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連載 ロックのヒット曲が出なくなる史(1) 「ロックのヒット曲」って、いつの時代があるイメージなんだ?

どうも。

こないだSpotifyのグローバル・チャートで連載やったばかりなんですけど、思いついたので(笑)、ちょっともうひとつ連載始めたいと思います。

題して

ロックのヒット曲が出なくなる史!


これを行こうかと思います。

ことのきっかけはこれでした。

このツイートですね。

なんか、よく言うじゃないですか。「ロックのヒットが出なくなった」とか、なんとかって。ただ、こういう話になるといつも思うんですけど、定義そのものがすごく曖昧な気がするんですよね。いったい、いつ頃が「ロックのヒット曲が出てた」イメージで、そこからそうでなくなるのか。そこの認識がほとんどの人が曖昧なので、いつも不毛な議論だなと正直なところ思ってました。

 いつ頃に、何が理由でどう売れなくなったのか。僕に関して言えば、これに昔から一定の持論があるんですね。なので、それをここで生かして語るのも良いかと思いまして。

 ただし条件があります。それは

洋楽オンリー!

これで行かさせていただきたいと思います。

 邦楽に関していわさせていただくと、世界でも稀なロックのヒット曲が出続けている国だという認識です。70年代くらいから今日に至るまで、絶えず何かがヒットしている印象なんですよね。多少の浮き沈みだったり、「個人的に嫌いな時代」とかはあるとは思うんですけど、それでもよその国に比べたらうらやましい限りかもしれません。

 なので洋楽で語るんですけど、これをじっくり語るとすごく長いです!
この連載でも、4回ないし5回の長さで行こうかと思ってます。

 では、今回は、「ロックのヒット曲が出てた頃のイメージ」、これについて語ろうかと思います。

①日本で洋楽ロックの独自ヒットが出てた頃(60s後半〜70s初頭)

まずは、ここから行きましょう。

僕の定義だと、「アルバム」というものがロック・アーティストにとってシングルより売れる存在になってからでないと、この話は出来ません。大昔、シングルがメインの売れる音楽携帯だった60年代半ばまでは「ロックがヒット曲で当たり前だった」時代のわけですから。

 ただ、いわゆるビートルズの1967年の「サージェント・ペパーズ」以降ですね。ロック・アーティストがシングル・ヒットを出さずとも、アルバムが売れればやっていけることになった。そういう時代以降もなおもシングル・ヒットがロック・アーティストから飛び出る。そこを前提に話して行こうと思います。

 欧米だとですね、ロックがアルバムの時代になると、たとえばハードロックやプログレといった、1曲が5分超える楽曲というのはその当時のラジオ局がオンエアするのをすごく嫌がった。だから、かからなかったんですよね。それゆえ、60s後半に、「アートロック」とも呼ばれた初期のハードロック、プログレはシングル・ヒットが出にくくなったんですが、そのぶん、ロックファンはアルバムを買うことにシフトしていきます。また、アメリカでは、「アルバム・オリエンテッド・ロック」といって、一般のヒット曲向けじゃない、アルバム収録曲をかけるラジオ局もできはじめます。今となっては過去の話ですが、音楽性うんぬんにかかわらず、これが「AOR」の語源です(笑)。最初期のAORはメタルもプログレも入っていた、というわけで、途中から全く違う意味になっていきます。

 ただ、「シングル・ヒットするロック」というのも、存在はしていて。2、3分台の小気味よさを売りにしたポップなロック、というのは、70s前半までは流行ってるんですよね。そして、それは日本でもヒットしているものが少なくありません。

そんな代表の一つが

ビージーズの「マサチューセッツ」。1968年。昭和43年ですが、この曲、なんと、出来て間もなかった頃のオリコンの総合シングル・チャートで1位になっています!

 このように、その当時、日本においても洋楽曲は邦楽の中に混じって一般ヒットする可能性も十分にあるものだったんですよね。

 その理由のひとつには、この当時のGSバンド、タイガースとかテンプターズとかスパイダーズをはじめいろいろいましたけど、ライブでは洋楽のカバーが多かったんですよね。彼らを通じて洋楽覚えた人も多かったくらいで。そういうご時世でもあったから、洋楽ロックのヒット曲が潜在的に出やすくなっていたんですね。

 それもあったからなのか、この当時の日本、英米でシングル・ヒットしそうにない曲まで、ラジオ局が積極的にかけてたんですよね。

 その例が

ピンク・フロイドの「夢に消えるジュリア」。これもオリコンのシングルの上位に食い込んだ、日本独自のヒット曲です。

それから

ディープ・パープルの「ブラック・ナイト」とかですね。こういう曲が、1970年前後の日本ではラジオでもよくかかっていた、なんて話をリアリタイムの方からよく聞きます。僕はその頃にまさに生まれたので証人にはなれないんですが。

https://www.youtube.com/watch?v=oOKWF3IHu0I


 こうした曲も、英米でのシングルのヒットいかんにかかわらず、日本のラジオでヒットしています。もちろん、元ビートルズ勢のソロやストーンズもですけどね。

 この当時は日本も、まだタレントのトーク番組になる以前のニッポン放送のオールナイト・ニッポンとか、AMラジオ局に必ず1つはあった、洋楽のランキング番組でよくかかっていたようなんですよね。その当時にラジオの仕事やられていた人の話によると、「あの頃は曲のタイプの制限はうるさくなかった」みたいな話を、僕がラジオの仕事やってた時によく聞いたものでした。

