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全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト(第34回) アイズレー・ブラザーズ その2 10位〜1位

どうも。

では、昨日の続き、行きましょう。

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FromワーストToベスト、今回はリードシンガーのロンが80歳を迎えますアイズレー・ブラザーズ。今日はいよいよトップ10に発表。早速10位から行きましょう。

10.It’s Our Thing (1969 US#22)

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まず10位は、1969年発表の「It's Our Thing」。これは自主レーベルTネックからの第1弾アルバムで、大胆にファンク路線を打ち出したアルバムですね。「It's Your Thing」が全米2位まで上がってます。彼らの場合、同時期に売れてたファンクよりも、やっぱロンの歌心があるせいなのか、ノリが微妙に横っぽく、そこがファンクにありがちな勢い単調なイメージに陥らずに済んでますね。それゆえファンク・ファンの中では違和感持たれちゃっているのかもしれませんが、それこそがアイズレーの多様性や聴きごこちにつながっているのかなと改めて思わされます。

9.Eternal (2001 US#3)

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9位は、10位のアルバムから実に32年後の作品になります「Eternal」。Rケリーが半分プロデュースを手掛けたことで人気復活につなげたアイズレーですが、それでプロデューサー陣からも仕事依頼が殺到したか、いろんなプロデデューサートのコラボとなりました。中でも、これ意外だったんですけど、ジャネット・ジャクソンでおなじみジャム&ルイスが相性が良く、70sの全盛期のアイズレーのテイストをよく理解したファンク&メロウ・マナーを引き出してましたね。あと個人的にはネオ・ソウルの代表選手、元トニ・トニ・トニのラファエル・サディーク・プロデュースの2曲が良かったですね。70sの初頭のSSW的なアイズレーにアーニーの情熱的なギター・ソロを絡ますところが光ります。このアルバムだとRは1曲のみ参加なんですけど、やっぱ彼の作品は飛び道具的な使われ方のほうがいいですね。ロンがマフィアのボス、Mrビッグスに扮してのメロドラマ「Contagious」がキラー・チューン的に光ります。残念なのはこのアルバムを最後に、ロンの妻だったアンジェラが離婚し、制作から去ったことですね。もたらしたものは大きかったのに。

8.Twist And Shout (1962 US)

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8位は「Twist And Shout」。アイズレーがすごい点のひとつに「ビートルズ”を”」ではなく、「ビートルズ”が”カバーした」バンドであることがあげられますが、言わずと知れたタイトル曲です。そういう存在がこの名曲だけで消えずにその後に多様なサウンドの変遷を経て今までサバイブできていることこそが彼らの本当の偉大さだと思うのですが、その片鱗はもうこのセカンド・アルバムの時点からありますね。サウンド的にはこの当時のツイスト・ブームに乗った曲調と、当時から黒人コミュニティには人気あったジェイムス・ブラウンのスタイルのアップテンポなソウルですが、テンポの速い前のめりなノリはロックへの適応生の高さを当時から感じさせるし、なにより、この当時からエレキギターをかなりフィーチャーしてるんですよね。時期は異なりますが、この数年後にジミ・ヘンドリックスをバック・ギタリストで迎えることができた慧眼はこのときすでにあったのかなと思わされます。

7.Givin' It Back (1971 US#71)

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続いて7位は「Givin' It Back」。僕はこここそがアイズレーの決定的な、今後に断続的に続く成功の路線を築き上げたアルバムだと思っています。ファンク路線で開花したものの、なかなかアイズレーらしい独自性を打ち出しあぐねていた彼らが繰り出したのはこのギターを抱えたジャケ写でも想像できるように、ロックや白人シンガーソングライターのカバー・アルバム。白人ではボブ・ディランからCSNY、スティーヴン・スティルス、黒人ではジミヘンにビル・ウィザース、ラテン系ではウォーと、人種を超えた選曲をアイズレーのフィルターを通じてグルーヴィーに演奏し、ロンがソウルフルに歌い切る。とりわけヒットしたスティルスのカバー「Love The One You're With」でのアコギのグルーヴィーなリフと、師匠ジミヘンのプレイをいなんなく踏襲した、まだ正式メンバー出なかった頃のアーニーのギター・プレイが光りますね。

