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【怖】人形

暑くなってきたので、そろそろまた涼しい話を1つしたいと思う。

幼少期に私は雛人形を飾っていた時期があった。一応私も女子なので、可愛いところもあったのだ。しかし次第に飾るのも面倒くさくなり、そのうち物置行きになっていた。

少し大人になって、今度はリカちゃん人形を買ってもらった。当時はいろんなバージョンが出てきたので、他にもバービーやジェニー、ケン、宇宙人(!!)なども揃えた。しかしまたそれも一時的で、飽きてしまい押し入れにしまってしまった。

だいぶ大人になってから、弟と家の隣にある物置へ探検しに行った。母が私たちのランドセルや服、宿題や教科書などを取っておいたので、そこは散らかり放題だった。しかしそんな場所も私たちにとっては好奇心でたまらなかった。

いろんなものを見つけては懐かしがって、何かもっとワクワクするようなものを探し求めていた。すると、先ほどまで気づかなかったのだが、私のすぐ近くに人形が埋まっていた。私はそれを掘り出すと、そこにはあの雛人形たちが隠れていたのだ。私はそういえば飾ってたなぁと弟に話をした。一体一体埋まっている人形を出しては並べていると、次に触れた人形に違和感を感じた。同じ人形なのに冷たさを感じ、なんだか嫌な気持ちになった。私は恐る恐るその人形の顔をひっくり返すと、そこには歯の生えた、髪が伸び放題の人形がいた。

「ひぃっ!!」

私は思わずその人形を遠くへ捨ててしまった。弟は何が起こったのが分からず、捨てた人形を拾ってきた。そして2人で固まってしまった。その人形は放って置かれた寂しさと怒りで満ちていた。それは私に対してだった。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」

私は心の中でひたすら謝った。

その日の夜夢を見た。そこには昼間に見たあの人形がいた。寂しげで私に訴えかけるような、そんな目をしていた。私はまた謝った。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…。するとその言葉を待っていたように、人形は静かに消えたのだった。

更に別な日、私は部屋の片付けをしていた。全く開けていなかった押し入れにも手をかけた。すると、忘れていたバービー人形たちがそこにはあったのだった。私は懐かしいなぁと、人形たちを一体一体出してみた。当時の私は、人形たちの髪型を変えるのが好きで、躊躇なくジョキジョキ切っていた。一体目はショートカット、2体目はボブカット、3代目はミディアムカット。…ん?あれ?2体目はボブカットなはずなんだけど…。なんとその人形の揃えたはずの髪はグチャグチャに伸びていた。そして、よーく見るとやはりその子の口元には歯が生えていたのだ。

また私はやってしまった、怒らせてしまったと思った。そして雛人形のように心の中でごめんなさいごめんなさいと呟いた。人形を見ると、この子もまた寂しそうな目をしていた…。

手足のある人形は、念や魂の入れ物になりやすい。更に思い入れがある場合は、そこに念が入り、まるで人形は生きているかのような心を持つという。ぬいぐるみや人形と遊ばなくなったり処分する時には、必ず

「今までありがとう。お疲れ様。」

と一声かけて、燃やすなり処分することをお勧めする。

私は当日何も知らずに放ったらかしにしてしまったことを悔やんでならない。バービーたちに関してはあんなにも大切にして、たくさん遊んだのに、興味がなくなった途端に押し入れ行きなんて、映画のトイストーリーのようにきっとみんな寂しがっていただろうなと思う。

皆さんも最後まで可愛がってあげてもらいたい。

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