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全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト (第44回)ローリング・ストーンズ その2 10位〜1位

どうも。

では、昨日に引き続き

FromワーストToベスト、ローリング・ストーンズの全オリジナル・アルバムのアルバム・ランキング。今日はいよいよトップ10の発表です。

早速10位から行きましょう。

10.Voodoo Lounge (1994 UK#1 US#2)

10位は1994年発表の「Voodoo Lounge」。ミックとキースが仲違いから戻って以降はこれが最高位となります。これの先行シングルの「Love Is Strong」を聞いた時、スネアの皮の振動まで聞こえる生っぽい音をすごくかっこいいと思ったものですが、これこそが90s。80sまでの電気仕掛けのオーヴァー・プロデュース・サウンドの終焉。それでもめたストーンズとしては問題解決でもありました。90sはグランジの時代で、このアルバムにも、その後のライブでの定番曲になる「You Got Me Rocking」があったりはしますが、それよりは「生音回帰」の時代。これを手がけたドン・ウォズは以降のストーンズに欠かせない存在になりました。先の2曲に「I Go Wild」など、シングルでロックンロールのイメージが強い作品ではあるのですが、ある時期から続いていた「6割ロックンロール、3割スロー、1割実験」みたいなコンフォート・ゾーンがここでは破られ、アッパーなロックもただ激しいだけじゃない工夫が凝らされ、全体にミドル・テンポの多い一筋縄ではいかない多様性に富んだ展開にもなっていますが、これもドン・ウォズがもたらしたケミストリーだと思います。

9.Undercover (1983 UK#3 US#4)

9位は1983年の「Undercover」。これは意外に感じる人もいるかもしれませんね。MTVブーム真っ只中の1983年の秋にこれが出た時、シングルの「Undercover Of The Night」のヴィデオはよく流れたんですけど、とにかくアルバムは「売れなかった」という印象が強かったです。でも、確かにシングル曲、これまで以上に手が込んでてファンキーでストーンズにしては前衛的だったんですけど、今聴くとかっこいいんですよ。他の「She Was Hot」「Tie You Up」をはじめとしたロックンロールが、「Tattoo You」で聞かれた以上にニュー・ウェイヴ世代のソレで、特にチャーリーのスネアに聴かせたリバーブが小気味好くシャープなんですよね。このくらいまでならテクノロジーの介入としてもありです。全体として音がスカスカして隙間多いのも良いです。そして「Too Much Blood」では、この当時フランス圏で流行っていたアフロ・ファンクを大胆に導入。これ、ポール・サイモンとかピーター・ゲイブリエルでアフリカがブームになる3年前なんですよね。ちょっと時代に先駆けすぎてつんのめってしまったか。

8.Between The Buttons (1967 UK#3 US#2)

8位は1967年1月発表の「Between The Buttons」。これはもう60sのUKロック・ファンとしてはたまらない時期に出たアルバムです。イギリスがサッカーのワールドカップの優勝に沸いた「スウィンギング・ロンドン」が終わったばかりで、逆にこれの半年後にはサマー・オブ・ラヴのどサイケ
時代。時代がどんどんおしゃれに過激になっていく、そんな世の中に出たアルバムです。ストーンズにとっても、これはオリジナル路線の第2弾アルバム。ここからのシングルが「ルビー・チューズデイ」や「夜をぶっとばせ」になったことからもわかるように、いろんな楽器を使って多彩な音楽性にトライしていた時期ですね。それゆえルーツのリズム&ブルース色は薄れてきて、その点で物足りない人はいるかとは思うんですけど、この当時のUKロックの担い手としてはど真ん中の存在であることに変わりはありません。ストーンズにおける「リボルバー」みたいな立ち位置なのも興味深いです。

7.Let It Bleed (1969 UK#1 US#3)

7位は1969年作の「Let It Bleed」。これに関しては「低い」と思われる方もいらっしゃるのではないかと思います。人によっては1位でもおかしくないし、何を隠そう、僕もある時期は1位でした。これ、今回聞き返して、いまひとつピンとこなかったのと、発見があってなるべく上で紹介したいアルバムがあった手前、下げさせてもらった次第です。このアルバムは、いわゆる「ストーンズらしいロックンロール」が完成し始めた頃のアルバムで、ライブでの定番曲も非常に多いです。「Gimme Shelter」「Midnight Rambler」「You Can't Always Get What You Want 」と言う大定番だけでなく「Live With Me」「Let It Bleed」あたりもそうかな。これを2枚目として「黄金4部作」的な流れがあると思うんですけど、この前作ほど生々しくなく、この後2作ほど決めアンセム的でないからかなあとか、いろいろ考えるんですけど、レイドバックな部分が僕の今の気分でなかったせいかもしれません。もちろん、ブライアン・ジョーンズの死の直後、リリース時にはオルタモントの悲劇に巻き込まれたドラマに溢れた激動期のアルバムという点は重要なんですけどね。