6.Go For Your Guns (1977 US#4 UK#46)

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6位は「Go For Your Guns」。これも人気の高いアルバムのひとつですね。このアルバムで光るのはアーニーのギターですね。スローなセクシー・ナンバー「Footsteps In The Dark」ではタメのきいたセクシーでグルーヴィーなリフを。これはアイス・キューブの「It Was A Good Day」でサンプリングされてヒットもしました。そして、彼らのライブで必ず演奏される名バラード「Voyage To Atlantis」での官能的なエレキギターのフレーズですね。この二つがどうしてもアルバムの印象をリードしますね。スライの「Family Affair」みたいなダウンテンポの「Tell Me When You Need It Again」もなかなか言い曲ですが、シングルになったファンク「The Pride」は歌詞のメッセージ性こそ大事なものの曲としてはちょっと弱いかな。収録曲数が7曲と少ないことから、もう少し尺があったら順位上げてたと思います。

5.The Heat Is On (1975)

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5位は「The Heat Is On」。全米1位のアルバムだし、これはオールタイム・ベストに挙げる人もそれなりに多いアルバムなんですが、僕にとっては「2曲の大きな代表作」で思い出すアルバムですね。ひとつは「ブラック・イズ・ビューティフル」の時代の再後期のメッセージ・ファンクの「Fight The Power」。これと同じフレーズでパブリック・エネミーがヒップホップ史上屈指のポリティカル・アンセムを出してますよね。そしてもうひとつが、アイズレー・バラードの中でも屈指の人気曲「For The Love Of You」。ロンのなまめかしいファルセットにブラザー達のそっと寄り添うようなジワリとしのびよるようなハーモニー、アーニー史上でももっとも美しいアコースティック・プレイに、クリス・ジャスパーのまとわりつくようなキーボードのメイン・リフ。この2曲があるからにははずせませんね。ただ、全体のバランスと収録曲の強度ではそんなにベストなアルバムでもないんですけどね。

4.Between The Sheets (1983)

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4位は「Between The Sheets」。ある世代から下にとっては「これこそが最高傑作」というかもしれません。これ、R&Bが「ブラコン」と呼ばれてた時代のスロー・ジャムのアルバムではたしかにベストでしょうね。終始ダウンテンポのネットリしたベースのグルーヴにロンの官能的な「シャララララ〜」というセクシーなファルセットが乗るという、その後の彼らのサウンドのひな型ができているんですけど、僕はそれに加えて、ここでのクリス・ジャスパーのコードとエレクトロの音色のセンスの良さ、それから「Choosey Lover」でのいやらしすぎる悩ましいソロや「I'll make Love Tonight」でのジャスパーのクラビネットと一緒に弾かれるカッティング・ギターのリフなどで貢献しているアーニーもほめたいところですね。あと、ベトナム帰還兵の悲劇を歌った「Ballad For The Fallen Soldier」みたいな、かつて社会派の曲も歌った彼ららしい曲が急に浮上してくるところも意外性があって良いです。ただ、これで「いける!」という感触をつかんでしまったからなのか、下の弟達、アーニー、マーヴィン、ジャスパーのバンド部隊が脱退してアイズレー・ジャスパー・アイズレーを結成してしまいます。両者とも共倒れになってしまっただけに、惜しかったですね。

3.Brother,Brother,Brother (1972)

