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プリマヴェーラ・サウンド・サンパウロ2023. 初日レビュー


どうも。

行ってきましたよ!

はい、待ちに待ったプリマヴェーラ・サウンド・サンパウロ。昨年に続いての開催。今回はロラパルーザと同じ会場のインテルラゴス・サーキットでやったんですけど

暑い!

もう今日の第一印象はこれにつきましたね。

30度超えててそれがただでさえこたえるんですけど日陰がない。これがつらかったですね。日差しからのうまい逃げ場がみつけにくかったのがね。

あと今回はロラパルーザのときより集客少なめを意識したのか、ロラのときの広大な第2ステージを使わなかったんてすけど、あそこにある野原がない!何もなくても寝っ転がって休める、フジのグリーンステージみたいでゆっくりみれるのが良いとこなのに、それがない!

一応、観客席には芝生はあるんですけど、コンクリートの道路のことうになってるから照り返しが強く、日陰がない。これは非常に困りましたね。

僕は14時くらいに着いたんですけど暑さマックスでバテバテ。そこで芝生席で強引に寝っ転がって見ることにしました。

Black Midi(14:40  第1ステージ)

この日、最初に見たのはBlackMidi。サウス・ロンドン・シーンの奇才ですね。日本ではかなりの人気があるようなんですが、南米はちょっと時間がかかりまして、これが初男見け目得になります。

僕が思ったよりは、ポストパンク寄りですね。1980年代の第二期キング・クリムゾンのファンとか多いようで、ベースのスラップとかはそんな感じしますけど、でもあれよりはわかりやすい感じはしましたね。

あとヴォーカルがかなりうまかったですね。これも僕の思った以上でしたね。もっと良い意味でキャッチーにロックできて、そこに難しいところや捻りを入れていける感じに出来るんじゃないかなと思いましたね。

意識朦朧としながら、予習も特にやらずに見ましたが、その方が結果的に良かったような気がしましたね。

で、本当はこの時間にMunaだったんですが、メンバーの一人が腱鞘炎みたいな感じになってキャンセル。これはすごく見たかったライブだったので1週間前のドタキャンでがっかりしたんですけど、いざこの暑さ体験してしまうと逆に助かったかもしれません。

この合間で、とにかく水分補給しましたね。やはり、この二週間前にテイラー・スウィフトのリオ公演で熱射病での死者が出たばかりですからね。躊躇なくたっぷり水分とりました。こっちで言うガリガリくんみたいなやつも二本たべましたからね。

この間に第3ステージでドリアン・エレクトラという女性シンガーのライブを見たんですけど、よくなかったですね。単なるレディ・ガガの劣化した真似事みたいで。ガガがいかに特殊で真似が難しいか、ということですよね。

The Hives(16:40 第1ステージ)

第1ステージに戻ってザ・ハイヴスですね。彼らは今年、実に11年ぶりのアルバム出して再注目されてますが、ブラジルでの公演だと9年ぶりでしたね。AMの頃のアークティック・モンキーズの南米ツアー、ハイヴスだったんですよね。だから、それ以来になります。

ライブはいきなり、お葬式の曲の大定番、ショパンのお葬式マーチのピアノ曲から入ります。今回のアルバムがハイヴスの支配者、ランディ・フィッツシモンズが死んだ設定ですからね。そして、それに導かれるように今回のアルバムのファースト・シングルの「Bogus Operandi」で幕開けです。

ペレのスタンドマイク使っての鮮やかなキックも、彼の兄貴でギターのニコラス・アーソンのクネクネ首振りギターも健在。ものすごい暑さなのにダブルのスーツ着込んでるのも「ご苦労様」という感じでしたね(笑)。ペレは相変わらずまくし立ててましたが、今日の決めフレーズはポルトガル語でBanda Mais Peeferida (一番人気のあるバンド)、これを詰まると英語に戻りながらも(笑)、繰り返していましたね。

選曲的にはヒットパレードで行くのかと思いきや、新作が中心でしたね。代表曲はやるにはやるんですけど、各アルバムで1、2曲。僕の大好きな「Tyrannosaurus Hives」に至ってはやらなかったのが残念ですけど、ただ、より生々しい、少しリズム&ブルース色強めに最近の彼らのサウンド、シフトしてる感じもするので、あの当時のモダン路線のTyrannosaurus 、ちょっと合わないのかもしれません。

それでも最大ヒットのHate To Say I Told You Soや、Tic Tic Boomは大人気でしたね。前者はブラジルのライブではいろんなアーティストでお馴染みの、リフの部分をオーオーと歌う合唱がこだま、後者はこの日のラストだったんですけどかなりのロング・ヴァージョンになって、もう別ステージから次のライブのオープニングはじまるの聴こえてる状態で盛り上がってました。僕もそれで次のライブへの移動が少し遅れたんですが、大言壮語でコミカルなハイヴスらしいロックンロールは健在でした。ストーンズやAC/DCは1年でも長く残ってほしいとは思いながらも、「彼らがいなくなってもハイヴスがいる」と頼れる存在に冗談抜きでなることを熱望しますよ。

