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[ユーモアミステリ紹介]「谷根千ミステリ散歩 中途半端な逆さま問題」 東川 篤哉:著[1498文字]

『謎解きはディナーのあとで』シリーズで有名な東川 篤哉(ひがしがわ とくや)氏の下町ユーモアミステリ短編集です😊。
(ちなみにタイトルにある「谷根千(やねせん)」とは谷中、根津、千駄木周辺地域を指す呼び名です)
眉間に皺寄せて謎を解くミステリというよりも、気軽に読める(読みやすい)、いい意味でゆるいミステリ、略してゆるミスです😆。
 
一見日常の謎ミステリーのように見えますが、人が殺される話です。
なのに陰惨さや重さを感じさせないところが、東川 篤哉氏のユーモアミステリの特長といえるでしょうか🤔。まぁ笑いがいささか昭和っぽい気がしなくもないですが😆。

10代、20代の頃、クイーンやカー、綾辻行人氏や島田荘司氏のガチガチな本格ミステリを読んでいた頃だったら、なんやねんと思ったかもしれませんが、今は楽しんで読めるようになりました。
体型も心もすっかり丸くなったなぁ😅。

東京・谷中には、おいしい食べ物、下町情緒、そしてミステリが揃っている!
下町情緒あふれる谷根千にある、鰯専門の居酒屋。
看板娘(?)のつみれの元に謎めいた相談が持ち込まれる。
困り果てて頼った開運グッズ店の店主・竹田津は、お好み焼きを食べたり猫を構ったり、寄り道ばかりしながらも、鮮やかに謎を解き明かす!?

アマゾンより引用

JR日暮里駅を出て、御殿坂と呼ばれる坂道を西へ向かいながらゆっくりと歩くこと、しばらく。おいおい、もうちょっと近い最寄りの駅って、なかったのかよ、ちっとも着かねーじゃんか!と誰もが不満の呟きを漏らすころ、前方に大きな階段が見えてくる。これがテレビの街歩き番組でお馴染み、『夕やけだんだん』と呼ばれる大階段。下った先が散歩好きの聖地『谷中銀座商店街』だ。下町風情の残るお店が五十件以上も軒を並べる、谷中のメインストリート。

「谷根千ミステリ散歩 中途半端な逆さま問題」より

■第1話 足を踏まれた男
足を踏まれていないはずなのになぜその男は痛そうにしたのか?石材店に入った泥棒はなぜ何も盗まなかったのか?
関連性の無い謎が繋がったとき大きな事件の真相が暴かれる――。
 
うーん、読み手が事件の真相を推理するには手がかりが少ないかなぁ、と負け惜しみ^^;。

■第2話 中途半端な逆さま問題
部屋の写真立て、本棚の本やDVD、置時計、花瓶そして金庫がなぜ天地が逆さまにされているのか?

作中でも言及されていますが、エラリークイーンの『チャイナ橙の謎』のオマージュですね^^。中途半端に物を逆さまにするという不可思議な行為に納得がいく理由をつけるのがこの作品のミソです。探偵役が犯人を間違えてしまう?のはご愛嬌^^;。

■第3話 風呂場で死んだ男
犬神家の一族のスケキヨよろしく、その男はなぜお風呂場の浴槽で水の中から二本の足を出すという不自然なポーズで殺されたのか?

作者による事件解明の伏線の張り方に、本格ミステリならではの面白さを感じられます。

第4話 夏のコソ泥にご用心
事件自体に謎があるというよりは、犯人や作者が仕掛けたトリックではなく、別の要素で事件が難解になるというパターンです。
謎の理由付けは、ユーモアミステリ―ならではと言えると思います。

以上、4編が収録されています。タイトルに「谷根千ミステリ散歩」とあるものの、下町情緒があふれるとか、谷根千ならではの舞台設定や謎解きがあるわけでは決してないのが少々残念でしたが。

とはいえ、多重解決や特殊設定といったやや敷居の高いミステリーや、一行一句読み落とせないといったがっつりした本格ミステリーでもありませんので、ちょっとしたスキマ時間に1話ずつ気軽に楽しんで読める作品集であると思います😊。

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