見出し画像

ポゼスの遊山録ータイ編②ー

前回からの続き。

タイに行くことを決めたザ・ポゼスクリエイションチーム3人はいよいよ出発への準備を始める。

_________________________

結局、航空券は旅行代理店を通さず自分たちで手配することになった。

H.I.Sオンラインなどの方が宿泊代も込みで安くあがるのだが、金銭よりもダイオキシンボーイの精神安定を最優先してあげたのである。そのおかげもあって行きの機内では彼は大爆睡。隣席の私にたびたびもたれかかり、人の睡眠を多いに妨害してくれた。ダイオキシンボーイの髪の毛先はたいそうチリチリしていて、首の皮膚に刺さると異常にかゆい。


そういう訳でエアアジアの少々分かりづらい公式HPで座席を指定したり、どういうわけだかベジタリアン向けご飯になってしまった機内食をチキンに変えてくれとメールを送ったりするうちに徐々に出国の日が迫ってきた。

MV制作というのは曲があって、それをもとにどういう絵・映像にするかを考え撮影するのが基本であるが、我々は前回記事のとおり「海外に行く」という既定事項からスタートしたがために肝心のコンテンツはまっさらの白紙、無、虚、ゼロであった。

反対に考えれば、ありとあらゆるすべての可能性を持っていた。無はすべての可能性を有する。無の有。もし曲が既に有ったならば、その曲に迎合するために捨てざるをえない選択肢が出てきたはずである。魅力的な選択肢のいくつかを無くしたはずである。有による無である。ああ、素晴らしきかな無。

などと言っていても、撮影という名目でタイに行き、無で帰ってくるわけにはいかない。急がなければ。

「緊急ポゼス会議だ!」

「ドルバ! ドルバ!」(ポゼス方言で、待ってたぜ!の意)

こうして出国3ヶ月前、ダイオキシンボーイ、本気マジ太、マウンテンポン太郎の3人は都心にほど近い2階建ての逆高層マンションの一室にある、【P-TOKYOマジカルスタジオ】に集まった。

画像1

「やっぱり曲としては…最初は壮大で荘厳で原始的な感じで途中からド派手にパリピでノリノリEDMな感じになるのがいいんじゃない?」

これはマジ太。

「映像は原点回帰っていう意味で、じんあい(人生の指定席は愛ですの略称)みたいにちょっと不気味な感じ入れたいなぁ」

これはダイオキシンボーイ。

「アジア感というかエスニックな感じは欲しいよね」「ポップスなんだけどエスニックな違和感みたいなのを入れたい」「やっぱ最終はダンスシーン?」「馬のマスク、バンコク絶対暑いな」「熱中症注意せんと倒れるわ」「そういえば馬のマスク、老朽化が激しい」「あーね」「新しいの買う?」「今のん既製品やからけっこう色んな人使ってるよなあ」「もうこの際、オリジナルでウマスク作るか」「あーね」「いいやんそれ」「でもいきなり馬新しいのになったらポゼスのファンの人びっくりしそう」「映像で馬が新しくなる物語を描くっていうのは?」「あーね」「いいやんそれ」

といった具合で珍しく真面目に会議は進み、「前半壮大で後半ダンスミュージック的楽曲で不気味さとカラフルポップさを両立させた映像で、馬のマスクが変わる作品」という作品のコアがまとまった。

ダイオキシンボーイは会議になると3回に1回は「あーね」と言い、P-TOKYOマジカルスタジオの夜は更けていった。


会議の進行と酩酊具合は比例する。ビールを入れてはアイデアを出す私たちは骨子がまとまったところで眠ることにした。マジ太が布団を2つ引いてくれ、ザ・ポゼスクリエイション部門の3人は川の字になって眠りについた。例のごとくダイオキシンボーイは真ん中である。

翌朝、私は毛布のほどんどをダイオキシンボーイに奪われている自分を発見した。そしてなんだか首がかゆい。思えば、ダイオキシンボーイの螺旋状チリチリ毛先はこの時から私をターゲットにしていたのかもしれない。


(つづく)

_______________________

また長くなってしまった!

いよいよ、今度こそ、タイ編です。出国します。よしなに。

Mt.Pontaro


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?