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海洋研究の守り方(SDGs14.a その5~海の豊かさの守り方a-1)

海の研究が、いよいよ本格的に動き出しました。しかも世界が一丸となって海の研究をしていこうという動きになってきたのです。海洋科学の10年の旗揚げからは世界各国で様々な研究者によるフォーラムやシンポジウムといった研究発表会が頻繁に行われるようになりました。でもいくら研究者が素晴らしい論文を発表して、研究者間で情報を共有しても海のゴミは減りません。せっかく素晴らしい研究結果があるのに使わなければまさに絵に描いた餅になってしまうのです。

研究結果というのはいわば仮説です。「いまこんな課題があるからこうすれば、こうなるはずだ」という理論なわけです。普通であれば広大すぎてあきらめざるを得なかった海の問題に果敢にチャレンジして、細かな数字や難しい計算式を使ってモクモクとシュミレーションして実験してようやくたどり着いた貴重な仮説です。いわば研究者の皆さんが汗水たらして頭を絞ってようやく導き出したアイデアなのです。このアイデアのバトンをしっかり引継いで形にしたものが、『海しる』です。正式名称は「海洋状況表示システム」。海には様々な産業があります。漁業、海運業、レジャー、ビーチクリーン、スポーツ、保安関連の公務員。それが同じ海というフィールドでそれぞれが活動しています。さらに空気の800倍も抵抗があって、電波も通しにくい水という環境に加えて波や風、津波や台風といった異常気象といったところも計算に入れなくてはいけないし、さらに220万種にも及ぶ海の生物が自然に生活しているのです。今まではそれぞれ別のところで独自に研究したり、情報を提供していたりしていたのですが、2019年4月17日、内閣府を中心とした各省庁が協力して作成したサービスです。

海洋状況表示システム「海しる」
https://www.msil.go.jp/msil/htm/main.html?Lang=0

海しるは「海の今を知るために」をスローガンに作られた海洋情報を集約したサービスです。衛星情報はもちろん漁港や海運業の運航管理、防災の設置場所、海水浴場に至るまで1つの画面で見れるサービスです。(※1)しかもこの情報自体は無料で使うことができて、さらにシステムやデータ自体も誰でも使えるオープンAPIとして提供してくれるのです。海水温と潮のながれから漁獲の精度を上げたり、海運業の効率的な航路を決めたり、災害を早い段階で警告したりする未来がすぐそこにきているのです。(※2)

他にも海洋技術をつかった実際の取組が徐々に増えてきています。(※3)でもこれだけ解明されてきて世界的にも注目されている海にもかかわらずまだまだ発展の余地は残されています。というよりも海の大きさに比べれば発展の余地しかないと言っても言い過ぎではないかもしれません。そして、本来その研究者の苦労を形にしていく者こそ、民間企業の皆さんだと思います。企業は利益を求めるものですが、それ以上に社会貢献という大義名分があります。最近では企業の大きさではなく、社会貢献度の高い企業の方が若い世代に求められているという状況にもなってきています。もともと提案する商品やサービスというのは困っている人を助けるために作られます。ある人がある問題で困っていて、その問題を解決してくれる商品やサービスがあれば、見合った分のお金を払ってその商品やサービスを手に入れて、解決するという仕組みがビジネスです。これだけ後押しがある海の世界に企業が乗り出さないわけにはいかないはずです。そして最近の動きとして注目されているのが、海洋スタートアップです。企業として未知の世界に飛び込むのはなかなか踏ん切りがつかない。でも、誰も入り込んでいない市場が広がっているまさにブルーオーシャンの海の産業は魅力にあふれる業界。そんな冒険心をもった起業家が2019年からどんどん増えてきているのです。巨大すぎる海を解明するために果敢に挑んできた海洋研究者の思いを形にするためにも、民間企業も手つかずの市場である海に果敢に挑んでほしいと思います。海の時代は始まったばかりなのです。


※1、海上保安庁 海洋状況表示システム(愛称:海しる)の運用開始について~国土交通大臣によるセレモニーを行います~
※2、日本経済新聞 2020年2月27日 「海のビッグデータ」活用
※3、国連海洋科学の10年  わが国の取組み事例集
https://oceanpolicy.jp/decade/docs/20210610_JapanActivity_v3.pdf

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