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デザイン・ドリブン・イノベーションを読む(3)|第2章:デザインと意味

全ての製品は意味を持っている。しかし、多くの会社は、意味のイノベーションをどうやって興すかについては気にかけていない。そうした会社は、人々が現在どのようにモノに意味を与えているかを理解することに努めている。しかし、そこで見つけられるものは、そうした意味は競合他社がデザインしたイノベーションによって提案されたものだということだけである。
- 第2章:章扉より -

さて、本日は第2章です。いよいよ本論です。章題は「デザインと意味」。タグラインは「モノに意味を与えることでイノベーションを興す」です。

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デザインとは?

まぁ、僕も思いますし、皆さんも思うでしょうけれど「ここで言う、デザインってどういう意味?」ってなりますよね。なります。うん。っていうかなってます。

それに対するカウンターパンチがコチラ。

デザインの定義は流動的であり、つかみどころがない。それは、人々がデザインの意味について考えたり議論したりしないからではない。実際には、彼らはデザインを実践している。問題は、収斂が足りないことにある。

まぁ、要するに「ちゃんと議論されてないんだよね」ってことです。そうですね。ほんとそう思います。で、本書においては懇切丁寧に解説されるわけですが、しれっとエッセンスだけ抜き出しておくと

・製品の形態としてのデザイン という概念では狭すぎる
・周囲の環境をより良いものにしていく、全てな創造的なものごと という概念では広すぎる

ということになります。(詳しくは原典にあたってください) じゃぁ、何なのよ?というところで出てくるのが「意味」というキーワードです。

「デザインとは(モノに)意味を与えるものである」というわけですね。

意味とは?

じゃ、意味ってなんだ?ってことになるんですが、それに関してはこの一文をお読みいただきましょう。

実用面では、機能と成果が論じられるが、それと等しく、シンボルやアイデンティティ、感情といったもの、言い換えると、意味に関する次元も重要視される。したがって、弁証法的議論は、機能と形態の間におけるものではなく、機能と意味におけるものとなる。

カッコいい。もう一度書いておこう。「弁証法的議論は、機能と形態の間におけるものではなく、機能と意味におけるものとなる」。うひょー。

で、機能と意味のお話になります。そこでは、製品が余分に感情的であったり、象徴的であったりする必要はないんだけど、とはいえ「形態は機能に従う」という言葉に縛られすぎるのも違うよね。と語られるんですが、ざっくり割愛します。

で、「機能(=技術)」が生み出す”パフォーマンス”とセットで語られる、「感覚(=言語)」が生み出す ”意味”の例として紹介されるのが、ブックワームシェルフという名の本棚です。百聞は一見に如かずという奴で、写真をご覧いただきましょう。これです。

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画像引用元:https://kartell.co.jp/item/6249.html

本棚という機能を保持してはいるものの、これを「本棚」として購入する人は、おそらく皆無ですね。これは「インテリア」であり「装飾」です。しかも、書籍を置くことで完成するため、どの書籍をどのように配置するか、まで含めた装飾品となります。

この事例を見れば、デザインというものが起こすイノベーションは、確かに「機能」で語れる範囲を逸脱しているな、ということが分かります。その一方で、当然ながら、機能を提供することが求められている、ということも分かります。前衛芸術ではダメなんだな、と。

意味を「完璧に与える」のは困難

しかしながら、じゃぁ、意味を与えるってどうやるんだよ?って思っちゃいますよね。そうなんですよ。結局のところ、提供者側が付与できる部分には限界があり、最終的には「ユーザーとの関係性の中で見出されるもの」になっちゃうんですよね。意味って。

意味は、ユーザーと製品の相互関係による結果である。意味は、製品に本来備わっているものでも、決定的にデザインされ得るものでもない。会社は、製品の持ちうる意味、それを特徴づけるデザイン、技術、さらには、ユーザーが独自の解釈をできるようなスペース、つまりプラットフォームとなり得る言語といったものを考えるだろう。
人々は時々もともとの目的と大きくかけ離れた製品に意味を与えることがある。会社がそのような傾向を見つけ、理解し、支援するとき、その製品は、第2の製品人生から利益を得るかもしれない。

なので、メーカーは”意味”を「与えられるように考える(設計する)」ものの、最終的には「ユーザーの手に委ねざるを得ない」わけです。そして、その状況においては、当然ながら「機能」を無視することもできません。だって、ユーザーは、その製品・サービスを”機能的に使う”んですからね。

で、迎えるのが本章のクライマックスです。

スナイデロの「身体障害者向けに開発されたキッチン」が持つ機能性(作業スペースの広さ、円形の調理場、円形の回転棚など)が、健常者に対しても大ヒットしたという事例を挙げて、車いすでも使えるように、と考えられたデザインが、「家族や友人と一緒に料理をしやすい」という意味を得たのだと述べられます。そして、以下のように続けます。

デザインが真に独自なものになるには、言い換えると、イノベーションが他のタイプとは違うものになるには、人々が必然的に製品に与える意味を刷新しなければならないということだ。(中略)これは、イノベーションマネジャーが、製品性能の向上という観点でのみ考えるとき、よく見落としがちな側面である。

狙ったか狙わなかったかはさておいて、”意味”が変化したところに、イノベーションがある、というわけですね。そして、本章の結びとして、僕たち(本文中ではマネジャーに向けてですが)に次の問いが投げかけられます。

・人々が私たちの製品を購入する最大の理由は何か?
・なぜ、その製品が彼らにとって意味があるのか?
・新しい意味を提案する製品を提供することで、私たちはどのように人々を満足させ、より喜ばせることができるのか?

そして、拙速にこの問いに応えようとして、長々とした回答リストをつくるのではなく、まずは、深呼吸をして落ち着くところから始めよう。と本章は締め括られます。

なぜならば、その回答リストには、競合他社と同じ答えがたくさん含まれていて、何の差別性も見いだせない恐れがあるってことなんですよ。ははは。夏の夜にぴったりのこわーい話ですね。いやー、ぞっとするわ。


というわけで、これにて第2章が終了です。イノベーションを興す、というお話なんですが、そもそもの「製品・サービスの提供価値」という観点で、いろいろ考えさせられてしまいますね。次章はデザイン・ドリブン・イノベーションと経営戦略の関係性のお話です。読み進めるのが楽しみですね。

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