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オスカー受賞作レビュー⑤「プロミシング・ヤング・ウーマン」 傑作!「Y世代キッズ」の継承者たちが築き上げた痛烈な社会寓話

どうも。

オスカー受賞作レビュー、行きましょう。残すところはあと2つ。

今日はこれです!

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「プロミシング・ヤング・ウーマン」。今回のオスカーでオリジナル脚本賞を受賞。残念ながらオスカーは逃しましたが、賞によってはキャリー・マリガンが主演女優賞も受賞した、このブログでも前から紹介していたように、かなりセンセーショナルな話題作。もう、半年くらい見たくて仕方なかった映画です。

さて、どんな映画なんでしょうか。早速あらすじから見てみましょう。

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主人公キャシー・トーマス(キャリー・マリガン)は夜な夜なバーに繰り出して酔ったふりをしては、デート・レイプしそうになった男を退治する、という、ことを繰り返していました。

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キャシーは30歳になったばかりでしたが、いまだに親元で生活。親は、手塩にかけて育て、医学部まで行きながらドロップアウトした娘にすごく気を揉みつつ、ちょっと病んだそぶりを見せるキャシーに対し、歯に物が挟まったような関係を続けています。

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キャシーは日中はゲイのオーナーが経営するカフェで働いていましたが

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そこに小児科医のライアン(ボー・バーナム)が立ち寄ります。メディカル・スクールのときに片思いしていたライアンはキャシーとの再会を喜びますが、その学校が悪夢でしかなかったキャシーは、彼に対して最悪なことをします。しかし、寛大な彼はそれにもめげずカフェに足繁くやってきます。

 そのライアンから、スクール時代の学園の人気者だったアル・モンローが地元に戻ってくることをキャシーは耳にします。アルは在学中、キャシーの子供時代からの親友だったニーナ・フィッシャーにレイプをし、そのショックでニーナは自殺をしていました。アルには何のお咎めもなしに出世街道をまっしぐら。それこそがキャシーをドロップアウトさせ、夜な夜な繰り返すデート・レイプ者退治の理由でした。

そこからキャシーは

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心あたりのある、いろんな人たちに面会し、ある計画を練っていきます。

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そんな中、ジェントルマンなライアンとのひとときが、キャシーにとっての唯一の心の癒しになっていました。

そんなとき、キャシーはある衝撃の事実を・・・。

・・・と、ここまでにしておきましょう。

日本はこれ、7月公開ですよね。なので、あらすじも大事なとこ端折って話してるんですけど、これ

傑作です!!

なにがいいか。これ、まず

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やっぱ、キャリー・マリガンですよね。

この配役をめぐり、「キャリーはミスキャストでは?」という声もこれ、実際にはあったんですけど、キャリーが間違いなくパーフェクトです!

だって、キャリーみたいな「気が優しそう」「気が弱くて本当のことが言えなさそう」「ひとりで悩んでいそう」な役をやってきていた彼女だからこそ、この復習に萌える女性役がこれ、説得力を持つんですよ。

これ、世代の近い女優さんで比較してみるとわかるんですよ。マーゴット・ロビーとかジェニファー・ローレンスだと痛快にリヴェンジを戦う感じになりかねないし、エマ・ストーンだと「陰」のイメージがない。エマ・ワトソンだといい子すぎて汚れな役が難しい。クリステン・スチュワートが若干近いかなとは思うんですけど、キャリーの方がもっとフラジャイルな感じが表現出来る。そう考えると、これ、一番ベストな選択肢なんですよね。

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同時に、これを演じたことで、今後のキャリーの女優としての幅もこれ、相当広がっています。ここまでのキャリアで一世一代の役だと思います。

ただ、それ以上に僕が評価したいのは

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監督を務めたエメラルド・フェネルですね。彼女、元来はイギリスの女優さんです。年齢まだ35歳で、これは監督、脚本家としてのデビュー作ですが、驚くようなアイデアの持ち主ですよ、これは!

デート・レイプという、今日の大きな性犯罪をの問題を生かして、一級品のスリラーに。「社会に対する洞察力」と「エンターティナーとしての見せ方」、この人はこの2つのバランスが絶妙だし、本来、こういう人が映画監督になるべきです。

これ、見ていて思ったんですが、この映画

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本来ならディアブロ・コーディに作ってほしいタイプの作品でしたね。彼女は「Juno」で、そうした社会性と、エッジィでユーモアに富んだ作品で出てきて僕的にはあの当時もっとも好きな脚本家だったんですけど、そのあとは「今の社会にいきる女性」はうまく描くんだけど、エンターテイメント性が後退してしまった。そこに、すごく彼女を彷彿とさせるエメラルドがディアブロ以上にディアブロな作品で出てきた。そういう感じです。

そして、それこそがエメラルドの監督としてのキャラクターというか作家性ですね。この人、

かなりわかりやすいY世代監督なんですよ!

Y世代というと、「ミレニアム」の近辺にティーンだった世代のことですけど、そういうディテール満載なんですよ。

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この格好とか、特にそうなんですけど、この映画、随所にブリトニー・スピアーズ・オマージュが登場してきたり

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こういう、2000sの青春ものでなつかしい顔が登場したりするんですけど、きわめつけが

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このシーンが名シーンとして、すごく語られているんですが、これがもう、めっちゃくちゃ2000sなんですよ(笑)!日本公開前だから詳しく書けないのがアレなんですが、すごく重箱の隅つくマニアックなネタつかって「クスッ」とさせるんです!こういうとことか、大好きですね。

 こういう作家性のキャラクターのところで、僕、この監督、好きなんですけど、映画のプロとしてもこれ、最後の30分での二転三転のどんでん返し、これが本当に見事です!

これ、本当によく書けたと思います。「これで運、使い果たさなきゃいいけど」と老婆心ながら心配したくなるくらいです(笑)。ここも詳しく書けないのが惜しいですね。

これだけ要素揃ってたら、すごく見たくなる・・と信じたいところなんですけど、これ、もうひとつ見どころがあります。それは

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この映画でハートスロブ、ライアン役を演じているボー・バーナム。彼が本当にいい役者なんですよ。この映画で人気、急上昇すると思います!

この人というのは

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スマッシュ・ヒットしたインディ映画「エイス・グレード」の監督です。まだ彼、30なんですけど、すっごい多彩な人です。もとがユーチューバー、コメディアンで、それから監督、俳優という人。この映画で役者需要があがっていくんじゃないかな。

そんな彼は

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ネットフリックスで最新のコメディ・ショーも控えています。今後、注目の存在に間違いなくなってくる人だと思いますよ。

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