 今の還暦以上の「ロックのおじさま」にとって、「ロックにヒット曲が出ていた」最初のイメージというのは、こういう感じだと思います。

②「ロックバンドでアイドル」の時代、ふたたび(70s半ば)

では続いて。1970年代半ばは、それより少し前のヒッピーくささがきえたり、ハードロックやプログレ・バンドの曲も短くなっていく時代。そして見た目の派手さも目立つようになってきた時代ですね。

その頃の象徴といえば

やっぱクイーンですよね。彼らがもう、日本の洋楽番組で、出るシングル、出るシングル、みんなヒットさせてた時代です。本国イギリス並みに出てたんじゃないかな。まだロックのヒット・シングル抑えめだったアメリカよりは確実に出てますね。もう、「日本の洋楽」で「記録」といえばクイーンでした。

そしてクイーンといえば

1977年当時に、あの当時、一番日本ででかい会場だった日本武道館で記録作ってたKISSですね。彼らもシングル・ヒットが日本で多かった。僕の記憶だと1981年、もう、一度アメリカで人気が下火になっていた頃でさえ出てましたからね。

そして、世界のどこでも売れてなかったのに、無理して武道館ライブをやったらバカウケ。それで逆輸入でアメリカで火がついたチープ・トリック。よくロック御三家っていうと、クイーン、キッス、エアロスミスという言われ方をしますけど、ランキング番組のリアリティでいくとエアロよりチープ・トリックだった印象の方が強いですね。

そして、ロック御三家にくらべるとはるかに後のボーイバンドのノリには近かったんですけど、ベイシティ・ローラーズも、やはりバンドとしての認知でしたから、日本での洋楽ロックの盛り上げにシングル・ヒットで大いに貢献してたわけです。

そして今や「ガールズ・パンクの元祖」のランナウェイズも日本でアイドル売りでバカ受け。この「チェリー・ボンブ」とウソ英語をつけた名曲(笑)もオリコンのチャートでヒットしてます。

https://www.youtube.com/watch?v=10fEou53gdA

そしてニュー・ウェイヴの時代に差し掛かる頃に、日本でのみ爆発的に売れてたジャパン。この「妖しい絆」をはじめ日本独自でヒットを出して、それが結果、日本人にとってのニュー・ウェイヴへの入り口として機能までしましたし、かくいう僕がまさにその一人です(笑)!そして遅れてイギリスでも解散直前にブレイクを果たします。

この時期は、「洋楽ロックのあった時代」でも人気高いんじゃないかな。

③アルバムからのシングル・ヒット量産が始まる時代(70年代後半〜80s前半)


①②は、どちらかというと日本の洋楽ファン目線でしたけど、今度はアメリカ目線で。アメリカで、「ロックによるシングルが大量に生まれ始める時代」というのは1977年以降のことです。

その契機となったのが

たっぱり、フリートウッド・マックのアルバム「噂」ですね。これは全米31週1位の大記録を達成したアルバムなんですが、史上初めて、4曲の全米トッ10シングルが出たアルバムでもあるんですよ。

 これを機に、「ロックバンドがアルバムでだけ売るんじゃなく、シングルでヒット出してもいいんだ!」という機運が生まれたんです。

 ここから、「アルバムにつき3、4曲のヒットが生まれてあたりまえ」の風潮ができあがりまして

こういう曲も、いずれもシングルの大ヒットが3、4曲jあるアルバムからの大ヒットですよね。

この当時、僕、ノートに記録してとってましたもん。「ええと、あのアルバムからのシングル・ヒットはあれとあれで合計で4曲かな」とかって、アルバム名の下にヒットした曲名書いて覚えてましたからね。それくらい、ロックのアルバムからシングル・ヒットしたイメージを普通にもってましたね。

それは批評家評価の高いポリスであろうがスプリングスティーンであろうが、全然関係なかったですね。どんなアーティストでも、アルバムからたくさんシングル切っててあたりまえで、それでヒットもたくさん出た時代でした。

④MTVの時代(80s前半〜90s初頭)


ただ、「昔はロックでヒットが出てたんだ・・・」と一番言ってそうな人が多いのは、この時期を通過した人なんじゃないか、という気はしてます。それがMTV期のヒットですね。やっぱ、体験した世代が一番若い(と言ってもアラフィフ・・)ので。

やっぱり、ニュー・ウェイヴはMTVと共にブームが一気に花開きましたしね。

プリンスみたいな異端のロックスターも生まれたし


一般的に「シングル・ヒットが出にくい」と考えられていたメタルからも、シングル・ヒットを量産するアルバムがこうやって出たりもしましたしね。MTVの時代に、こうした「ロックのヒット曲」が拡大したのは事実だと思います。

 次回以降、これがどう崩れていったのか、を書いていこうと思います。


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