを傷付けたくないし、その人のおもろいを否定はしたくないんですよね。だから言い方はすごく大事です。

お笑い第七世代の印象や大阪と東京の違い

立川:ご自分が芸人だった頃と現在の芸人で違う点があると思いますか?

芝山:めちゃくちゃ違いますね。僕らはダウンタウンさんに影響された最後くらいの世代だから、相方とは犬猿の仲でないといけないみたいな、プロレス的なお笑いじゃないといけないみたいな風潮がなんとなく残ってました。でも今はどれだけ仲の良さを見せるかみたいな世代に変わってきて、仲良し感を出せる子の方が人気出てるような感じはありますね。先輩後輩の上下関係もだんだんなあなあになってなくなってきて、それは新しい時代ってこうなってるんだって、今芸人を見てるって感じです。

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大阪吉本時代芝山さんのコンビ D・N・A

立川:NSCとワタナベコメディスクールの2箇所に行かれてますが、どういった違いがありましたか?そもそも養成所とはどんなところなのかっていうのも教えてください。

芝山:養成所っていうのはお笑い芸人を目指すための授業を行う場で、ルールを説明してくれたり、ネタの作り方を教えてくれたりします。僕の期の頃のよしもとは基本的に何もなくて「来週までにネタ作ってこい」という感じでした。今はわからないけですけど。ワタナベはネタの作り方はこうだとか、そういったネタはダメなんじゃない?とか色んなことを教えてくれます。

どちらも良い面があって、よしもとは基本的にお前ら勝手に頑張れ!みたいなところがあるから、ほったらかしなんですけど、その方が自分で考える力が養われるというか。僕なんかドMなんで、売れてみろよみたいな感じがゾクゾクしましたね(笑)

ワタナベは大体こうした方がいいんじゃないか?と教えてくれるんです。愛があるなと感じてましたね。マネージメントとかもすごく協力してくれる部分はあって。その愛で頑張れる部分がありますよね。

養成所ってその事務所に所属するという目的があるので、どんな事務所だったら自分は頑張る人間なのかな?って考えて入ることが大事ですね。


自分ではコントロールできない才能を持つ“飛び道具”

立川:上京してからSF世紀宇宙の子として自分と真逆のフワちゃんとコンビを組もうと思った理由は何ですか?初対面の印象とか、どんなところに惹かれたんですか?

芝山:最初はすごく嫌いでしたよ。講師の人で放送作家の偉いさんみたいな人が来て、講義が終わった後にその作家さんが出した本を持ち出して「サインしてください」と言ってて、何こいつゴマすってんねんみたいに思うじゃないですか。で、フワに聞いたら、ゴマをする為だけに休み時間にブックオフでその作家さんの本を買ってきたらしくて、よく見たら200円の値札もついたままの本だった(笑)

フワは怒られたらどんな相手でもブチ切れたり、講師の人が後ろを向いたら中指を立てたり、当時は獣でしたね。ネタを飛ばしても講師の人に「もう一回やっていい?」ってタメ口で言ったり、他にそんな人いなかった。こいつはとんでもない飛び道具だと、ただ身を滅ぼすかもしれないっていうのもありました。当時のフワは芸人として売れるか不安がってたけど「才能的に誠子(尼神インター)とか加納(Aマッソとかと同じくらいすごい才能を感じたから大丈夫だよ」って話して、当時からすごくおもろいと思ってました。

立川:昔の考えで言うとこういう人と組みたいと思わなかったと思うんですけど、自分ではコントロールできないような人じゃないとダメって思ったんですか?

芝山:コントロールできるレベルでのおもろいはたかが知れているなっていうところにたどり着いて、フワと組んでたら予想外のことが起きるだろうし、そのときは自分がやってておもろい人と組もうと思ってて、当時からスクールの中でフワだったんです。

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SF世紀宇宙の子時代

ネタで評価されるために解散へ


立川:SF世紀宇宙の子の解散の経緯について聞かせてください。

芝山:楽しくやってはいたけど、ネタ合わせになるとどうしても自分は真面目になってしまうから、フワは真面目ではないというか、ネタ合わせを急にトンズラされたこともあるし、来てくれたりするんだけど、来てくれるっていうのもおかしな話だと思って。

立川:当たり前ではありますもんね。

芝山:そもそもコントに向いてないのかなと。台詞が覚えられないから、だんだんフワの台詞が少なくなってくる。それでもミスるから一言で繰り返すやつとか、まったく言葉を発しないネタになる。ネタで評価されたいのにちゃんとやってくれない。やっぱ自分の仕事はネタだなと思ってたし、だんだんストレスになってきて、最終的には自分の心的に無理やと思って解散しました。

立川:SF世紀宇宙の子時代で一番イカれたネタって何ですか?「セックス」を連呼するネタがあるって聞いたんですけど。

芝山:フワが一番好きだって言ってくれたからやったやつなんですけど、カップルでデートしてる設定のやつ。帰り際に何もしてこない彼氏に対してフワの心の声で「デートなのに何もせず帰ろうとしてる!セックスしろよおい!セックス!」ってフワがずっとセックスを連呼して、でもそれは心の声だから僕にはずっと聞こえてないっていう。最後に僕が「実は結婚してほしい。今日父親に会ってくれへんかな」って言うとフワがまた心の声で「父親とセックス!3P!」って言って終わるみたいな。

立川:劇場でやったんですか?

