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ライブ評価「パラモア@サンパウロ 3/12」 音楽的にも精神的にも、今が最高潮!

どうも。

昨日は、今年の上半期の僕のハイライトのひとつ、と言っても良い日でした!

パラモアの南米ツアー。サンパウロの2日目です。当初パラモア、ロラパルーザ南米のヘッドライナー予定だったんですね。それが、来週末にLAでやるテイラー・スウィフトのライブに出ることになったんでキャンセル。その代わりに予定を前にして単独を組んだ、というわけです。少なくとも僕はそう理解してます。

 パラモアなんですが、ブラジルではエモブームの時にすごい人気だったんですよ。2010年に僕がサンパウロに住み始めた時、キオスクで写真集売ってたくらい、あの当時のティーンにすっごい人気でした。

 そのあと、ブームが去ったあとに2014年にミニ・フェスで一回来てるんですけど、そのときキングス・オブ・レオン目当てだった僕が、ちょうどサウンド変わり始めたばかりだったパラモア見て、いっぺんに好きになったんですよね。それからずっとパラモアには注目し続けてたんですけど、前作、2017年の「After Laughter」のときは南米ツアーなし。待つこと9年でようやく南米に戻ってきたというわけです。

 僕も待ったんですけど、それ以前のパラモア・ファンだった人たちはもっと待ってたんでしょうね。突然、「明日発売だよ」よ発表になったサンパウロ公演の初日はなすすべもなく売り切れ。ただ、僕も「パラモア逃すと、たとえロラパルーザいったところで不満が残る!」と危機感が芽生えまして、この2回目の公演はしっかり早起きしてチケット売り場に行って発売2時間前から並んでなんとかゲット。こういう経緯があったので、とにかく楽しみで仕方なかったです。

 さらに今回のライブ1ヶ月前には

絶賛記事を書いきました最新アルバム「This Is Why」も世に出まして。ポストパンクに進化したまま、原点であるエモに立ち返ったこの傑作、今日の時点でも限りなく年間トップに近いくらい大好きです。

 こんなこともあり、もう楽しみで仕方なかったんですよね、今回は。

今回の会場ですけど

サンパウロ北部のチエテ・スポーツセンターというところで行われました。初めて行くところだったんですけど、プリマヴェーラ・サウンドの時に行った会場の近くで、空間的には見やすかったですね。1万人くらいの規模だったような気がします。

 実はサンパウロ、ここ数日ずっと雨で、先週の水曜日には僕の住んでる市の南部、金曜には他の地域が水害にあいまして、この前日の土曜日もどしゃぶり、当日の日曜も、開演の3時間前まで雨が降ってたんですが、僕が会場に着いた午後6時頃には、こうやって雨もあがって環境的には楽でした。

 午後7時には、エルキーという、パラモアのドラムのザック・ファロの彼女が前座を務めました。今のパラモアのサウンドにちょっと似た感じの、マリーナ&ザ・ダイアモンズみたいなタイプでしたけど。僕は「悪くはないけど、決定的な曲がないなあ」と思いながら見てたんですけど、観客的にはなかなかウケてたようでした。

 そして待つこと午後8時頃。場内が暗転していよいよパラモア登場。

ステージには、ヘイリー、テイラー、ザックの3人のほか、もう2人のギター、ベース、パーカッションの全員で7人編成。前回のツアー見てないからわかんなかったんですけど、二人めのギターが替わっただけで前のツアーと同じメンバーだそうです。「After Laughter」がトロピカルなダンサブルなサウンドを取り入れたアルバムでしたけど、そのままの踊れる編成というか、

いみじくもヘイリーがこの日着ていたトーキング・ヘッズを思わせるような編成でした。この日の1曲目も最新作「This Is Why」からの「You First」。ポストパンクのスタイルのまま、強引にハードに演奏したこの曲は、最新作のシングルになってない曲とは思えないくらいに合唱多かったですね。ファンの忠誠心の高さにいきなり関心しました。

 初っ端は初期の曲で押せ押せでしたね。デビュー間もない頃の「Thats What You Get」、2009年の映画「トワイライト」収録の「I Caught Myself」、同じ年に出たアルバム「Brand New Eyes」からの「Playing Gods」と続きましたが会場に多く集まった昔からのファンの大合唱の声が大きかった!

ここでヘイリーが閑話休題でMCに。「もう、私たちがここにはじめてきて10年以上も経つけど、あの最初のライブのときに来てた人いる?」の質問に至るところで挙手が行われたのを見てヘイリー、びっくり。たしかにここに集まった人たち、思ったより男性多かったものの、チケット買いに行った行列もそうだったんですけど、8割以上は女性。しかも、かなり気合入れてロックな格好してるタイプが多いんですよね。一番多かったのは、ヘイリーと同じような肩ごしのロングで黒Tシャツ、もしくは黒のタンクトップの人が多めかな。あとは髪、派手に染めてベリーショートとか。それから、結構、人種も超えてて、黒人、さらにアジア系もかなり見たんですよね。なんか、2010年前後の、疎外感を覚えた女の子たちが、肌の色の違いを超えて共感しあった、そんな感じが伺えます。

新作からの「The News」で一通りハード目な曲がひと段落ついたら、こんどはダンサブルな路線に。前作からの「Told You So」、そしていつもだったらアンコール前のラス前近くにやるチャート上の最大ヒット、2014年に見に行ったときのラストナンバーでもあった「Aint It Fun」、そしてAfter Laughterからもう1曲「Caught in The Middle」。リリース当初16ビートのファンキーナンバーで意表をついた「Aint If Fun」がこの流れにうまうはまってましたね。

