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全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト(第34回) アイズレー・ブラザーズ その1

どうも。

今週と来週は二回にわたってFromワーストToベストをやります。それは、80歳を迎える偉大なアーティストが2組いるため。

今週はまず、こちら!

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リードシンガーのロン・アイズレーが21日に80歳になります、R&B界の重鎮、アイズレー・ブラザーズ。彼らの、公式30枚あるアルバムから順位をつけたいと思います。

アイズレーは90sのときに再評価ブームがあった頃にとにかく大好きで、アルバム集めたりしたものですけど、この人たち、サブスク意識が非常に強く、全カタログ、サブスクにあるんですよね。これまでが「マニア受け」のイメージが強かったものでしたけど、やっぱり全部聴ける状況があると、そういう印象も払拭できるものです。

あと、僕から言わさせてもらうと、R&Bのコアな部分を表現できているアーティストであると同時に、もっともロックとのクロスオーバーができた人たちでもあります。その意味でもぜひ、ロックファンの方に聞いてほしい存在でもあります。

では今日は、30位から11位までを見ていきましょう。


30.Masterpiece (1985  US#140)

ワースト30位は、1985年発表の「Masterpiece」。アイズレー・ブラザーズって、最初は3人の兄弟によるヴォーカル・グループ、70年代からは2人の弟と義理の弟がバンドで加わった6人組として活動してtたんですけど、その3人ずつが割れて、元の3人組ヴォーカル・グループになっての結果的に唯一のアルバムです。この前のアルバムでスロー・ジャム路線が爆発してバラードばっかりになったアルバムなんですけど、これまで避けてきたストリングス入れた甘々の似合わない路線になってしまって「らしさ」が完全に見失われました。違うアーティストみたいです。アイズレー、全体聞いて「駄作」はほとんどないアーティストなんですけど、これは自信もって駄作と言えるアルバムですね。

29.Power Of Peace (2017 US#64)

ワースト2位は、目下のところの最新作の、サンタナとの共演アルバムですね。これはどっちかというと、ロンより、名ギタリストの弟アーニーの好みで実現したような気がするんですけど、アーニーはうれしそうにひいてますけど、肝心なロンの声が75を超えて本当にキツくなってるんですよねえ。ちょっと、これは聞いてて悲しかったです。それまでがあまりにシャウトもファルセットも完璧なうまさを誇ってた人ですからね。「老境以降」の歌い方がものにできずに臨んでしまった感じですね。音楽性的には支持したいものではあるんですけど。

28.Grand Slam (1981 US#28)

ワースト3は、商業的全盛期の後半の作品です。「Grand Slam」。この1981年ってアルバム、2枚出してるんですけど、その1枚目です。なんか、彼らの中でマンネリ感が出て来てしまったのかな。惰性、手癖で作ったアルバムみたいになってしまってます。印象に残りません。81年内にアルバムをもう1枚作ったのも、彼ら的な手応えがなかったからではないでしょうか。


27.Winner Takes All (1979 US#14)

続いては79年発表の「Winner Takes All」。これ、それまで4作連続で続いていたアルバム全米トップ10が途切れています。これ、意欲作で、アナログ2枚組。1枚目がディスコ、2枚目がバラードが中心なんですけど、多く作りすぎて密度が薄いアルバムになってしまってますね。代表曲が見当たりません。

26.Body Kiss  (2003 US#1)

26位は「Body Kiss」。復活して全米1位にもなったアルバムにしてはすごく低いでしょう?なぜか。それはRケリーによるアルバムだから。「彼の数々の淫行スキャンダルを嫌ったか?」。それも100%ないとは言い切れないんですけど、それ以上に、Rによる一方的すぎる一面的なアイズレー解釈が好きじゃないんです。すごい幅のあるアーティストなのに、スロー・ジャム一辺倒のアルバムで。同じ年にロン、バート・バカラックのカバー集をソロで出してるんですけど、そうした良さが全然生きてないんですよね。Rのファンだけに訴えて売れた感じです。

25.Baby Making Music (2005 US#5)

その次が、その次のアルバムですね。こっちはRから離れて、当時の別のR&Bの売れっ子プロデューサーたちに委ねたアルバムです。「Body Kiss」よりはいいんですけど、モチベーションが上がってない感じですね。このとき2人組なのに、アーニーがほとんど参加してもないですからね。事実、このあと、ロンはソロに移行。12年間、アイズレー・ブラザーズとしてのアルバムがでないことになります。

24.Tracks Of Life (1992 US#140)