6.12X5 (1964 US#3)

6位は「12X5」。1964年発表のアメリカでのセカンド・アルバムで、同国におけるブレイクスルー・アルバムでもあります。これはイギリスでは元々、5曲入りEP「5X5」があったんですけど、そこにシングル曲などを足して作ったアルバム。これのヴァージョン違いで翌65年初頭に出たイギリスでのセカンド・アルバムが「Rolling Stones No.2」です。僕は最初の3枚、もしくは4枚の、ストーンズがリズム&ブルースのカバー・バンドだった時の初期衝動的なエネルギーをすごく再評価してるんですけど、そのなかでも今作が一番ですね。「Around And Around」「Suzie Q」、インストナンバーの「2120 South Michigan Avenue」あたりで聞かれるキースの切れ味鋭いリフとソロはこの当時一番の切れ味な気がするし、ビル・ワイマンのベースとチャーリーのドラムのズドンッと重いアタックも同時期の他のバンドでは聞かれないものなんですよね。のちのロックンロール・バンドの醍醐味の原型がここにできてる上に、この時期の彼らで最も大事なシングル曲「It's All Over Now」、そして名バラードの「Time Is On My Side」の2曲があるわけでしょ。その時点でやはり外して語るわけにはいかないですよね。

5.Aftermath (1966 UK#1 US#2)

5位は1966年発表の「Aftermath」。これがストーンズが全曲オリジナルで作った最初のアルバムです。これは僕が昔からフェイヴァリットだったストーンズのアルバムですね。8位に入れたこれの次のアルバムもそうなんですけど、これ、ストーンズのアルバムというより、「この当時のUKロック」として好きなんですよね。黒人音楽への憧憬と当時はまだ珍しい楽器だったエレキギターの狂おしい電気的なノイズに惹かれた少年たちが、多様な音楽性を獲得し表現を広げていく時期。この時期のストーンズで驚くのは、ミックのソングライティングの順応性の高さ、そしてブライアン・ジョーンズのマルチ・プレーヤーとしての類稀な器用さですね。「黒くぬれ」ではシタール、「アンダー・マイ・サム」ではマリンバ、そのほかにもシタールと同じインドの楽器のダルシマーやハーモニカ、さらには「Take It Or Leave It」では琴まで弾いちゃうんですからね。オリジナル路線を嫌がった当の本人が、バンドのサウンド拡張に貢献するというのが皮肉でありながらも、別の才能を引き出しているのが興味深いです。

4.Beggars Banquet (1968 #UK3 US#5)

4位は1968年発表の「ベガーズ・バンケット」。これはサイケデリック・ポップを追いすぎた結果、「サタニック・マジェスティーズ」で落とし穴にはまったかのようにやり過ぎてしまったストーンズが自分たちのアイデンティティを求めるべく、古のルーツ・ミュージックと向かい合ったアルバムです。そこで彼らは、エレクトリック・ブルーズのマディ・ウォーターズよりさらに前の、1930年代のロバート・ジョンソンなどのカントリー・ブルーズまで掘り下げるマニア性を発揮。そうやってアコースティックの表現を体得していく一方で、彼らのロックンロールそのものがより肉感的で土臭く、さらに骨太に成長するという、一石二鳥の成長を遂げたりもしている。そのマジックにまず驚きます。加えて、前作までで生かしたサイケデリックな手法も隠し味的に生きてまして。それは「悪魔を憐れむ歌」でのミニマルなグルーヴだったり、「ストリート・ファイティングマン」の背後で鳴るインド楽器だったりするんですけど、前者は特に時空を超えたエターナルなダンス・クラシックにもなるわけで。これを演出したのがブライアン・ジョーンズで、マラカスやシタールで貢献している姿は最後の雄姿ですね。ここから4作のプロデューサー、ジミー・ミラーのストーンズの導き方も見事です。

3.Some Girls (1978 UK#2 US#1)

