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エリック・ジョンソン・・・ギタリストのためのギタリスト

その昔アラン・ホールズワースのインタヴューで名前を知ったエリック・ジョンソン。
「ジャズともロックとも言えないような音楽をやっていて、テクニックも大したものだよ(行間から、でも俺のほうが上だけどね。という目線が見て取れる…)」というコメントともに自分のお気に入りのギタリストの一人だと言っていた。
ホールズワースのコメントでがぜんエリック・ジョンソンに興味を持った若き自分はさっそくレコード店へ走った。もちろんお取り寄せ商品で、数日後にアルバム「TONES」が届いたときには、期待に胸を膨らませさっそくターンテーブルへ。
期待通りとは思わなかったが、冒頭の曲から器用な才能の片鱗が聴き取れる。おそらく相当量の音楽を聴きこなし、ジャンルに関しての垣根が、恐ろしく低い人なのだと思う。例えばパット・メセニーとジェリー・リードを同じフィールドでとらえるとか・・・そう考えるとこの人のイマジネーションは相当ユニークなものだと感嘆する。しかし、半面、曲ごとにテクニックや弾き方を使い分けているので、露骨に影響、悪く言うと手法の流用が明らかになり、人によって白けてしまうのではと勘ぐってしまう部分もある。それでも、聴き手をとらえる技法というかセンスは確かに凄いし、技術的には理論では語れない、かなり高等な技術で到底自分のような並みの凡人が近寄れる存在ではない。
ただプレイに関しては凄いが、アーティストとしての凄みというかカリスマ性は微塵も感じられず、ボーカルも水準以上にうまいとは思うが声質がボーイ・ジョージみたいで個人的には微妙。

その後、1990年頃に「Ah Via Musicom」が発売されると、さっそく輸入盤店で注文。前作よりもさらに磨きのかかった曲群が揃えられ、さらにグレードアップされた内容で、一気に聴かせる佳作に仕上がっている。ただやはりこの人は表現力があまりにもすごいので、自分で曲を作るよりは、スタンダードやプロの作曲家の曲を演奏するとよりこの人の才能が際立つのでは?と感じた。それでも自分的には好みのスタイルなので、「Criffs Of Dover」みたいなギター・ソロありきの他愛のない曲でさえも毎日のように、息ができなくなるほど聴き込んでいた。

それから数年後、しばらく他のギタリストに夢中になりながら、エリック・ジョンソンはそれほど聴かなくなっていたが、ある日BSでNYボトムラインでのライブで再びエリック・ジョンソンの名前を目にし、今度は動く本人を始めてみることになる。
聴く以上に見るのはさらに素晴らしいが、技術的な部分よりも、ポジショニングに唖然として、あのフレーズをあそこで弾くのか!という奔放な発想と、従来型の奏法にとらわれないセンスに圧倒された。録画したものを一月くらい毎日見ていたが、そのうちに熱は冷めた。
しばらくすると「Ah Via Musicom」の日本発売。自分が初めて購入してから5~6年くらい後のことである。ここからエリック・ジョンソンの人気が日本で爆発。ギター雑誌などでも特集が組まれるほどになり、それを冷めた目で自分は見ていた(決してエリック・ジョンソンに飽きていたわけではない)。その後、断続的にアルバムが発売されたようだが、自分はもう聴くことはなかった。最近になって、はやりサブスクでエリック・ジョンソンを久々に聴いたが、もう自分がメインで聴く音ではないなあと思いながら懐かしく聴いた。

久しぶりに「Criffs Of Dover」を聴いていると、嫁が「この最初のところいらなくない?」と言っていた。「それは思っても、言ってはいけないこと」だと笑って否定したが、初めて聴いたときにすごいテクニックだと思いながらも、冒頭のギターソロのだらだら弾いている感がどうにもついていけなかったのを思い出した(通常のギタリストだとあの部分に一番食いつかねばならないということは理解している)。

ジミ・ヘンドリックス系の曲を最も上品に演奏できる彼のセンスは永遠に多くの人に語り継がれるかもしれない。

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