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連載・「ロックを人が聴かなくなる」から5年②このところ感じられる「10'sロックからの強い改善点」

どうも。

では今日も行きましょう。

5年前の今ごろに書きました、「ロックが精神的でなく、人が聴かなくなる」という意味で死んだのはいつ頃からなのか、という記事。それからロックがどうなっていったか。それを昨日に続いて追っていきたいと思います。

昨日は当noteでこの5年に書いたもののなかから象徴的だった記事を集めて変遷を見るというやりかたでしたけど、今回は「10年代のロックと20年代のロックの決定的な違い」、これを昨日に続いて、また4つのポイントで言及していこうと思います。

早速一つ目行きましょう。

①ド派手な格好を恐れなくなった

僕が20年代で何が好きかというと

バンドのルックス

ずばり、これがあります。

もう正直、嫌でしたもん、こういう感じが。

ファンの方、ゴメンなさい(苦笑)。だけど、もう、こういうルックスでバンドやるの、もうトゥーマッチだったというか、「もういいから」と10年代の中ごろくらいからずっと思ってました。だって、こういう格好して新鮮だったのウィーザーとかナンバーガールの頃だと思うんですけど、それから何年経ちました?20年以上経って、逆にインディのバンドの普通のイメージがこれになってたとこ、正直なところあったと思うんですよね。ピッチフォーク読んでる奴がそのままドレスアップもしないでロックやった感じというか。

仮にこれが今日の若い世代にとってのロックのファッションになっていたのだとしたら、こんなの誰が憧れるんですか?だから「いいよ、もう普段着感覚は」と思ってたんですよね。

それだからこそ

マネスキン出てきた時、正直ほっとしたんですよ(笑)。「ああ、やっとこういうバンド、出てきたんだ」と思ってですね。で、これがただ単に80sのヘアメタルを研究してやってるようなリバイバリストとかだったらつまんなかったんですけど、全然そうじゃなく、今時の音楽性の真っ当な人たちだったんでなおさら良くて。この格好のせいで、少し前のロック観引きずってる人にとっては嫌で仕方ないみたいですけど(笑)、逆に「ロックで化粧しちゃいけない」とか、そういう感じに彼らが考えているのだとしたら、それはロック史から何も学んでないということになると僕は思いますね。人と真逆なことやって、それをアリにしてしまうスリルこそ、僕にとってはロックなんですけどね。それもただ単にポーズとしてのへそ曲がりなんじゃなく、社会的な思想なんかはものすごく従来のロックらしい自由を求める人たちでもあるんだし。そういう本質こそを見て欲しいんですけどね。

それに伏線ありましたよね、00年代後半に。


2016年にデヴィッド・ボウイがなくなって、2018年にはボヘミアン・ラプソディあったわけでしょ?古のロックから、今の世では失われた何かが感じられてそれが猛烈なブームに繋がったわけでしょ。何らかのフィードバックがないとおかしなはずだったんですよね。

 それがマネスキンだけで終わるのかと思ったら、今年になってその余波が続いてきました。それが

The Last Dinner Party

チャペル・ローンですよ!

女の子たちが次々とグラム・ファッションをものにしてステージを華やかなものにしています。いいと思います。楽しいじゃないですか(笑)。まだ、何か続いていくと思いますよ、これ。


②女の子たちがキャーキャー騒ぐイケメンも目立ち始めた

これもいいことだと思います。

ロックにとって良かったこと。それは彼がロックに加わってくれたことがあると思います。

はい。2010年代最大の男性アイドル、ハリー・スタイルズが自身の音楽性をロックで勝負してそれで人気になった。これもすごく大きかったんですよね。これで世のすごく多くの人たちが、ロックを聴いていることを意識しないでロックを体感することになったんですから。

そしてまたしてもマネスキンですけど、ダミアーノですよね。彼も文句なしに色男。やはりハリーと彼がロックの顔になってくれたおかげで、しばらく女の子がキャーキャーいうことがなくなってたロックにそういうノリが少しではありますが戻ってきたんだから。

そうしているうちにそれに続く流れが出てきてます。

ノア・カーンにホージアですね。昨日、カントリーとも親和性のあるシンガーソングライターとして台頭みたいなことを言いましたが、同時に顔でもウケてます。

ノアが日本人の感覚だとわかりにくいんですが、欧米圏ではすっごいモテキャラで、ライブの95%は女の子なんですってね。

ホージアはこの写真見てもすぐ分かるとは思うんですけど、これでさらに彼、身長2メートルありますからね。高身長ってだけでかなりのモテ要素になりますからね。

あとホージア、「Take Me To Church」のヒットの一発屋が10年ぶりにカムバックしたみたいな印象を持ってる人も少なくないんですが、それは表面的なチャートしか見ていません。ストリーム見てると、その後もずっと人気あったんです。潜在的にずっと。何かのきっかけがあればいつでも大きなヒットに繋がるだけのマグマがずっとあったんですけど、それが爆発したのが去年の秋のアルバムからですね。

③「男が憧れる存在」もとうとう出つつある!


