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日本では「衝撃」、ブラジルでは「驚き」 マネスキン、ガンズまで喰ったロック・イン・リオとサンパウロ公演

どうも。

 いやあ、もう、こっちでも、すさまじい盛り上がりでしたよ。

マネスキン!


 こっちは日本と違って、テレビに生出演とかはなく、最初がいきなりロック・イン・リオで、その次の日が僕も見に行ったサンパウロ公演だったんですけどね。盛り上がりそうな雰囲気は一応あって、

 前日にリオの空港についたときにツイッターでトレンドにはなったんですよ。ただ、このときはどっちかというと、「局部的な盛り上がり」というのに近かったですね。日本だと、昨年のアルバムを年間ベストの1位にしてるメディアとか評論家さんとか、僕もその一人だったりもするんですけど、してたから、洋楽ロックファンで注目してる人も少なくなかったんですけど、こっちはどっちかというと「Begginで売れた人」って感じで、「ヴォーカルのダミアーノ、かっこいいね」みたいなノリで、バンドとして高く期待してた人たちがそこまで多くなかったんですよね。サンパウロ公演はそれでも売り切れてはいたんですけど。

 そういう感じだったから、やっかみも実はあったんです。「なんでポッと出のマネスキンがジェシーJを差し置いてメイン・ステージなんだ」とか「tik tokのスターがガンズ&ローゼズの前に演奏だと」みたいのが。

それがいざ、ロック・イン・リオのライブがはじまったら

唖然!


だったわけです。

 僕が日本のサマーソニックの頃に検索かけて、マネスキンのライブ体験でもっとも見かけた言葉は「衝撃」でした。一方、ブラジルでは「Surpreendeu(びっくりさせてくれた)」でした。「まさか、こういうライブをやるバンドだったとは」という驚きでしたね。

 ライブそのものは、世界の他の国でもここのところやってる流れですね。ユーロヴィジョンを制した「Zitti E Buoni」ではじまって「In Nome Del Padre」、「Mamma Mia」と、間髪容れない畳み掛けるグルーヴはテレビで見てても圧巻でしたね。彼ら、ダミアーノが最年長で23なんですけど、そのバンドがロック・イン・リオみたい大舞台でグイグイ攻めあげるんですよ!ものすごい度胸だし、それを裏打ちする実力の持ち主ですよね。

https://www.youtube.com/watch?v=oHqlZA4zwMA

 そしてダミアーノのMCのつかみも、もう頭キレキレというか。「何を言ったら喜ぶか」の計算が巧みというかね。ここでは、「ブラジル人がよくしゃべる汚いスラング」をしゃべったんですけど、「porra(ポーハ)」とか「caralho(カラーリョ)」とか言うわけですよ。僕もよく意味は知らないんですが、妻からは「あなたみたいな慣れない人が言うとまずいから絶対に言うな」と言われてる類の言葉です(笑)。それでいきなりつかむわけです。

そして

 ブラジルでも大ヒットした「Beggin」、これが4曲目でしたけどこれで大合唱。ただ、ブラジル人たちが驚いたのは、むしろこれ以降の攻勢でしたね。

7曲目で「これ、歌ったらおこがましいかなとは思ったんだけど。はじめてやるんだ」と言って、クイーンの「Love Of My Life」のカバーですよ!

 これ、すごい意味があって

 1985年1月の、国際的社会現象にもなったロック・イン・リオの第一回でクイーンが会場を大合唱させたことで非常に有名な曲だったんですよ。あの「ボヘミアン・ラプソディ」でのライブエイドのライブの半年前で、クイーン・ファンには同様に有名なものなんですけど、ここでぐっと掴まれたブラジル人ファン、めちゃくちゃ多かったんですよ。

そして、そこからはマネスキンも加速的にエンジンかかってきまして

 トーマスとヴィクトリアの、正常位的ギター、ベース・バトルですね。これ、テレビカメラの前でやったわけです。この日、トーマスがかなりギター弾きまくってサウンド的にそうとうハードな印象も与えてたんですけど、この上にこれですからね。ちなみにヴィクトリア、こっちが南半球で冬で肌寒かったこともあり、日本のときのように脱いではいません(笑)。

 そして、ここから先がブリトニー・アーズの「Womanizer」のカバーで、これも女性客のハートを掴んでたし、ストゥージズの「I Wanna Be Your Dog」カバーするはのバラエティさで、見てる人、「なんだこれは?!」と思ったでしょうね。だって、現在のポップスターとクラシック・ロック混ぜるなんて手法、普通使ってきませんからね。このあたりの間口の広い利かせ方ができるのもまたマネスキンなんですよね。

 そしてライブは、彼らの中で二番目に有名な「I Wanna Be Your Slave」で淫らに攻めあがり、最後は「Lividi Sui Gomiti」でブラジルの多くの主に女性たちをステージに上げる大団円で幕を閉じました。

 このライブの後、ツイートはマネスキン一色になり、日本ほど賞賛一色でもなかった(ジェシーJファンのしょーもない妬みも多かったですが)ものの、「驚いた」「ファンになった」「チケット買っておけばよかった」「ここまでのベスト・アクト」の声が並んでました。