中盤に入ったあたりからはヘイリーの一人語りが長くなりましたね。きっかけは「ヴァースのところは抑えめにして、コーラスのところで、普段のうっぷんを爆発させちゃって」と煽った最新作からの「Cest Comme Ca」から。この流れに乗って、「この10年で本当につらいことが多くて。この前に来た2014年くらいは・・・ごめんね。あんまり良い時期じゃなかったの」と、インタビューでもよく話していることを話します。「2009年にこれ書いた頃は愛がどうとかわかってなかったし、実際、ひどいものだよ思ったこともあった」と、その後の離婚のことを口にしますが、「でも地獄とかって思っていても悪いことじゃなく、人間、成長できるものだと思う」と言って、2010年のバラードヒット、「The Only Exception」に流れます。

続いて新作からの「Running Out Of Time」、2013年の実験作「Paramore」からの異色の60sフィル・スペクター調の「(One Of Those )Crazy Girls」、After Laughter」からの「Rose Colord Boy」と続きます。このあたりの曲聞いてると、「パラモアって音楽的にかなり器用だよなあ」と改めて感心しましたね。

そして「2014年のときには彼も(脱退してた時期で)ここにいなかったんだよね」といってヘイリーが、ドラムのザック・ファロを紹介。彼がフロントに立って、自身のサイドプロジェクト、ハーフ・ノイズの「Scoobys In The Back」を演奏します。この曲は60s、1966年のロンドンみたいな感じのシタール流れそうなサイケな曲なんですが、それに合わせてヘイリーがボンゴ叩きながらバック・ヴォーカルとるとき、本当に楽しそうなんですよね。いろんなタイプのサウンドにオープンで心から音楽好き。そういう彼女を見ていて微笑ましくなりましたね。

それが終わると、ヘイリーが「つらいことあったけど、そんなときは私の無一番付き合いの古い心の友達、パラモアに話しかけるのよ」と語り、「つらいときは乗り越えて今に至るの」といってAfter Laughter最大のヒット「Hard Times」で盛り上げた後、2009年のエモ時代にもどって「All I Wanted」。「The Only Exception」と並ぶ当時のバラードの好チューンですけど、サビでのヘイリーのハイトーン・シャウト、昔ほど声を張らなくなったとはいえ、今現在もテクニカルに全然健在。ものすごい伸びです。この当時に鍛えられた、ハードな曲対応のパワフルなヴォーカル技量がポストパンク路線になって生かされてるんだな、それって他のインディのバンドだと遠的てない過程だよなと、パラモアというバンドの特異性を改めて感じましたね。

それもこれも

やはりテイラー・ヨークの存在が大きいですね。ライブだと、一人黙々とうつむいてストイックにギター弾いてましたけど、彼がエモから、ポストパンク、インディ方面にパラモアのサウンドを大きくシフトさせ、かつ違和感のないよう一貫性を持たせているわけで。今やヘイリーとは公私両面でのパートナー。オーディエンスに表向きに直接語りかけるヘイリーと、その陰になってパラモアの土台を支えるテイラー。もちろんムードメイカーで強靭なリズムを支えるザックも大事ですけど、絆が大事なバンドになってきているとも思いましたね。

そして、アンコールになって、1曲目は「Decode」。ここは本来、方向転換直後の人気曲「Still Into You」のはずだったんですが、会場から早いうちから沸き起こっていた「Decodeやってよ」コールに応えた形となりました。映画「トワイライト」のクレジットの時に流れる曲として有名なこの曲、通常だったら3曲めくらいにやるのにこの日は飛ばしてたので、多分やる気なかったと思うんですけど、この曲が青春な人があまりに多くいて、そうはさせなかった感じですね。

続いて、パラモアのライブでこれなしでは終われない最初のヒット、「Misery Business」。ここでは

ヘイリーから「客席にすっごいいいノリの子がいるから紹介するね」といって、黒人の女の子がステージにあげられました。この子とヘイリーがデュエットする形で進行しましたが、さすがにブラジル人はノリがいい。最後までロックシンガー然として堂々と歌い切りましたね。まあ、仕込みだとは思うんですけど。

そして最後は、今のパラモアを最も象徴するナンバー「This Is Why」。やはりうというか、エモ全盛時代の曲が人気高くはあるんですけど、2013年の「Paramore」以降の曲がセットリストの過半数でサウンドも大きく変わってるのに、ファンが本当に忠誠心が強いというか、信じて着いてきてる感じがしましたね。この曲の大合唱で大団円となってライブ終了となりました。

今のパラモア見てると、一時期の精神的不調を乗り越え、音楽的にも一段階もに段階も大きくなった、心技ともに、少なくとも彼ら的には最高の状態にある充実感を感じているのではないかと思います。それがストレートに伝わってくるし、それが理解できるからこそ、ファンの方も、自分たちが若い時に好きになった形とは必ずしも同じでないのに、その成長を受け止め、リスナーとして一緒に成長していく。そんな微笑ましい光景が見られた、「音楽を聴き続けるということはこうでありたい」と思わせる貴重なライブだったように思いますね。

1点だけ注文をつけるとしたら、最新作「This Is Why」から、せっかく作ったミドル〜メロウ系のナンバーを1曲でいいからやってほしかったかな。すごくいいのに、もったいない。「The Only Exception」のあとにもう1曲バラード挟んでも流れ的にはおかしくないどころかすごくはまる。「Crave」あたりを試して代表曲にして欲しいんですけどね。



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