その次が92年の「Tracks Of Life」。長兄2人の死と引退でロン(彼は三男です)一人きりになっていたところに、下の弟2人、アーニーとベースのマーヴィンが復活しての新たなトリオ編成による新生アイズレーのアルバム。それで彼ら張り切りすぎちゃったのか、バンド感を戻したのはいいんですけど、1時間を超える大作作ってしまって、後半が疲れちゃって聞けません(笑)。サウンド的にはマイケル・ジャクソンの「デンジャラス」に近い、ロックも交えたニュー・ジャック・スウィング感があって興味深くはあるんですけど、もうちょっと絞ればよかったかな。この当時、ロンの奥さんのアンジェラ・ウィンブッシュのプロデュース時代ですけど、彼女主体でもう少し絞った作品にすればよかったと思います。

23.This Old Heart Of Mine (1966 US#140 UK#23)

そして、これは「えっ、低すぎ?」と思われる方もいらっしゃると思います。モータウン所属時代の「This Old Heart Of Mine」が23位。たしかにこれ、彼らのモータウン在籍時の唯一のヒット曲で、のちにロッド・スチュワートがロンをゲストにまじえてカバーして再ヒットもしたくらい人気はあるんですけど、いかんせん「らしさ」がない。1966年当時の、モータウンきってのプロデューサー・チーム、ホランド=ドジャー=ホランドの曲をただあてがわれただけで有名曲のカバーも多数です。ロンがモータウンの曲をうまく歌っている意味ではいいアルバムなんですが、それが彼らがしたかったことではなかったことがこの次のアルバムで証明されます。

22.Go All The Way (1980 US#8)

22位は「Go All The Way」。この前のアルバムで4作続いた全米トップ10アルバムが途切れたんですが、1枚でトップ10に復帰しました。これも、そこまで決定的にいいアルバムではないんですけど、名バラード「Don't Say Good Night」をはじめバラードはいいアルバムです。

21.Brothers Isley (1969 US#180)

21位は「Brothers Isley」。この一つ手前のアルバムで、彼らはスライ&ザ・ファミリー・ストーンを意識したファンク・バンドになるんですけど、間髪入れずに勢いで作ったアルバムですね。このころは、彼らが作った自主レーベル「T-Neck」のファミリー・アルバム的な感じで、レーベル所属の他のアーティストの曲も聴けます。もう、ここから先の順位は好きなアルバムばかりではあるんですけど、この前作からの全米2位の大ヒット曲「It's Your Thing」に似た曲ばかりが集まったところがやや単調かな。

20.The Real Deal (1982 US#87)

20位は82年作の「The Real Deal」。ここから彼らも時代の流れには逆らえず、バンド色よりはエレクトロ・ファンク色が強くなるんですけど、この時代は義弟クリス・ジャスパーの才能が光ってた時代ですね。シンセの使い方がかっこよく、うまく時代に対応できた新しいサウンドを作れています。ジャスパーの才能はこの次のアルバムで発揮されますが、その後のソロ・キャリアでうまくいかなかったことを考えると、アイズレー・ブラザーズにとどまってほしかったなあ。

19.Get Into Something (1970)

19位は1970年の「Get Into Something」。これも基本的に「It's Your Thing」からのファンク路線による3枚目のアルバムなんですけど、その次の路線がすでに垣間見れている、いわゆる「全盛期の前段階」的なアルバムですね。際立った曲こそありませんが、充実していることはたしかだと思います。

18.Mission To Please (1996 US#31)

続いて18位は「Mission To Please」。この前年にRケリーの大ヒット曲「Down Low」でロンがマフィアのボス、ミスター・ビッグスとしてゲスト・ヴォーカルおよびMVでの出演で新しいファン層を作った直後のアルバムで、これで人気が復活します。その意味ではもう少し高くてもよかったとは思うんですけど、いいアルバム、多いので。作風的にはRが介入したことによって、これまでプロデューサー役だったアンジェラとのせめぎあいが目立ち、そこが聴いていて痛々しくはあるんですけど、スロー・ジャム一辺倒にもならず、アンジェラがロンの良さを引き出した点でもいい作品です。嬉しいのは、ロンが久々に白人ロック系のカバー曲を復活させたことで、シンプリー・レッドの名曲「Holding Back The Year」を原曲に忠実ながらも力強い熱唱でうならせますね。

17.Smooth Sailing (1987 US#64)

