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身体の使い方を通じて、頭の使い方を学べないか(2/2)|思考法への転用

前回、格闘技からの学びについて書きました。

本日は、そこでの学びを、物事の捉え方・考え方へ応用していきたいと思います。

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前回、格闘技術を学ぶなかで、以下のような学びを得た、と書きました。

■ 精神的なブレーキを解除する
■ 筋肉に神経が通る
■ 動きを真似する
■ 動きをイメージする
■ 理想通りに動かす
■ 思考と動きを切り離す

それぞれの項目について、掘り下げてみます。

精神的なブレーキを解除する

仕事においては、全力で殴っていいのか躊躇う、というシーンは無いと思います。(精神的ダメージの話はありますけど、それは、むしろ自制心が求められます)

ただ、「これは言いづらいけど伝えねば」みたいな内容面での躊躇いや、「緊張してしまって思い通りのパフォーマンスが出ない」みたいな心理的なブロックに直面することはあるでしょう。

「そういうときには演じればいい」とコンサル時代の先輩に教えてもらったことを思い出します。偉い人の前で緊張することもある。ちょっと言いづらいなと思う時もある。でも、そこで「理想的な誰か」ならどう振舞うかを考えるんだ、と。そして、その「役を演じる」のだと。

この教えは、かなり学びが深いです。なお、プライベートでも使えます。イライラしたときや、物事が思い通りにならなかったとき、あるいは、何か想定外の事態が起こった時、「自分事」から一旦切り離して、そういう場面に出会ったと想定し、対応策を練るんですよね。意外と、スムーズに物事が解決できたりします。

筋肉に神経が通る

筋肉がある、としり、その筋肉を使う、という感覚を得る。これが筋トレおよび格闘技のスタートなんですけれど、仕事においても同じです。

やったことない仕事って、勘所が分からないんですよね。何を、どの順番でやったらいいのか。そして、どれくらいの時間をかけて良いのか。何は自分で判断し、何は質問していいのか。質問は誰にしたらいいのか。どういう質問をすればいいのか。

また、頭の使い方も良くわかりません。「もっと考えろ」「自発的に動け」「自律性が無い」とか、言われたって困ります。

特に、職歴が浅い人たちにとっては難問です。それまでの人生を過ごしてきた「学校」という場において、一般的に求められるのは「言われたことを100%こなすこと」です。そうすると、「言われてないことにトライする」ってのは、未経験の領域です。

しかも、言われてないことは60点でも80点でも良かったりします。トライすることが大事なんですよ。とかいうことも、わかりません。やるからには100点を取らねば、ってなるでしょう。

そういう「仕事のやり方の存在」を知り、そこで求められているアウトプットに向けて「こういうフレームワークで整理して、穴を見つけて埋める」とか「フレームワーク上で、どこに顧客や上司・先輩の興味関心が集まっているかを判断し、そこを深掘りしていく」とか、そういう考え方の型を理解することが大切です。

できなくてもいいので、「仕事のやり方・考え方」の存在を知るところからスタートです。

動きを真似する

続いては、見様見真似です。先輩のやり方、考え方を真似します。

できなくてもいいんで、とにかく動く。できた方が良いんですけど、できなくても仕方ない、という諦めで自分を慰めながら、全力で真似するんです。

プログラミングで言えば写経ですね。門前の小僧が習わぬ経を読めるレベルを目指しましょう。

ここで、基本動作ができるようになると「仕事ができてる感」がでます。まずは、ここまで行く。そうすると、上司や先輩に怒られることが減ります。

フックと言われたら、顔の側面にパンチを出す。
ワンツーと言われたら、左のジャブでけん制して、右の拳を叩き込む。

完璧でなくても、その動きをすれば、最低限の期待値は越えられます。リアクションが鈍くても、パンチが遅くても、腰が入っていなくても、とりあえず「言われた動きができる」がこの段階です。

動きをイメージする

大切なのはここです。「その仕事のやり方を、ちゃんと理解する」というステップです。

どういう目的で、この動作をしているのか。もっと効率的な筋肉の使い方、力の伝え方はないのか。プロ(先輩や上司)と何が違うのか。

似たようなことができるようになってから、ここのステップで「探求心を持つか」が勝負の分かれ目です。

・提案書をかけ、といわれて、見よう見まねで書いた。
・スケジュールを引け、といわれて、見よう見まねで引いた。
・後輩のタスク管理をしろ、といわれて、見よう見まねで管理表を作った。

