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品質新撰組 / 品質☆妄想Spin-Off 2

【シーン】
 ・一部上場企業の工場移管
【登場人物】
 ・近藤正道 (壬生工場品質管理課長)
 ・四方歳三 (壬生工場品質管理係長)
 ・中田総司 (壬生品管課エース担当)
 ・勝渉   (戊辰工場品質管理部長)
 
 注記; 身近で似た経験をした方がいるかしれませんが、全てがフィクションであり、架空の物語です。
 
 
【一部上場企業の壬生工場の廊下】
 <近藤>
歳、話がある。総司も丁度よい処に来た。聞いて貰うか。。。。ロビーへ
 <四方>
近藤さん、なんですかね?
 <近藤>
来年4月、この壬生工場は閉鎖されることになった。製造ラインは隣の市、戊辰工場に移管され、我々も異動だ。
 <四方>
は?あそこは民生製品の工場ですよ。自動車関係の我々とは、文化が違い過ぎる。サプライヤーとの今までの経験で、民生向けは、自動車関係には品質面でのハードルが高いのが解っている。工場長の見解は?
 <近藤>
異論なしで、合意されていたよ。今年の12月で定年なんだよ。
 <四方>
定年で、辞めるから知らんでは、残される側からは、自動四輪事業部の “大政奉還”みたいなもんじゃね〜かよ。品質は荒れるぜ。折角、この10年間、課長の旗振りで、クレームが1/3にまで減り、いよいよゼロデフェクト(※1)も視野に入ったてぇのに。。。。
 <総司>
でも、移管だけじゃなく、異動だから、製造部門は、管理者も作業者も同じ。僕達も同じなんでしょ。僕達、四輪品質部隊のスキル次第じゃないですかね?
 <近藤>
総司の言う通りだ。どこであろうが、今まで通り、我々の“志“を通せば良いだけだぞ。歳、どこだろうが、”品質志道(※2)“を貫くだけだ!移管で顧客クレームを出さないように頑張ろう。来週の朝礼で、品質管理課の皆にも説明をする。
 <四方>
  - ・・・・ 二人とも人が良すぎる。体制には、スキルや、思いだけじゃ、どうにもならん時がある -
 
【翌週の月曜朝礼】
 <近藤>
皆に大事な話がある。我々の工場は閉鎖され、戊辰工場に移管、統合される。しかし、安心しろ、全員異動だ。リストラは無い。それとだ。。。。。私は、流山工業の社長に栄転だ。
 <四方>
は~??聞いてねぞ~何だよ、それ!
 <近藤>
まぁ歳、そんなことは言うな、お互いの門出だ。皆とは、袂を分かつことになるが、お互い品質への誠を貫き、正道を歩んで行こう。
 <総司>
  - 四方の隣からコソコソ耳打ち -  どうも近藤さん、移管後も戊辰工場で四輪業界の品質管理を貫く事を、移管会議で宣言したらしいですよ。。。。 
 <四方>
  - ・・・・  ありえね。いくら自分の名前が、正道でも、自殺行為だ、是非は解った人だが、サラリーマンにゃ向かねぇ。それに流山工業って、下請けの子会社じゃえかよ。そんなの栄転じゃね~し。終わった。 -
 
 
《 戊辰工場との移管会議を繰り返しながら、移管計画にそった製品品質の確認をへて移管が完了 》
 
 
【異動初日の戊辰工場 品質管理課の朝礼】
 <勝>
無事、問題を起こさず、壬生工場からの移管も完了。元壬生工場の人達にはお礼を言いたい。ありがとう。ただ、四方君には、半年後の10月1日付で海外赴任をして貰う事になった。ある意味、インドASEAN鎮撫隊かな。それもグループ会社としては、重要な品質業務だ、頼むよ自動車品質で頑張りたまえ。壬生の品質志道とやらでな、、、、そうそう、流山工業の近藤正道君は、希望退職(投降)するそうだよ。 にやり
 
 
《 移管した年度は、自動車関係での顧客クレームが前年度の2倍となり、業界文化による品質への影響が顕在化していた。。。。そこから更に1年も過ぎたた頃 》
 
 
【戊辰工場 品質管理課事務所 国際電話】
 <四方>
久しぶりだな。前みたいに、総司にチョイと、意見を聞きて~ことがあってな。
 <総司>
四方さんは、異国で1人になっても同じ調子で“誠だ!”“志だ!”って品質志道で取り組んでるですか?こっちには、妙な噂も聞こえてくるし、厳しそうですね。
 <四方>
1人じゃね~よ。お前に電話しているだろ。昔と違い、世界は狭い。それに、こっちのスタッフは、色々教えれば素直なもんだ。品質改善に向かう雰囲気は、まだ壬生工場にはおよばね~が、半年いた戊辰工場より手応えはあるぜ。赴任して直ぐ解ったのが、戊辰工場から赴任していた前任者の野郎が、顧客クレーム件数を隠す指示をスタッフしていた事。マザー工場の日本による評価を気にしていたのだろうな。そんなのは、くだらないから、スタッフには全ての不具合を見える化し、調査、対策する指示をしたよ。隠して、放置じゃ、品質は良くならん。
 <総司>
まぁそんなもんでしょうね。戊辰工場以前に、TVじゃ、データ改竄や隠蔽が報道される今の日本。そっちは海外ですからね。更にでしょ。
 <四方>
1年前ならYesと言うが、今の俺には、海外と日本の顕著な違いは解らんよ。外国嫌いだったのは知ってるよな。赴任を言われた時も嫌だったが、そこにいても意味が無い気がして受けた。こっちに来て良かった。壬生工場の品質が、近藤さんのマネジメントによる処が大きかったのを再認識している。そっちは限界だぜ。体質は実務側からじゃ変わらねぇよ。品質は上の品質マネジメント次第。言い方を変えれば、TS16949を敬遠する戊辰工場の人達に比べ、国際規格には海外スタッフの方が素直だよ。それに相手がマザー工場の時でも、イザとなれば、TS16949などの是非基準で、ブッタ斬れば、いい。横柄な奴らに苦言した時なんかは、こっちのスタッフも大喜びよ。そう言や、総司は、俺と違って海外指向だったよな。海外赴任に手を上げるのも、グループ全体で考えれば、品質改善への1つの手だぜ。現地じゃ、自分が上だから、てめぇ次第だよ。
 
《 受話器を戻した後、総司は思った。赴任地は北じゃなく、南の国だけど、新選組の土方みたいだな、どこに行っても同じ。飛ばされても懲りず、何も変わらない。翌年、中田総司も、戊辰工場を後にした。品質への“志”を海外に輸出する事を胸に抱き、品質の旅に出たが、その手には、菊一文字(IATF16949)の刀を携えていた。 》
 
 
※1 この物語では、年間の顧客クレーム・ゼロ件を指す。

※2 別マガジンに収録した日系品質☆妄想考編での造語。

補足 ; TS16949や、IATF16949とは、ISO9001に追加要求を加えた自動車産業界の国際品質規格。


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