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無思考なニーチェ#04「ぼくは明日、今日のきみをチートする」

※この話はフィクションです。実在の「森本」とは、なんの関係もありません。

モリモトには論理がない。
言語を使って思考することがないから、論理がないのは当然だ。
論理がないから、その帰結として思想がない。
思想がないから、話していてもつまらない。
モリモトになにか訊いても、応えは以下の三通りに集約される。

「わからないですねぇ」系の不可知論的返答。
「そんなん、僕に訊かんといてくださいよ」系の超越主義的態度。
「どっちでもいいです」系のニヒリズム的対応。

早い話が、モリモトは元も子もない奴なのだ。
思考というプロセスを端折って生きてきたその性質上、モリモトにとってこの外界で起きていることなんて自分には関係のないことだし、自分が今日ゲームをして生きていければ、それ以外のことは興味の対象外である。
この世界と自分が繋がっているという感覚なんて、モリモトにはないし必要ない。

そんな有り様だから、実はモリモトはホモサピエンスと会話をするのが苦手だ。
言語化するのが苦手な人が多い現代社会でも、とりわけモリモトクラスになるとほぼ言語を持たないに等しい。
論理や思想という武器を持たずに丸腰で、コミュニケーションという戦場によく来られるなあと思うと、心胆寒からしめる思いだ。
だから、モリモトは一方的に話してくれ且つ自己完結してくれるような、わたしみたいなタイプとは相性がいい。
自分から話題を振らなくても、勝手に話が進行していくからだ。

あと、難しい話や意味のある話も嫌う傾向にある。
嫌うというよりも、そういう人間的な会話の場になると、いたたまれなくなるようだ。
モリモトは大勢で話していても、自分に関係がないと思うと、平気で人前でSNSを見始めたり、ドラクエのレベルを上げたりし始める。
いい歳をこいた巨漢が、なんの臆面もなく、コミュニケーションの場からさっと身を引く瞬間を見る度に、わたしはなぜか清々しささえ感じる。
こいつには、人間社会の忖度なんてものは一切関係ないんだなあと腑に落ちる。

このように、野生のモリモトとコミュニケーションを図ることは非常に困難を伴う。
一般の方々には難しいと思うが、モリモトとコミュニケーションを図る際は、延々バカ話に明け暮れるという手法を取るしかない。
わたしは、この2年余り、その手を使ってなんとかモリモトと接してきた。
間違っても、モリモトとの会話に意味があるなんて思わないことだ。
モリモトは人語を話しているように見せかけて、わたしたちの期待するようなことは一切言っていないと心得たほうがいい。

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