という段階から一歩進んで

● 提案書の構造を理解し、なぜ、その順番なのかを考え、今回の提案はどういう内容をどの順番で書くべきなのかを考える
● スケジュールの時間軸の単位(月/週/日/時間等)、タスクの粒度を理解し、なぜ、そういう単位で書かれているのかを考え、今回のスケジュールが同じ粒度で良いのか、変えるとしたらどう変更すべきかを考える
● 既存の管理表の中身を見て、自分がその単位で作業指示・管理されたとして、それで求められた行動ができるか?を考え、部下のスキルレベルに照らし合わせて、変更する必要がないかを見極める

というようなところまで思考を展開するのがこのステップです。

脇を締めて打つ、は、腰の回転の力を逃がさないように腕を上体にくっつけたまま前に持って行く、ということです。脇が締まっているかどうかではなく、力を横に逃がさないためにはどうするか、が論点です。そうすると、脇を締めるだけでなく、蹴り足(オーソドックスなら右足)で地面を蹴って推進力を作るタイミングなども合わせて考えることになります。

このように、「動きをイメージする」ということは、一連の動作をメカニズムとして捉えていくことにつながります。

ここに辿り着く人と、たどり着かない人が、「仕事ができる人(自分で工夫して価値を出す人)」と「仕事ができない人(言われたことだけやる人)」の分水嶺だと思います。

理想通りに動かす

どうすべきか、が分かったとして、それがすぐにできたら苦労はしません。ここからが修行の日々です。

プロをプロたらしめるのは、ここです。

以前、会社のブログでも紹介したのですが、武井壮さんとタモリさんの、以下の話があります。(※引用元のlogmiのリンク先は既に消えてしまっているのですが、引用元はlogmiと記載しておきます)

「まず1個は、自分の身体を思ったとおりに動かす、っていうこと。まず一番簡単なことでいうと、たとえば、目をつむって立っているときに、真横に腕を挙げてくださいっていうと、アスリートとかでも、結構上にあがっちゃったりとか。目をつぶってやると、こうやってちょっと下がったりとかすることがあるんですよ。これってすごい問題なんですよ、アスリートにとって。」
「たぶん今タモリさんにやってもらったほうがわかると思うんですけど。目をつむってもらって、真横だと思うところで腕を止めてもらっていいですか? 「ここが真横だな」みたいな。はい、お願いします。(タモリ、腕を横に上げる。少し腕が水平より上に上がっている)」
「みなさんわかるでしょう。これを僕、直しますね。タモリさん、目をつむったままで。これで、さっきよりはかなりまっすぐですね。かなり。タモリさん、ここ覚えてもらっていいですか? 感覚で。ここらへんがまっすぐ、っていうところ。じゃあ1回、目を開けて、下ろしてください。(タモリ、腕をおろす)」
「そうしたら、さっきはタモリさん、手がこれくらいまで上がっていたんですよ。だから、(会場の)みなさんも「ああー」って。まっすぐだと思っているのにまっすぐじゃない、とわかったじゃないですか。今度もう一回、目をつぶって、さっき覚えたところに手を挙げてください。さっきの感覚のところです。(会場 感嘆 拍手)」
「これはスポーツが上達したわけでもなんでもないですけど、タモリさんはひとつだけ、腕の「たぶん真横だ」と思うところを覚えたということなんです。」

出所:logmi ※注:この出所のURLは、2017年9月時点で既に無効になってしまっていました。(削除時期は不明です)

思った通りに身体を動かす、というのは、極めて難しいことです。知ってる、と、できる、の間には、とんでもなく大きな差があるわけです。

MBAを卒業したから、コンサルタントと同じような問題解決が可能か?という問いへの答えは「No」です。
そして、コンサルタントだから、うまく会社経営・事業運営ができるか?というお話も「No」です。

その人が問題解決できるなら、それは、MBAを卒業したから、ではありません。その人がうまく事業を経営できるなら、それは、コンサルタントだったからではありません。「正しいやり方を理解し、実践していたから」です。

ボクシング漫画をどれだけ読んでも、パンチの切れは上がりません。
ビジネス書をどれだけ読んでも、ビジネススキルは上がりません。

そこに書かれている「何か」を見つけて、それをイメージしながら、実践していくしかないんです。ローマは一日にして成らず。デンプシーロールは強靭な下半身と、日々の修練無くしては為らず。

思考と動きを切り離す

ボクシング漫画とかでも「意識が飛んだ状態で、打ち合っている」という描写があります。で、ラウンドの合間に、セコンドに話しかけられて「あれ?」ってなるやつです。

身体にしみこんだ動きで反応する。

仕事においても、体調が悪くて頭が回らない時とかに、似たような「体に染みついた動きでカバーする」というようなことがあるっちゃぁあるんですが、そういう話とは少し違う視点の方が、ビジネスにおいてはしっくりくると思うんですよね。

