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闇の漁業補助金からの守り方(SDGs14.6 その5~海の豊かさの守り方6-1)

14.6のターゲット冒頭部に「開発途上国及び後発開発途上国に対する適切かつ効果的な、特別かつ異なる待遇が、世界貿易機関漁業補助⾦交渉の不可分の要素であるべきことを認識した上で・・・」と書いてある通り、漁業補助金を必要としている漁師は世界中たくさんいるのは事実です。単に漁業補助金を辞めればいいというわけにはいかないのです。正しい支援となる補助金をどのようにすればいいのか。漁業補助金交渉が確定したあとからが本領発揮。本格的に考えていかなくてはいけないのです。ではその闇の漁業補助金から魚たちを守り、正しい支援となる補助金を作ってくれるのは誰でしょうか?答えは国いわゆるお上です。つまり私たち一般人では補助金自体をどうにかすることは難しいわけです。でも全く手が出ないかというとそうでもありません。

例えば、闇の漁業補助金がどうなっているのか開示するようにお願いしてもいいし、水産政策審議会や水産関係のセミナーに出て闇の漁業補助金を止めるアイデアを話しするのもいいでしょう。でも国とか政府へのアプローチにこだわらなくても解決できるはずです。要は魚をこれ以上絶滅させなければいいわけなのです。もっと言えば闇に染まった魚を私たちが買わなければいいのです。そうすれば闇の漁業補助金を使って獲った魚は誰にも買い取ってもらえず、結局お金にもならず、国費だけを使って外貨さえも稼げなくなるのです。大切な国民の税金をミスミスどぶに捨ているようなことは国は行いません。ではどのようにすれば屋に見染まった魚を買わなくなるか。答えは「すべてを明らかにする」です。

「すべてを明らかにする」の具体的な手順は3段階あります。まずはどのような補助金がどのような経緯で払われているかということを明らかにすることです。今までグレーゾーンだった漁業補助金を明るみに出して、国のお金がどこにどのように流れているかを誰でもいつでもわかるような仕組みが必要です。次にどのような人が獲った魚でどのような経路で私たちの手元に届いているのかを明らかにすることです。そんなことをやってしまうと変なクレームとか来るし、ましてや魚がたくさんある中でどれが自分の魚かなんてわかりっこないというかもしれませんが、すでに農業ではやっていることです。よくスーパーなどで「私が作りました。○○さんのジャガイモ」といったポップが貼ってあるのを見たことはありませんか?あれはクレーム先はこちらという意味合いではなく、この人が丹精込めて作った野菜ですという意味合いで出しています。決して電話番号まではいらなくですし、どこの〇〇さんが獲った魚というだけで、訳の分からない国の商品よりも生産者が見えて安心できるというお客さんの声が圧倒的に多いのです。さらに身分を明かすことで闇の漁業補助金といった後ろめたいことを私はしていませんよとアピールもしているわけです。そして最も重要なのは一般消費者へアピールです。漁業が今このような事態になっているということを世に広く知ってもらうこと。特に日本の漁業は7500年も続く商習慣が確立している世界です。成熟してきた分、専門性も高く構造や仕組み、漁業が抱える課題を外にもらさず内々に処理してきました。もっと海自体を広く知ってもらうことが必要です。

このような条件を揃えた活動をしているのがMSCやASC、MELといった水産エコラベルの活動です。(※1)仕組みとしてすべてを明らかにして持続可能な漁で獲られた魚にしかつかないラベルです。問題は一般消費者へのアピール不足です。水産エコラベルの認知度はまだまだ低く、もっと広く世に知れ渡るように仕向けていかないといけません。とりあえず水産エコラベルであろうと「〇〇さんの魚」のポップであろうと魚の出どころをアピールをすることで、闇の漁業補助金で獲られた魚と正しい支援で獲られた魚とを区別することができるのは大きな一歩になるはずです。

いろいろお話してきましたが、最後にもう1つの守り方をお話しします。なぜ闇の漁業補助金がすたれずに世界中ではびこっているかというと、今の漁業の在り方が補助金なしではやっていけない現実があるからです。もっと漁業だけでしっかり儲かる仕組みになってさえいれば補助金頼みということ自体が起きなくなるかもしれません。ではどうすれば海で儲けることができるのか。それは次回の14.7の「海のビジネスを世界へ」と14.bの「儲かる漁業へ」でじっくりお話していくことにします。いよいよ14.4の「密漁禁止」から始まった漁業の問題もクライマックスに突入していきます。

to be continued…

※1、海のイドバタ会議 無報告漁業からの守り方(SDGs14.4その7~海の豊かさの守り方4-2)水産エコラベル
https://note.com/theruleofoceans/n/n14994ff2e64a?magazine_key=m59b7fd6021e3


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