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3位は「Brother,Brother,Brother」。70年代初頭という時代はシンガーソングライターの時代でもあって、白人にジェイムス・テイラーやキャロル・キングがいて、黒人にロバータ・フラックやビル・ウィザーズがいましたが、このアルバムはそんな時代機運をつかんだ、アイズレーのシンガーソングライター的側面での最高傑作ですね。象徴的なのはキャロル・キングのカバー3曲、「Brother,Brother」、「Sweet Seasons」、そして彼女の最大の代表曲をスローのロング・ヴァージョンでカバーした「It's Too Late」が光ります。ただ、多くの人がこのアルバムで真っ先に思い浮かべるのはオリジナルの大傑作「Work To Do」でしょう。ここでのクリス・ジャスパーのシャッフルするピアノ・リフはこの時期の彼らの代名詞ですね。ジャスパーは名バラード「Love Put Me On The Corner」でも貢献しています。あと、アーニー、マーヴィン、ジャスパーの3人はこの当時、ニューオーリンズ・ファンクに傾倒していたのか、「Lay Away」「Pop Tha Thang」の2曲でベースラインの太くどっしりした全身をゆさぶるファンクも披露。まだ正式メンバーではなかった3人ですが、ここまで活躍すれば昇格も納得ですね。


2.Harvest For The World (1976)

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そして2位に「Harvest For The World」。全米トップ10アルバム計6枚出したアリーナ・ファンクバンド時代のアイズレーの中で1、2位を争う傑作と言ったら、やっぱりこれですね。彼らのいいところがトータルに詰まったアルバムです。アイズレーってアルバムになると、すごく詰め込み過ぎたり、逆に少なすぎる収録曲数で終わったりとなかなかバランスが取れないんですが、これは珍しくその均衡が一番取れたアルバムです。まず、短いインタールードに導かれてのタイトル曲は彼らのシンガーソングライター的メッセージ・ソングの中でも屈指の一曲で、のちにロバート・パーマーとデュラン・デュランとシックのプロジェクト、パワー・ステーションにカバーされています。そしてアイズレー最速のロック・チューン「Who Loves You Better」。アイズレーの煽りのハードロック・ギターとジャスパーのクラビネットとのコール&レスポンスが最高です。そして、のちに再評価されることになるしっとり系アコースティック・バラード「At Your Best (You're Love)」。この曲は1994年、人気絶頂だったRケリーがセンセーショナルなデビューを飾った天才少女だったアリーヤにカバーさせて大ヒット。これが90sのアイズレー復活の引き金にもなります。逸話多いでしょ、アイズレーって。


1.3+3 (1973 US#8)

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そして1位は1973年発表の「3+3」。これはアイズレーだけでなく、70sのソウル・ミュージックに残る大傑作ですね。このアルバムから従来のオケリー、ルドルフ、ロンの3人のヴォーカル・グループにアーニー、マーヴィン、クリス・ジャスパーの3人が加わったバンド編成になるんですけど、その新しいケミストリー(すでに実質、この体制ではありましたが)が生まれていますね。ヒットしたのは、ロンのファルセットとアーニーのセクシーなギターの泣きが光る「That Lady」ですけど、ほかにも聴きどころ満載です。中でも日本のシティ・ポップ・ファンに人気なのは「If You Were There」。山下達郎のシュガーベイブ時代の名曲「DOWNTOWN」の元曲。ジャスパーのクラビネットの刻みがすごく洒落ててかっこいいです。あと、脱力ファンクの「What It Comes Down To」、ラストのバラード「The Highways Of My Life」の静寂から後半のクライマックスへのダイナミズムも素晴らしいですが、秀逸なのはカバー曲3曲。ジェイムス・テイラーの「Don't Let Me Be Lonely Tonight」では原曲が表現しきれなかったソウルのエッセンスを引き出し、ドゥービー・ブラザーズの「Listen To The Music」のニューオーリンズ・ファンク風アレンジでも原曲にあった肉完的躍動をより強め、そしてシールズ&クロフツの「Summer Breeze」は寂寥感と哀愁を強めるスローでねtっこいアレンジ、そしてアーニーの終わることのない一世一代の長尺ソロ。これ、2001年、唯一見た彼らのライブでも、後半の山場で延々弾いていたことが思い出されます。

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