つまり「こう動きたいと思ったら、自然にその動きができてしまう」という状態です。

「相手の右肩が動いたら左のガードを上げつつ、右のボディを叩き込む」というシーンをイメージしてみると、

1.「右肩が動いた」と認識する
2.左のガードを上げる
3.体を少し右に捻ってタメを作る
4.ガードの上にパンチが当たる瞬間に軽く踏み込み
5.右ボディをみぞおち近辺に叩き込む
6.即座に右手を戻して顔面付近をガードしつつ
7.軽くステップバックして次の行動を決める

というような流れになると思います。

もし、この2~6のあたりを何も考えずに一連の動きとして行動できたとすると、

1.「右肩が動いた」と認識する
2.一連の”例のヤツ”を実行しながら、相手の様子をうかがう
3.ステップバックするかしないかを判断する
4.しない場合(ボディがクリーンヒットした場合)は、別の”例の奴”に移行

という話になるでしょう。(別の”例の奴”、は、たぶん、顔面への左フックか、左のショートアッパーで下から顎を打ち抜くかなんじゃないかと想像します。)

僕は格闘技の素人なので、上記の内容が正しいかはよくわかりませんし、そもそも、この動きを自分でできるのかと言われると、その域にはまったく達していません。

ただ、仕事においては、こういう一連の動き、すなわち ”例の奴” を大量に蓄積しています。そして、その発動条件も、かなり細かく設定されています。(言語化できていないものもありますが、できるだけ言語化して、後輩に伝えているところです)

この域に達すると、クライアントに説明したり、相手の意見を引き出す(=”例のヤツ”に相当)ことを行いながら、「相手の反応を伺う」「話している言葉の真意(意図的に隠しているのか、無意識で隠れてしまっているかも含めて)を察する」などに脳のリソースを張ることができます。

そして、そこで得た情報を基に、ほぼ自動的に「どういう風にツッコミを入れれば、誰も傷つかずに、最も合理的な解に辿り着くか」を選定して、その行動をとれます。

で、そのツッコミを入れて議論を整理している(=別の”例の奴”に相当)間に、さらに周囲の反応を見て情報を集め、過去の知識や知見、事例などを頭の中で検索して、どの話をしたら議論が正しい方向に向かいそうか、をシミュレーションすることができるわけですね。

格闘技も、車の運転も、仕事も同じ話。

ここまで書いてきた通り、格闘技であろうと、仕事の話であろうと同じです。前回のnoteで例に挙げたものを含めるなら、車の運転も同じです。料理も同じでしょう。俳優さんの演技も同じなんだと思います。(だから、上手な演者さんは絶妙のアドリブができるんでしょう)

最終的には、動作が身についてからが勝負です。コンビネーションパンチの打ち方も、車のギアチェンジも、身体に沁み込んで、頭で考えなくて良くなると、「脳のリソースを、もっと大切なことに回す」ことができます。

どのシチュエーションでどのパンチ、どのコンビネーションを打つべきか。
どのシチュエーションで、何速に入れて、どの角度にハンドルを切り、どの程度のアクセル開度(もしくはブレーキの踏み込み)を行うべきか。

こういう状況判断や戦略策定に、限られた脳のリソースを回すわけです。

ラーナブル(Learnable)になろう。

もう、20年以上社会人をやって、そのうち、15年くらいはコンサルタントとして生きてる僕の場合、「まったく知らなくて、何から手を付けてよいか分からない」というシチュエーションに出会うことって、そうそうないんですよね。

初めてのクライアント業界だったり、初めての領域だったりしても、「考え方の型」とか「物事の進め方」とか、そういうものが沢山蓄積されているので「こういう感じかな?」で始められます。で、まぁ、70-80点くらいにはなる。そこから、あと20点30点を積み上げていき、どこかで100点を超える価値を出す。というプロセスになります。

そんな中で、格闘技に関しては、まったく経験もなく、また知識もなかったので、そこから得られる学びは非常に大きいものでした。

知らないものに取り組み、そこから学び取って、本業に活かす、というスタイルを僕は「ラーナビリティが高い状態」と定義しています。形容詞的に言えば「ラーナブルである」となります。

参考記事:ラーナビリティとは (gixo.jp)

一見関係ないようなもの事も、突き詰めていけば、本質はまったく同じというケースが、世の中には非常に多いものです。

自ら望むだけで様々な経験を積めるのが、人生の良いところです。色々なチャレンジをして、いろいろな経験を積み、そこから学び取ったものを、他の領域でも活かしていけると、きっと、豊かで実り多き人生になるんじゃないでしょうかね。

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