#1.SAPのQ
SAPのQを決めるのは誰❓
まず、
SAPプロジェクトにおけるQCDバランスのQとは何でしょうか。
Qを品質を含むスコープとして、いいかえると、
SAPプロジェクトの「スコープ」とはなんでしょうか。
そもそも、「スコープ」とはなんでしょうか。
「スコープ」とは、
プロジェクトの目的を達成するものです。
「スコープ」を達成することで、
プロジェクトの目的を達成することができます。
では、
「スコープ」を決定する部門はどこでしょうか。
「スコープ」を決定する部門は、
「スコープ」の達成によって達成されるプロジェクトの目的、すなわち、
「スコープ」の達成によって解決される問題の所有者です。
では、
SAPによって解決される問題とはどのようなもので、
その問題の所有者はどの部門でしょうか。
いわゆる個別システムに対する
SAP(統合システム)の特徴は、
システム統合、データ統合、プロセス統合ですので、
SAPによって解決される問題は、
経営判断の迅速化、業務の標準化によるコスト削減、
E2Eプロセスのリードタイム短縮など、
個別部門の問題ではなく、全社横断的な問題となります。
さて、その場合、
それらの問題の所有者はどの部門になりますでしょうか。
経営判断の迅速化は、
経営もしくは企画室、戦略室の問題でわかりやすいですが、
業務の標準化によるコスト削減はどの部門の問題でしょうか。
強いて言えば、財務部、経理部の問題でしょうか。
ちなみに、
E2Eプロセスのリードタイム短縮は、どの部門の問題でしょうか。
意外にその問題の所有者にあたる部門は日本だとあまり見かけないのではないでしょうか。(海外だとCPOなどの横串機能の役割が定義されています)
プロジェクトの目的、
すなわち、解決すべき問題の所有者があいまいな場合、
いいかえると、解決すべき問題の解決策、すなわち「スコープ」の決定者が
曖昧な場合、「スコープ」は決定できません。
こうした状況下のSAPプロジェクトでは、
QCDバランスの要となるQ、すなわち、「スコープ」は決まりません💦
解決策としてのSAP
不思議なことに、
一般的なSAPプロジェクトでは、
SAPが解決する問題の本来の所有者であるはずの
経営や企画室・戦略室、財務部・経理部やCPOが不在なままプロジェクトは体制が立ち上がり、遂行されます。
そして、
SAPプロジェクトでは、本来の問題の所有者不在のまま、
SAPがどのように経営問題や財務問題、E2Eプロセスの問題を解決するか問われないまま進み、プロジェクトの炎上がはじまります。
なぜこのような現象がおこるのでしょうか。
それは、
すでに解決策としてSAPがあるために発生します。
もし、
SAPのような解決策がなければ、
スクラッチではじめから作らなければならなければ、
どうすれば全社的な経営問題や財務問題、
E2Eプロセスの問題を解決できるかと問いをたて、
その解決方法や実現方法について、部門横断の議論がなされるはずです。
でも実際には、
はじめから解決策としてSAPがあるため、思考が停止してしまい、
SAPを導入できれば経営問題や財務問題、プロセス問題が解決されることになり、本来は手段でしかないSAP導入自体が目的になってしまいます。
SAPプロジェクトのQCDバランス
こうした理由から、
プロジェクトには、経営や企画室・戦略室はもちろん、財務部・経理部も、
CPOも不在となり、「スコープ」たるSAP導入のあり方がそれでよいのか、誰も判断できない状態となります。
結果、
SAPプロジェクトのQCDバランスの要のQ、すなわち「スコープ」は、
SAP導入という、おざなりで、おかざりだけの「スコープ」になり、
一方の現場は、
現状の業務保証のためだけに勤しむことになります。
そのため、
残念なことに、単純にSAPを導入しても、
経営問題も財務問題も、もちろんE2Eプロセス問題も解決されません。
加えて、最悪の場合、
既存システムをSAPに置き換えることで業務が変わってしまい、既存業務の強みを失い、競争優位を失っていくこととなります。
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