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「株式会社リストラ」ショートショートnote杯

長らく続く不況で私たちの会社は何年も赤字を垂れ流していた。

早晩、大勢の社員がリストラ=首切りの憂き目に会うだろうと、私たちは顔を合わせるたびに、ため息をつくのが日課になっていた。

そんなある日、社長が私たち社員を一堂に集め、銀縁の眼鏡の奥に鋭い目を光らせた男性を紹介した。

「こちらは株式会社リストラから来た方です。みなさん、この方の言うことをよく聞いて下さい」

ついにこの日が来たか、と私は心の中で肩を落とした。
『彼』は我々の首を切りにきたのだ。

それから三年後。奇跡が起きた。

私たちの会社は、一人の社員の首を切ることなく、業績が回復し、むしろ社員の数は増えていた。

『彼』は、不採算事業を整理し、将来性のある事業に社員を割り振り、見事に会社を成長軌道にのせたのだ。

「てっきり、あなたに首を切られるのかと思いましたよ」

私の言葉に『彼』は首を振る。

「よく誤解されます。リストラは事業の再構築を意味し、決して首切りじゃないんですよ」

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