 ただ、その声はですね、その次に起こったことが相乗効果となってしまいます。

 それは、この次にライブをやったガンズ&ローゼズがですね、アクセル・ローズの声の調子がとにかく悪かったんですよ。ツイートの中に「声がミッキーマウスになった」というのも見てウケたんですけど、それくらい、力のない裏声にしかなってなくてですね。

それが

 ブラジルの新聞、こっとはロック・イン・リオはテレビで生中継、大手紙が速報レビュー出すんですけど、もう酷評の嵐。下のやつなんかは「引退しろ」とまで書く始末でした。

 このように、ガンズ側が自滅した要素は強くはあるものの、結果的にマネスキンが「ガンズを喰った」は事実だったと思います。「guns maneskin melhor(良い)」で検索したら「マネスキンの方がよかった」のツイートが山ほど出てきますしね。

 こんな風に、実際に、「マネスキンがガンズのお株を奪った」という記事まであがりましたからね。この二つの対比は、かなり今後、「世代の交代劇」的に語られそうな気がします。当のマネスキンはガンズはかなり憧れの存在みたいでして、自分の出番の後のガンズのライブもノリノリで見てる姿が映し出されてましたけどね。

・・・ということで、サンパウロ公演、続きます。

 サンパウロでのライブはこの翌日だったんですけど、会場は、以前にロザリアのレポートと同じ、エスパッソ・ウニメッド。8000人規模の大き目のライブハウスですけど、売り切れてましたね。

 この日の観客ですけど、僕の見たとこ、2対8で女性客が多かったですね。あと、年齢層は幅広く、下は10代も見たとこ多かったし、その一方で高齢者の方も結構いましたね。

 ただ一番パワーあったのは20〜30代の女性ですね。それはこれからでも明らかです。

https://twitter.com/_HTE_/status/1568466921045065729


 いやあ、本当に耳元で叫ばれちゃったから、耳がキーンと鳴っていたかったんですよ。これはダミアーノも同じだったようで、「まいったな。君達、世界で一番うるさいよ。自分の声、聞こえないんだもん」と、最初の3曲が終わったあとに話したくらいですからね。

 基本、セットリストは前の人一緒で、地味目な部分が一部違うだけでしたが、聞こえ方だけ少し違いましたね。前の日は、写真にもあげたようにトーマスとヴィクが両翼で引っ張る感じでしたけど、この日はダミアーノの喉の調子が絶好調で、あとイーサン!生で聞くと、彼のズコンズコンと決めてくる、思いスネアとキックが際立ちますね。あれがヴィクのベースラインと一緒になって、マネスキン・サウンドに不可欠な重低音のボトムを支えているわけなんだな。これはもう少し気づかれてもいいことだなと聞いていて思いましたね。サウンドの重心ががっしりしてるのは、ここに秘訣があったと思えたのはすごく個人的には収穫でした。

 ダミアーノのコミュニケーションはこの日もブラジリアン・スラングですが、ここで彼は翌日の新聞を賑わす発言を行います。ブラジルは今、大統領選の真っ只中なんですが、ロックのライブに行くような人は極右クソ大統領のボウソナロが大嫌い、特に女性たちが忌み嫌ってるんですね。そこで「フォーラ(やめろ)、ボウソナロ」という声をあげたとたん、ダミアーノが「ああ、ボウソナロね」と笑ったあと、

「やめろボウソナロ」って言っちゃったんですよ(笑)。これが馬鹿受けして、2万6千もいいねついてるでしょ?

 国内最大の新聞の記事にまでなりました(笑)。ダミアーノ、前も「ファック、プーチン」言った人ですからね。こうやって記事になります。

 ライブそのものは、ロック・イン・リオより最後に2曲長く、最後は、東京の豊洲でやった時同様、2度目の「I Wanna Be Your Slave」で締めましたけど、終電がもう少しでなくなる危険性があったので、僕は途中で退出して、本当に1分遅れたらやばかったタイミングで帰りました。聞いた話によると、このあと、電車なくなった客たちが出待ちして、マネスキンたちが囲まれて、一緒に楽しんでたらしいですよ。

 日本でもサマソニ直前の豊洲の時点で盛り上がってましたけど、ブラジルでもサンパウロ公演の方が内容的にもよかったせいなのか

 ローリング・ストーン・ブラジルはサンパウロ公演の方を熱く書いてるんですよね。この公演の翌日の朝もマネスキン、トレンド入りしてたので、かなり反響、熱狂がでかかったんだと思います。

 それにしてもマネスキン、今年って作品で出たの「スーパーモデル」のシングル1曲と、あと「エルヴィス」のサントラに参加しただけでしょ?その状態で、日本とブラジルでこんなに現象的に盛り上がるってすごいですよね。普通なら「谷間」の年のはずが、来年と思われるニュー・アルバムに向け、強い弾みになったと思います。それまでに多くの人たちが「衝撃」と「驚き」をもって、あるべき姿勢でマネスキンの次に備えられるようになっているのは非常に大きなことだと思うし、それを可能にするのは、やはり、若いうちから百戦錬磨のライブの実力があってこそなんだと思いましたね。


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