見出し画像

ライブ評 「ザ・キラーズ@サンパウロ」 次の全盛への巻き返しに確かな手応え

どうも。

先週、プリマヴェーラ・サウンドがあったばかりですが、こないだの週末はこれでした。


はい。ザ・キラーズですね。このライブは、F1のブラジルGPの開催記念というはじめての試みで、実質的にはフェス扱いではあるんですけど、サッカー・スタジアムでステージが1つしかないので、実質、キラーズに4つの前座がつくライブ、という解釈で正しいような気がします。

 ただ、キラーズにとってみれば、少し前からやってた中南米ツアーの一環という見方で正しいかと思います。メキシコ公演くらいから情報入ってきてましたけど、ものすごく大入り満員続いてウケてたことは僕も聞いていたので楽しみでもありました。

 そしてそれ以上に、南米在住者にとってみれば今回のツアーは、キラーズにとってのパンデミック後の初の公演のわけです。パンデミックのあと、キラーズは作品を多く発表。一昨年は「Imploding The Mirage」、昨年は「Pressure Machine」とアルバムを2枚、そして今年はシングル「Boy」といずれも好評。だからこそ、今の瞬間を逃したくなかったわけです。すごく楽しみでした。

 このライブ当日ですが、基本、キラーズ目当てなので、ゆっくり行きました。先週からの疲れも多少残ってましたんでね。そういうわけで4時にヘアカットに行き、会場となったアリアンツ・パルケというサッカー・スタジアムは新しいスタジアムなのに飲食施設が乏しいのも知っていたので、その隣にあるショッピングセンターのクオリティが非常に高いので、スタジアムに到着する前にすべてそこで飲食を完全に済ませて、午後7時過ぎにスタジアムに入りました。

 そこでは最後の前座のトウェンティ・ワン・パイロッツのライブがやってましたね。彼らもロラパルーザ・サンパウロのヘッドライナーやったことのあるバンドなので贅沢な組み合わせではあったんですけどね。そういうこともあり、さすがに盛り上がってましたね。サッカー・グラウンドにあたるアリーナの入りは後方がいまひとつではありましたけど。そして、このトウェンティワン・パイロッツのあいだに、群衆すり抜けて中央のすごく見えやすい位置をラッキーなことに確保できました。

 待ち時間が40分ほどあったんですけど、もう周囲見渡すとアリーナも、スタンドもぎっしり埋まってましたね。5万人近くいたと思うんですけど、こういうところでフェス形式とはいえスタジアムでライブをやることが可能な状況であるということはキラーズにとってはプラスにはなりますからね。立ち位置的に「世間一般の大物」なのか「インディ・ロックの世界のヘッドライナー」なのか、微妙な立ち位置ではありました(ロラパルーザ・サンパウロでもヘッドライナーは2回経験)からね。

 そして午後9時30分にスタジアムのライトが消え、キラーズのライブが幕を開けました。1曲目は「Imploding The Mirage」のオープニング・トラックの「My Own Souls Warning」。パンデミック後のキラーズに顕著なアイリッシュ・フォークmeetsエレクトロな1曲でスタートです。

のっけから

ブランドン・フラワーズはテンションの高いヴォーカルで歌い上げ


ムードメイカーのドラマー、ロニー・ヴァヌッッチも手数の多い、力強いドラムで応じます。

ただ、ギターとベースはデイヴ・キューニングとマーク・ストーマーではありません。ここはがっかりでした。2017年の「Wonderful Wonderful」から2人はツアーの疲労を理由にライブはやったりやらなかったり。スタジオ作業も参加率まちまちなんですけど。四人に戻ったという噂もあったので期待してたんですけどねえ。

2018年のロラパルーザでのライブは、その二人がいないことからくる焦りからか、全体の進行のリズムが悪くどっしり聞かせられてなかっただけに、少し心配になりました。

ただ、そんな不安はのっけからの代表曲の連打でだいぶ軽減されました。一時期はエンディング曲だった「When You Were Young」をいきなり持ってきて、未だに大人気のファースト・アルバムから「Jenny Was A Friend Of Mine」「Smile Like You Mean It」、ベスト盤からの人気曲「Shot At The Night」と盛り上がります。