芝山:劇場でもやったし事務所のネタ見せでもやりました。ネタ見せを見てるのは芸人ばかりだからあまりウケる場じゃないんですけど、そこでやったら死ぬほどウケて、よっしゃ受かったと思ったら「おまえら頭おかしいんか」って落とされた(笑)あと、すごい人がいっぱい出てるライブでそのネタやったら、お客さんも引くし、主催の人にも「何してくれるん、普通に考えたらやったらアカンのわかるよね」みたいに言われて。

立川:ネタは下ネタで作ってくれって言われてたんですか?

芝山:フワにネタの説明して気に入ってくれたやつをやるという感じでやってました。まぁ、そうすると残るのが下ネタしかないっていう(笑)

坂本:すごいなあ。

芝山:まあ売れるわけないですよね(笑)

お笑いの小屋がほしい


立川:考えてるけど実現できてない企画ってありますか?

芝山:漫才のパターンの個展みたいなものを開きたいです。僕とそのコンビとの共同合作をもっといろんな人に見てもらいたいし、漫才の型を紹介して漫才のおもろいと思ってもらえる部分を増やせたらいいな。極端な夢で言うと、僕の発明のためにコントをやり続けてくれる人に出会えたらお金いらないです。むしろお金払います(笑)その代わり僕が考えたものを絶対全力でやってほしくて、ジジイになってもずっと小屋みたいなのを借りてやり続けたい。お笑いのことをもっと知りたいです。そう考えるとやっぱ小屋ほしいですよね。

立川:作家として今後どんな仕事をしていきたいですか?

芝山:今、台湾で何か企画しようかみたいな話もあって、世界に日本のおもろいを落としていくっていうのも興味が出てきました。日本では売れないけど海外では売れる人って実際いると思ってて、今やってることはある意味プロデュースでもあるから、芸人を活かす人たちの幅を広げられたらめっちゃ嬉しいです。

坂本:おもしろそうですね。芝山さんと出会うまでネタ作家っていう人がいるって知らなかったので今日はとても新鮮でした。

立川:ネタ作家は関西の方が多いイメージがあって、漫才作家って言いますよね。オール阪神巨人さんのネタを作ってる作家さんが漫才作家だったり。

芝山:でも僕らの世代は座付きみたいな感じで、自分が惹かれる人にアプローチして一緒にやってくのが主流だと思います。言い方悪いけど自分はヤリマンみたいなところがあって

立川:(笑)

芝山:ネタ会議終わって、芸人さんに「めっちゃよかったっすわ」と言われたりするんだけど、「またやっちゃった」みたいな罪悪感があると言うか…(笑)

立川:逆に考えるとそれ普通にできないですもんね。それぞれやりたい方向性があるから、それに合わせたアイディアを出さないといけないじゃないですか。それって僕の作家としての力量だとやれないなと思います。

芝山:めっちゃ鋭いこと言ってますね。

立川:僕も何人かとネタ作ったことありますけど、出ないときは本当アイディア出ないですもん。沈黙が怖いから絶対間違ってるなと思いつつも、この会議を0.5歩でも進めるために何か発言して話が派生すればいいなとか。それを日常的にやるのは僕的には無理だなと感じてて。

芝山:そこの部分で向き不向きもあると思うんだけど、作家さんと芸人さんのおもろいと思うポイントが一致してなければ、出すアイディアが全部検討違いになっちゃうと思います。それがみんな違うから、その人のおもろいを当てる必要があるんですけど、僕はわりと得意でその人の100点を探そうと思ってやってくと当たるんです。

芸人をやる上でめちゃくちゃ大事なのは、ネタをやる本人がそのネタをおもろいと思っていること。「別の作家さんに作ってもらってやったけどダメでした」ってネタを見たことがあって、たしかにおもろいけど、そのおもろさを本人が理解できてないから上手くいかなかったんです。その人がめっちゃおもろいって思ってることならその人のおもろさを最大限出すことができるので、まずその人を笑かせることを意識してます。

立川:そこにたどり着いたのはいろんな人と組んでたという背景があったからですか?

芝山:いや、極端に人の顔色を伺ってきた人生やったから、自分のおもろいを押し付けられない特性があるんだと思います。びびりだし臆病だからできることなのかなと。

立川:現状ではそれで仕事ができるからすごいプラスになってますよね。

芝山:ほんまにそうですね。

立川:めちゃくちゃ興味深いことだらけでした。

芝山:そう言ってもらえると嬉しいですね。

【芝山大補プロフィール】


元お笑い芸人。現在はネタ作家、企画作家として活動。NSC28期生として芸人生活をスタートし、大阪吉本時代には2つのコンビでキングオブコントの準決勝に進出。2013年にワタナベコメディスクールに入学し、同期のフワちゃんとコンビ「SF世紀宇宙の子」を結成。2017年にコンビを解散し、ネタ作家となる。

【7月1日追記・イベントを開催します】
7月4日(土)14時から、芝山さんに公開でインタビューを行う配信企画が行われます。詳しくはこちらから!


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