Slowdive(第3ステージ. 17:30)

ハイヴスの終盤にすでにはじまっていたライブとはスロウダイヴでした。これもすごく楽しみにしていました。日本にはちょくちょく来てたみたいな話は聞いてたんですけど、ブラジルで来たという話は聞いたことなかったし、かくじつなこれがはじめてでしょう。90sの頃に来てたら別ですけど、そんな話も聞かないし。

ハイヴス終わってステージにたどり着いたら、すでにアルバムで聞く通りの壮大なスケールのサイケデリアがすでな横たわってましたね。特別な空間としてすでに彩られてましたね。

彼らのサウンドというとどうしてもフロントマンのニール・ハルステッドとクリスチャン・サヴィルのギターのコンビが作るメランコリックでファンタジックな空間を覆い尽くすようなギターが注目されがちなんですけど、これ、リズム隊のタイトさもかなり寄与したサウンドなんだなということが今回はっきりわかりましたね。とりわけドラマーのサイモン・スコットの、骨組みを支えるかよようなタイトで安定感あるプレイは圧巻でしたね。

シューゲーザーといえばどうしてもマイ・ブラッディ・バレンタインの、あの狂気と甘美のノイズがどうしても伝説になりがちですけど、なかなかどうして、スロウダイヴのこの構築の美学もそれに次ぐシューゲーザーのアイデンティティですね。彼らはメタルやネオプログレにもファンが多いという話をきいたことがあるんですけど、たしかにポーキュパイン・トゥリーとかデフトーンズ好きな人には刺さりそうなものは感じましたね。

そして紅一点のレイチェル・ゴスウェルが添える蜃気楼のような儚げなバッキング・ヴォーカルの美しさもまた欠かさぬ名人芸ですね。

22年ものブランクがありながらも前よりもさらに強く成長して復活し、今年の最新作「Everything Is Alive」ではイギリスやドイツでトップ10、アメリカでも60位台の国際的大ヒットの快挙を成し遂げてますが、持ってた実力に評価がようやく追い付いて来ているというところでしょうか。惜しむらくは、この日のライブでその新作からが少なかったことですけど、それでも十分満足できました。

このあと、食事休憩に入ったんですけど、すごい長蛇の列。ドリンク買うだけで20分待ち。人も徐々に混んできました。

ソフト・シェルのタコスを食べおわって、動いた先は第1ステージで、そこではブラジルの、もうレジェンドと呼んでも良いかな、90s最大のアーティスト、マリーザ・モンチがライブをやってました。

彼女は日本のワールド・ミュージックの愛好家にもファンが多いんですけど、ブラジルだとロックやインディ/オルタナのファンのウケはあまり良くないです。ちょっとお上品な感じが強いんですよね。

ただ、そんな彼女がこの日は今年亡くなったブラジリアン・ロッククイーンのヒタ・リーをトリビュートしてました。ヒタの生涯のダンナでギタリストだったロベルト・デ・カルヴァーリョがステージに上がって「Doce Vampiro」と「Mania De Você 」という、歌い出しの瞬間から歓声があがったほどのヒタの代表曲2曲で共演しました。このブラジル音楽的に貴重な一瞬が見れたのはかなり得した気分になりました。

Pet Shop Boys(第3ステージ 19:50)

続いてはペットショップ・ボーイズ。彼らのことは1985年から知ってはいましたが、見るのはこれがはじめてでした。

さらに言うと昔は大嫌いだったんですよね(笑)。なんかニューウェーブの終わりに出てきて、シンセポップをユーロビートに導いて、単なるダンス・アイドルポップと同じ土俵に陥れたみたいなイメージ持ってたんですよね。彼らもノリノリでゲイ・パーティのり、やってもいましたからね。

ただ、そういう僕のわだかまりはとっくに消えてます。それは、時折大真面目に良質ポップソングを作ってくるのは知ってたし、最近は彼らの古い音源聴いても「あっ、今なら結構行けるじゃん」と思う瞬間も増えてきてたから。そういう意味でこれも楽しみだったんですよね。

彼らの何となくのイメージとして、ライブにはなんか派手なオブジェみたいなものがあって、奇抜な衣装に身を包むみたいなものがありました。この日のライブでそれは半分は当たってました。きらびやかな照明にシュールな被り物はしていましたからね。

ただ、ライブ自体はふたりがただ、コンピューターいじってるとかじゃなくて、サポート・メンバーのついたより生っぽいバンド演奏でしたね。パーカッションの男性と、コーラスを兼ねるキーボードの女性と。二人ともに、ニールたちの子供くらいの年齢な感じの若さでしたね。

そして、ニールその人は被り物はずして素顔で歌に徹してましたけど、見た目はもう完全に初老のおじいさんですね。もう69歳と70歳近いことにも改めて驚きます。よく考えたら、あの当時たしかにデビューの年齢が遅かったことが話題にはなってましたからね。ただ、全盛期と全く変わらないハイトーン・ヴォイスを完全にキープしていたのはお見事でしたね。

