見出し画像

「しゃべるピアノ」ショートショートnote杯

小学校から帰った私は、クロスワードパズルの雑誌を広げると、やりかけの問題にとりかかった。

「どこまでやってたかなぁ。あぁここだ」

「どれどれ」

後ろから、彼女の声がした。

「もぉ。私が一人で解くんだから、邪魔しないで」

私は釘をさした。

「えーと、国民栄誉賞を受賞した歌手は〇〇〇ひばり・・・」

「みそら」

彼女が先に答えた。

「し、知ってるわよ!私が一人でやるって言ったでしょ!」

彼女は反論せず、沈黙を決め込んだ。

「もぉ・・・。次は、居間やホテルのラウンジにある椅子に似た・・・」

「そふぁ」

「こら!今度、先に答えを言ったら二度と口をきかないからね!」

私はそう言うと、最後の問題にとりかかった。

「物事をひとつひとつ調べる事。〇〇〇つぶし・・・」

「しらみ」彼女が即答。

「あぁ!」

私は広げた雑誌の上に、突っ伏した。

ドレミファソラシしか喋れないピアノに、先に答えを言われる私って・・・。

「ししし・・・」

彼女こと、しゃべるピアノが嬉しそうに笑う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?