3位は1978年作の「女たち」。近年のストーンズのオールタイムで人気上がってるアルバムなんですけど、これは僕も賛成ですね。実は、今日まで多くの人が知ってるストーンズのイメージって、このアルバムだと思うので。この頃ってダンス・ミュージックならディスコ、ロックならパンク/ニュー・ウェイヴと、アーバン・テイストがポップ・ミュージックの鍵となっていましたけど、ディスコにはシングルで大ヒットした「Miss You」で対応。これ以降、マイナー調のファンク歌謡はストーンズの持ち味の一つとなっていきます。でも、それ以上に大きいのは、ストーンズがここで新しいロックンロールのパターンをつかんだことですね。ストーンズのロックンロールって、とりわけ4部作の頃あたりは腰から下のもったりしたグルーヴが持ち味だったんですけど、ここで聞かれる「Before They Make Me Run」「When The Whip Comes Down」「Lies」「Respectable」「Shattered」あたりは、パンクの時代に合わせたより前のめりで軽快なテンポのロックンロール。ここでもしギアチェンジできてなかったら、もしかしてストーンズはその後の時流に乗れなかったんじゃないか。そんな事まで考えてしまいます。昨日紹介した「Tattoo You」に痛快なロックンロール、多いんですけど、「Start Me Up」はじめこの時期の余り曲にいいロックンロールが目立つことを考えても、絶好調だったのではないかと思うんですよね。

2.Sticky Fingers (1971 UK#1 US#1)

2位は1971年発表の「Sticky Fingers」。やっぱりこれは、トップ近くから外すことできないですよね。実は改めて全作聴き直す作業を始めた頃、これが1位になると思ってたんですよ。というのは、やはり、このアルバムこそが「ストーンズ印のロックンロール」の完成系であり、それをアリーナ規模で「なじみのロックンロール・アンセム連打」の形で聞かせることのできたアルバムっってこれだと思うから。いまだに彼らのライブでのクライマックスで歌われる「Brown Sugar」を筆頭に、「Can't You Hear Me Knocking」「Bitch」といった強烈なファン・フェイヴァリットがアッパーな曲にあり、名バラードの「Wild Horses」「Sister Morphine」「Moonlight Mile」があり、傍で「You Gotta Move」みたいな枯れたカントリー・ブルースもある。高い次元でバランス取れてるんですよね。曲にすごく役者が揃っている上に、アルバムのアートワークの方でも、アンディ・ウォホールがジーンズのジッパー付きのアートも制作したという、凝ったジャケ写も話題になってます。そういうとこも含めてこれ、やはり「名盤」には相応しいんですよね。ちなみにSpotifyで最もストリーミング数の多いストーンズのアルバムもこれです。

では、いよいよ1位、行きましょう。これです!

1.Exile On Main St (1972 UK#1 US#1)

はい。1位は1972年発表。「Exile On Main St.」、「メインストリートのならず者」ですね。いわゆる名盤選だと、これが1位のことがほとんどなので珍しくはないんですけど、実はですね、僕が今回聴き直しの作業をするときはこれが1位になることを予想してなかったです。というか、僕がストーンズのアルバムでこれを1位にすること自体が実は初めてなんですよね。そこには一つ理由がありまして。それは先行シングルが「ダイスを転がせ」って地味だなあと思っていたっことです。やっぱり僕の場合、シングルで目立つ代表曲があるものを1位に選びたいところがあって。その基準をこのアルバムは満たしてはいません。ただですね、今回これを改めて聞き直して、この当時のストーンズの名曲、名リフ、名フレーズが溢れて止まらない勢いに聞いてて圧倒されたんですよね。ロックンロール一つとっても「Rocks Off」「Rip This Joint」「Shake Your Hips」といきなり3連発で立て続けてる時点で持って行かれるところがあるし、中に進めば「Sweet Virginia」みたいなカントリー・ゴスペルの名曲を始めアコースティックの名曲が続き、キース初のヴォーカル曲にして以降のストーンズの歴史で外せないロックンロールになった「Happy」があり、ストーンズ史上でも屈指の豪快なロックンロールの「All Down The Line」があり、名ソウル・バラードの「Shine A Light」、そして最後はロックンロール締めで「Soul Survivor」。曲数の多さがなせる技ではあるんですけど、2枚組18曲収録がありながらも、最初から最後まで弛緩することなく一気に聞かせる力がある。これだけの内容がありながら、その当時にそこまで爆発的に売れなかったことの方が不思議です。1973年の幻の日本公演ってこの時のツアーなんですよね。そこも含めて実現してほしかっったライブだなとも改めて思いました。

















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