17位は87年発表の「Smooth Sailin'」。ここから、のちにロンが結婚する、その当時アーティストとしてヒットも出していました才女、レネ&アンジェラのアンジェラ・ウィンブッシュがプロデュースに回ります。そしてアイズレーは長兄のオケリーが心不全で急死したために次男ルドルフとロンのデュオになります。ここではアンジェラの時代感覚をつかんだプロデュースで、アイズレー復活しますね。この頃に流行ってたクワイエット・ストームに、エレクトロ・ファンクとニュー・ジャックのあいだぐらいのグルーヴ感と、すごくうまく混ぜてます。やっぱり、スロー歌うときでもある程度エッジがないとロンの場合は面白くないし、そこのところアンジェラ、すごくわかってた気がします。この当時「ブラック・コンテンポラリー」略して「ブラコン」という言葉がありましたが、その観点ではかなりの力作です。

16.Spend The Night (1989 US#89)

そして、その次が次作の「Spend The Night」です。路線的には前作からのブラコン路線なんですが、「アンジェラ、大胆だな」と思わせるのが、これまで兄弟グループとして勢い暑苦しかったアイズレーに、自身のフィーメール・ヴォーカルを大胆に混ぜることによって、これまでのアイズレーにdせなかったフェミニンな要素を出すのに、ここで成功します。背景として次男ルドルフが歌手活動引退を宣言してロンだけの実質ソロになったことが大きかったとは思うんですけど、それを機に、ロンのラヴ・バラードに女性側の心情が入ってくるようになってよりロマンティックさと説得力を増したのは彼の表現にとってかなりプラスになったと思いますね。

15.Showdown (1978 US#4 UK#50)

15位は「Showdown」。これはゴリゴリのファンクとスローの対比がいいアルバムでしたね。スローでは名バラード「Groove With You」、ファンクではこれまでの彼らでももっとも濃い、Pファンクばりの「Take Me To The Next Phase」が光りますが、個人的には落ち着いた中でのアーニーのカッティング・ギターが光る爽やかな「Coolin' Me Out」ですね。この曲でのマーヴィンのスラップ・ベースとアーニーのカッティングで、アイズレー、のちにセルフ・サンプリングもやってます。

14.Live It Up (1974 US#14)

14位は「Live It Up」。正式に6人編成になって2枚目のアルバム。シンガーソングライター、ロック色の濃度はここでも維持されていて、基本的には「前作の延長線上」というやつではあるんですけど、ロンのファルセットが光る名バラードの「Brown Eyed Girl」、アーニーのロング・ギターソロがききどころの「Midnight Sky」、そしてトッド・ラングレンのキャリア史上屈指の名曲「Hello It's Me」の、こってりしたアコースティック・ソウル調のカバー。彼ららしさはいかんなく発揮された力作です。

13.Inside You (1981 US#45)

13位は、これは意外に思われる人もいらっしゃるかもしれません。「Inside You」。前に言った、81年に出た2枚のアルバムのもう1枚です。このアルバムですが、当時の世のAORブームにアイズレーが臨んだようなアルバムで、クリス・ジャスパーのソングライティングがすごく光ってます。これ、シティ・ポップの隠れ名盤ですよ。この当時のアイズレーにしてはファンク色が抑えめでそこが不満な向きもあるかもしれませんが、ジャズパーのキーボードによるコードのセンスは絶品です。

12. Shout  (1959)

そして12位に、デビュー・アルバムの「Shout」。すごいですよね。1959年!デビューが50sというのは。この時、ロン、まだ18歳です。これ、タイトル曲はテンポのいい、ロックンロールとも解釈されるリズム&ブルースで、「ツッタカ、ツッタカ」の速いリズムが当時としては異例で、そのエッジからか半世紀以上にわたって頻繁にカバーされてますね。あと、この当時にすでに黒人の間ではスターだったジェイムス・ブラウンや、ロックンロールスターだったリトル・リチャードにも言えることですけど、この当時のリズム&ブルース、非常にゴスペル色が強いですね。そうしたところに注目して聞くと、音楽全体の歴史検証としても面白いアルバムです。

11.Soul On The Rocks (1967)

そして、惜しかった。11位はモータウンからの2枚目のアルバム「Soul On The Rocks」です。アイズレー・ブラザーズは一時期、なんとあのジミ・ヘンドリックスを、彼のブレイク前のバックバンドのギタリストとして雇ってた時期があります。その、1964年頃の音源は「Testify」というシングルのみなのが惜しいんですけど、67年といえばジミが国際的にブレイクした年。「やっぱり俺らの読みは正しかったんじゃん!」とばかりに、外様で入って歌いたくない曲を歌わされていたモータウンに対し、ハードロックなギター・サウンドで反旗を翻してます。これが、この次からの、自身のレーベルT-Neckからのファンク・ロック・サウンドにつながっていきます。

では明日はトップ10です!




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