選曲的にはほとんどはヒットパレードです。それこそ彼らの黄金期の。80年代半ばから90sの前半にかけてのですね。僕にとっては、大学時代のサークルの部室で他の部員の人がBGでかけてた曲のオンパレード。さっきも言ったように嫌いだった頃ですけど、当時のシングルはみんなおぼえてるくらい耳にしたし、忘れられない強度がありましたね。Suburbia、Opportunities 、Rent、Love Comes Quickly、そして当時から好きだったDomino Dancing。改めて聴くと、彼らがシンセポップを、あの当時のエレクトロのクラブのリアリティにあわせて進化させようとしていたんだなということがわかります。それを丁寧にバンド・アレンジでやろうとしてる姿をみて、「やはり根っこはニューウェーブなんだな」と思うと、かつての昔の彼らへの認識が正しくなかったのだなと思いましたね。そのことは、彼らのヒット史のなかでは比較的最近なNightlife、Electric、Hotspotといったアルバムの曲の披露の際に強く感じましたね。

そしてライブは本編最後がGo WestとIt's A Sinで閉め、アンコールで最大ヒットでやっぱ特別ですよね、West End Girls、一番最後を飾ったのはこれも大学の部室を思い出させる人気曲のBeing Boringでした。

The Killers(第1ステージ 21:30)

そしてヘッドライナーはザ・キラーズです。ただ今回のは、僕にとってはやや複雑ではありました。

なぜなら、本来彼らのヘッドライナーの年ではなかったから。実は他の地域、アルゼンチンやチリなんかではブラーがヘッドライナーだったんですよ。ただ、悲しいかな、ブラーってブラジルで人気がなく、90年代の全盛期に来たときに、アリーナ押さえて3000人しか客が来なくて問題になって。以来、不吉扱いされてるんですよね。2013年に来たときに見てるんですけど、あのときも集客をあのときがはじめてのブラジル公演だったラナ・デル・レイに助けてもらってて。今回のブラーのアルバム、僕は心から大好きなアルバムで今回のツアー、絶対見るつもりでいたのでブラジルをスキップされたのは本当に痛かった。

そしてキラーズも昨年の今ごろ来てたんです。あの年からはじまったF1ブラジル・グランプリのイベントでサッカースタジアムでイベントのヘッドライナーやってました。だから、あの頃から状況がなにか進んだわけでもない、新作ボツになってベスト盤が出るだけだったので物足りなさは正直感じてました。

ただ、キラーズの場合、ライブがいざはじまってしまうと、そうした前のことがどうでもよくなります。この日もザ・フーの後期の隠れ名曲Eminence Frontでステージに入ってきたキラーズは、なんと意表を突くMr.Brightside でのライブはじまり!過去に7回ライブ見てますけど、この最大の代表曲ではじまるの見たのは初だったので驚きました。前半でこのカード切ること、まずないですからね。

これでいやが上にも盛り上がります。さすがにベスト盤のツアーゆえか選曲がアゲアゲの大胆セット。Spaceman、The Way It Was、Human、Smile Like You Mean It、Shot At The Night。きら星のごとくのキラー・チューン連発。ここまでの大盤振る舞いはこれまでに記憶にないですね。

そして、ブランドン・フラワーズの大観衆を相手にしたさいの堂々とした立ち姿ね。スリムの体で、からだくねらせて大股広げて、下から手のひらをカッと開いて煽る様。これが様になる人、今の世界でもそうはいません。過去にブラジルで4回ヘッドライナー・ショウ見てますが圧倒的ですね。まさに「フェス職人」。これが天性に向いてる上に、本人がやりがい感じて努力でここまで磨いた感じですね。はじめてライブを見たのが2004年でしたけど、もう別人。とりわけハイトーンの伸ばしかたとその大きさですね。これなんてかなりの技術がないと出来ないこと。覚悟と貫禄がないとここまではできません。世界のフェス市場がキラーズをヘッドライナーからずっとはずすことがないのはこうしたとこですね。

この日も残念ながらギターのデイヴとベースのマークは不参加ですけど、もうその体制もなれたか、ブランドンの一人で引っ張る姿勢がちゃんと見えててその点でも頼もしいですね。

その圧巻のショーのなかで、観客から素人ドラマーをあげてドラムを叩かせるコーナーも去年同様にやりました。曲はFor Reasons Unknown。このドラマーがキック踏めなくてボロボロだったんですが(笑)、ブランドンのコール&リスポンスでなんとか取り繕ってましたね。

このさすがのライブで唯一心残りがあるとしたら、Imploding The Mirage、Pressure Machineのブランドン自信の最近の2作の曲が少ないことですかね。フォーキー・テイストにシフト・チェンジしようとしてセールス的にちょっと苦戦してる感じはあるんですけど、この路線へのこだわりから新作を中止にもしてます。キラーズのたぐいまれなアリーナスターとどう両立させていくのかが今後の課題でしょうね。

ライブはAll These Things That I've Doneで一旦閉めて、The ManとWhen You Were Youngで最後までアッパーに攻めて幕を閉じました。


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