忘却と愛


忘却することをもって愛としよう。
わたしは、大好きだった人のことを忘れることにした。本当に人生を狂わされるほど好きで、愛していて、叶うことなら自分のものにしたかった。叶わぬ願いになってしまったのだが。ずっと手篭めにして、手元に置いておきたかった。
けれどそれは叶わぬ願い、あなたの足の腱を切って永遠にわたしのものにしたかったけれど、わたしはよわいからそんなことをできるはずもなく。
だからわたしは、あなたを忘れることを、愛と信じよう。

忘却することは、ときに人を傷つけ、守ることができる。だからわたしはあなたを忘却すると決めた。もう二度と会わないと決めた。あなたとの思い出を、なかったことにする。忘れてしまう。それをもって愛だと認めよう。愛したことさえ忘れてしまえば、きっと、綺麗なものだけ最後に残ってくれるから。

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