 こうして聴くとキラーズもヒットの多いバンドだと、つくづく思うのですが、「Imploding The Mirage」からの「Running Toward A Place」を1曲挟んだ後も「Human」「Somebody Told Me」、早くも人気曲の仲間入りウィ果たしつつある「Boy」、ファンのあいだでの定番フェイバリットの「A Dustland Fairytale」、そして「Runaway」と人気曲の連打連打です。

 このあたりの曲を聞いてて

ブランドン・フラワーズのフロントマンとしての能力の高さを改めて感じますね。声の伸びと高低の安定感に感じては2013年に「Battle Born」のツアーの時にロラパルーザのヘッドライナーやった時から思ってましたけど、ステージの右から左からスムースにかつ忙しく動き回ってあおる姿はミック・ジャガー、まあ、あそこまで堂に入ったりセクシーでこそはないものの、しっかり学んだのかな、と思わせるところがありましたね。

 というか、ブランドンって昔からものすごい努力かなんですよね。2004年のデビューの頃、人気は出たもののフランツ・フェルディナンドとかの同期のバンドと比べて評価が高くなかった頃から自分の才能を信じビッグな発言もしてましたけど、有言実行するように大きなステージでどんどん才能を発揮するようになって。そこは他の同世代のインディ・バンド達との決定的な違いでしたね。

 なんか、今のファッション・テイストがトム・クルーズ的なのもなんかだぶってね。トムも低評価から本人のたゆまぬ努力でトップスターの座を保ち続けて、さらに進化続けてるじゃないですか。そこのところがなんか二人、似てる気がするんですよね。

それから


この「ジャレッド・レトではありません」と注釈付けたくなるようなこの人が今回、目立ってましたね。彼はテッド・サブレイといって、キラーズの初期のツアーからキーボードとかリズムギターでサポートしてたんですけど、デイヴ不在に伴いリードギターに格上げしましたね。これを抜いたモニター・ショットも今回すごく多かったんですよね。これ、今後の展開次第によっては正式メンバーに昇格しそうな勢いでした。ベースの代役の人はほとんど映ってなかったのにね。

 あと、それ以外にバック・ヴォーカル隊や補充メンバーも足して大所帯にすると腹を決めたことでブランドンも安心してライブできるようになったのいも大きかったかと思います。デイヴとマークの件で2018年の頃は随分不安そうに見えてましたけど、もう迷わずに腹決めてやってる感じがして安定感でてましたね。

 この後、「Dying Breed」「Caution」と、「Imploding The Machine」からのシングルで後半の盛り上げどころを攻めましたが、ここのノリがまだ今ひとつだったかな。まあ、他の曲に比べると、ですけど。そこのところは、先週見に行ったミツキとかフィービー・ブリッジャーズあたりと比べると、今が一番上り調子でリスナー年齢も若いアーティストに比べると不利な点もいた仕方がないところではあるんですけど、まだ少し「過去のバンド」と思われているところがあるのかな。ただ、それも、今回みたいな安定のアライブと曲作りを続けていけば全然大丈夫だとは思いましたけどね。

 そして、このあとには面白い光景もありました。それは

「Reasons Unknown」で、この謎のブラジル人、ラファエルがドラムを叩きました(笑)。パート・チェンジでブランドンがベース、ロニーがギターを弾く、前からやってるコーナーではあるんですけど、ラファエルに対しても歓声があがって楽しいとこでしたね。

そしてライブは大定番の「All Thses Things That Ive Done」でいったん終わってアンコールになり、「Spaceman」、今回のツアーでファン・フェイバリットとして浮上したベスト盤の人気曲の「Just Another Girl」、そしてそして全世界的なストリーミング定番曲、Spotifyでのストリーム総数も10億回超えてます「Mr Brightside」で幕を閉めます。「ブライトサイド」は一回、イントロのギターやらずに静かに盛り上げて、途中であのギターのフレーズ入れてから盛り上げるパターンでしたね。

まあ、デイヴとマークはいてほしいのが本音だし、「Pressure Machine」からの曲がなかったなど、残念なポイントも多少はあったものの、全体としては「Imploding」以降の好調ぶりと、ブランドン自身の「キラーズをしっかり立て直していきたい」という意欲を強く感じさせるライブでしたね。「Imploding」からの曲や「Boy」のフィーチャリングのさせ方にそれは感じました。

あの、ソロ・ワークを封印してキラーズの曲をずっと作ってる状態でもあるので、さらに次の新作も早そう。次のツアーがまた早めにやれたら、さらに良い感じで上昇気流に乗れそうな手応えは感じましたね。




 






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?