「女の子がキャーキャー言う雰囲気にロックが戻って欲しい」という思いは僕には何年か前からあったのですが、ロックのいい時というのはそれだけでは足りません。男が憧れる存在がいなくては盛り上がりません。

思い出してもみてください。80年代の時のメタルがそうだったし、90年代の時のオアシスやグリーン・デイだってそうです。ああいう人たちは野郎が「あんな風になりたい」と憧れたものです。だいたい、そういう存在がないと、まず野郎がミュージシャン目指しませんからね。

そういう存在もロックからとんといなくなっていたような気がするんですよ。うちなんて12歳の年頃の息子がいるからよくわかるんですけど、最近Bボーイみたいなかっこし始めてるんですよ。白いシャツ着て、首にチェーン巻いて、髪型フェードにして香水つけたりして。聞いてる音楽もヒップホップでね。音楽だけでなく、ファッションのロールモデルとして憧れているようです。今のロックって、少年にそういうことをさせたくなるような存在がいなくなってるんですよね。

でも、そんな矢先にこれを聞いて、、さらに見て、衝撃をもって僕は驚いたんですよね。

このフォンテーンズDCの変身ぶりですよ!

ポストパンク調のロックンロールやらせたら元々ピカイチのバンドだったし、5年前に「ロックが死んだ」の記事でも「まだ希望がある」という書き方で紹介しましたけど、ここにきてのこの格好!勝負に出た感じしますね。

すごくヒップホップとかクラブ・テイストを自分たちのものにして、今時のトラップでも聴いてイキッてるガキに向かい合うみたいなロックですよね。なんか見ていて、90年代後半のビッグビートとかニューメタル思い出したね。あれをただの暴徒化させるとかでなしにそれをやってるのがまた粋なんですよね。オアシスやアークティック・モンキーズがやりそうでやらなかった方向に舵とったなと思います。

こういうフォンテーンズがとったアプローチみたいなバンドが増えていくと、自然と「バンドやりたい」と思う少年、増えてくると思いますよ。この曲、これまでの彼らの曲では異例中の異例で、アルバム、8月に出るんですけど、その前に1000万回ストリーム、達成しています。

④時代のサウンドを提示しようとする流れがようやく生まれつつある


あと、「新しい時代のサウンド」を作ろうとする流れがやっと出てきつつあるのかな、と言うのも感じますね。

2010年代という時代は、ロック史はじまって以来、初めて固有のギター・サウンドを持たなかった時代なんですよね。これもロック停滞の原因になってたと思うんですよね。

ただ2020年代はいって、ようやく工夫する音を作る人たち、出てきたなと思ってます。

その先陣切ったのは

ストロークスのこの「The New Abnormal」でのギター・サウンドはやっぱ画期的でしたね。彼らは00年代のギターも定義し、またしても新しいギターの音を築いた。なんかシンセ絡ませたみたいな独特な音なんですよね。

これに近かったのは2021年のHAIMのアルバムも近かったですね。ヴァンパイア・ウィークエンド手がけるアリエル・レクシャイドで。あと少し違うんですけど

パールジャムがこの新作「Dark Matters」で試したギターもすごく新鮮でしたね。これを手がけたのは去年、ストーンズ久々の大傑作を陰で支えたアンドリュー・ワット。

あと商業的にはアレでしたが、キングス・オブ・レオンもすごくいいギター、それこそ上のストロークスのアルバム意識したみたいな音でしたね。プロデュースはハリー・スタイルズのキッド・ハープーン。

あと、この流れにフォンテーンズの新作も手がけるアークティック・モンキーズでおなじみのジェイムス・フォードや、イギリスの今のギター・ロックの仕掛け人のダン・キャリー加えていいと思うんですけど、自覚的ないいプロデューサーが面白い試みしだしたと思いますね。

あと、その文脈とは異なりはするんですが、ラウド・ロック、ここが僕、インディよりも先にバンド物として大きく復活しそうな予感がしてるんですけど、そこから象徴的なものも出てますね。

Knocked Looseのこの「You Wont Go Before Youre Supposed To」というアルバムなんですけど、これ、いたるところで大絶賛でしたね。驚いたことにビルボードでも23位初登場で!

これ、聞いてすぐ理由わかったんですよね。ハードコア・パンクっぽいのに、アタックがやたらヘヴィで。その筋の人にはおなじみのアプローチかもしれないんですけど、ジェネラルなロックファンにとってもこのアプローチはかなり新鮮でしたね。

こういう感じですけどね。

ハードコア、今、ターンスタイルとかソウル・グロとかミリタリー・ガンとか出てきてますけど、これはなんか新しい方向、牽引しそうな気がしてます。

・・・という感じなんですけど、こう考えると10年代のロック、人気出なくなってもしょうがないな、という気がするんですよね。だって、ファッションが超地味、女の子から騒がれない、野郎が憧れない、新しいサウンドの試みがない。それじゃ停滞したのも無理ないんじゃないかと今にして
思いますね。



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