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映画「ロスト・ドーター」感想 名女優の心理劇を食った「もう一人の主役」

どうも。

突然の停電、すみません。ああいうのが入ると、全体のスケジュール狂っちゃうので僕も好きじゃないんですけどね。

ということで、昨日書く予定だったものをそのまま書きます。これです。

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ネットフリックスの映画「ロスト・ドーター」、これは女優のマギー・ジレンホールが監督を手掛けた初の作品としてだけでなく、すでに映画賞もかなり受賞している話題作です。僕もこれは予てから楽しみにしていました。

一体、どんな映画なのでしょうか。

まずはあらすじから見てみましょう。

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主人公リーダ(オリヴィア・コールマン)は48歳。大学教授で裕福な暮らしをしてバカンスでギリシャに来ています。

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滞在中、ずっと一人の彼女は、時間があると自分の娘と電話で会話をしています。

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滞在中はホテルの従業員、中でもアメリカ人でギリシャ生活の長いライル(エド・ハリス)とは打ち解けます。

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彼女は基本、1日をビーチで過ごすのですが、マナーの悪い若い一家に頭を悩まされます。

ただ、ある日、その一家の幼児の女の子が遠くに遊びに行って行方不明になり大騒動になります。

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リーダがその子を見つけたことで、彼女はその娘の母親ニーナ(ダコタ・ジョンソン)に強く感謝されます。リーダに興味を持ったニーナは彼女に個人的なことを根掘り葉掘り聞き出します。

そして、この”迷子事件”を契機として、リーダは自分の思い出をフラッシュバックします。

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それは、まだ、彼女自身が大学の研究員として駆け出しで、自分の2人の娘がまだ幼かった若い頃の自分(ジェシー・バックリー)の頃でした。

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彼女は娘のことを愛してはいるものの、生活上でのストレスや鬱が彼女を襲い、娘たち、とりわけ長女の方に辛く当たる日々を過ごしていました。

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そして学会で同僚の大学教授(ピーター・スカースガード)と不倫をしたりもしていました・・。

・・・と、ここまでにしておきましょう。

この映画ですが

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基本、原作、イタリアの小説のようなんですが、それは存在しはするものの、脚本を全部一人で書いたのは、監督を務めたマギー・ジレンホールです。

これ、心理劇として非常によくできています。

「家族の間での、どうしても埋めることのできない葛藤劇とその悔恨」というと、スウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマンを思い出すんですけど、彼女自身、好きなんじゃないかな。かなりの影響を感じさせます。今のご時世、あまり行われないアプローチなので見ていて新鮮でしたね。

彼女はベネツィア映画祭でこの作品で脚本賞を見事受賞しているんですけど、これも納得の出来です。

この脚本を最高の形で肉付けしているのが演技陣です。

まずはやはり

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オリヴィア・コールマンの力が大きいですね。一見普通の、何不自由ない中年女性に見えつつも、その内部は複雑で、どこか破綻し、狂気さえも含んでいる。そういう女性像をうまく演じていると思います。

彼女はオスカーの主演女優賞を受賞した「女王陛下のお気に入り」での狂気の演技や、「フリーバッグ」でのどこか鼻に着く芸術家の継母など、クセのある演技させたら今、この世代ではワン・オブ・ベストの人で、この話にも説得力をもたせていました。

が!

この映画での僕のベストは彼女ではありません。僕はどちらかというと

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彼女の若い頃を演じたジェシー・バックリー、イチオシです!

子育てからくる積み重なった心理的ストレスや、そこからの逃避を求めて不倫に走る心理的切迫感。この焦燥感のアピールが見事でしたね。このフラッシュバックの切迫感がこの映画をすごく引き締めていました。

この彼女なんですが

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同じくネットフリックス映画だった、チャーリー・カウフマンの映画「もう終わりにしよう。」で、ジェシー・プレモンズ演じる主人公との別れを考えている、ぶっきらぼうなカノジョ役で注目された人ですね。あの時は「この人、誰だろう」と思ったんですけど、今回の映画でかなり内面心理を演じるのに長けた女優さんであることが証明されましたね。年齢もまだ32歳と若く、これから助演、主演共々、いろんな大きなオファーが来そうな予感がしています。

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あと、ダコタ・ジョンソンの助演ぶりも立派でしたね。ものすごくチャラいいヤンママ風で言葉遣いもはすっぱなんだけど、いつも苦悩は抱えているキャラクターをバランス良く演じてました。彼女、「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」のせいで女優として軽く見られているところがあるんですけど、その映画の時から演技力、僕は評価してます。その後にいろんな映画に声かけされてるところでも、それは証明されてると思いますが、彼女も株あげる演技していると思います。

 あとはもう、くれぐれもマギーですね。彼女、うまいのは、これがただの心理劇に終わってなく、「この後に何か悪いことが起きるんじゃないか」と思わせるホラーの手法も使っていたりして。それが映画を見る上での緊迫感を高め、見る側の集中力も高めているんですよね。そういうところもすごくうまいと思います。

僕としてはこれ、グレタ・ガーウィッグ、レベッカ・ホール、オリヴィア・ワイルドに続く、女優から転じた監督としての成功作になっていると思います。その意味でもかなりポジティヴな作品です。見ることをお勧めしますよ。


 

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