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黒人人種差別を防ぐべく語り継がれてきた、非黒人も学ぶべき悲しい歴史

どうも。

なんか日本で、こういうことが物議醸したようですね。

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NHKで、すごく人種差別的な漫画のストーリーで、あたかも白人との経済格差が今回のアメリカでの黒人人種差別反対デモにつながった、という曲解ですごく苦情を受けて、局が謝罪までしたそうですね。

まあ、これ、僕も呆れましたね。NHKって、他の局が作れない学術的なドキュメンタリーとかレポとか作れる会社なのに、そこがコレっていうのはね。

この会社に関していえば僕の古巣でもあるんですけど、厳しいこと言いますけど、「商社と銀行受かったけどこっち来た」って人と、「本当に報道とか番組作りたいんだ」って人、2種類いて、悲しいかな、前者に報道系の人が多かったの、入社のときの研修とかで知ってたりする身なんですよね。保守的なタイプの人ほど、マイノリティ差別に関して「経済格差がうんぬん」に結びつけがちで社会で実際に何が起きてるのか、とかまで掘り下げようとしない傾向もあります。コレに限らず、日本の報道、この傾向、強いですよ。僕がここでよく書いてるブラジルのクソ大統領の日本での報道にもそれ感じるときあるし。

それに対して、この問題に関しての、本国アメリカの報道っていうのは立派なものだよなあ、と今回のこのジョージ・フロイド問題に端を発する人種差別反対デモに関しての報道を見るに、感心することしきりです。

僕みたいなエンタメ系の人間でも、たとえば60sのソウル・ミュージックやヒップホップ、スパイク・リーの映画見たりしながら、公民権運動がどんな感じで、警察の暴力が黒人をどんなに苦しめてきたか、とか学んでますけど、そういうものだけで足りるだけの知識(それでも日本での報道よりも相当深いんですけど)では収まらないですね。

アメリカの報道、何が感心するかって

黒人社会の中で歴史的に語り継がれている人種差別の歴史をひろいあげるのが本当にうまい

「歴史は学ぶためにある」ともいいますが、この活かし方が違うんですよね。そこに比べると日本って、この点が決定的に弱い。えらく古いものの知識は無駄に強かったりするのに、近現代史に関してのイマジネーションが本当に貧弱というか。これは学校での歴史教育の弊害だとも思うんですけどね。

黒人たちの暴動の背景には、単にジョージ・フロイド氏が首絞めて殺されただけのことではないですよ。もう、それこそ奴隷制の時代からの度重なる恨みつらみがあってのものです。そして彼らはそうした悲劇をよく覚えて、代々言い伝え、その時代に生まれてない人たちにまで教育してきている来ている。そのたまものなんですよね。

そこで今回は、そうしたアメリカの報道でも振り返られる、「黒人人種差別の悲しい事件」、それを一部ではありますが、ちょっと紹介しようかと思います。いずれも、公民権施行前の本当に古い話ではありますが、こういう話が黒人社会では実際に言い伝えられてきています。

①「國民の創生」問題(1915年)

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最近、アメリカのケーブルで、「風と共にさりぬ」がストリーム禁止になった、という報道が流れて物議醸してますけど、これは僕も行き過ぎだと思います。黒人に対しての悪意はないから。それはトーキー第1号作の「ジャズシンガー」も白人が黒人の黒塗りをやってることでご法度になってたりもしますけど、あれも誤解です。あの映画の主人公は、黒人の悲しみに敬意を評してあれをやって、それが時代を経て差別表現と認定されるようようになっただけですから。

そういう映画よりも、即刻問題にすべきは1915年の「國民の創生」で間違いありません。この映画、映画史的には「モンタージュ技法」というカメラ技術を使った最初の映画として語られているんですけど、とにかく内容が最低です。なにせ、KKKを正義の味方として描いて、黒人を悪者にしてリンチしてるんですから!僕はこれ、この話を90年代から知ってて、2010年くらいにYouTubeではじめて見たんですけど、本当に吐くかと思ったほど憤りと気持ち悪さを感じました。

この映画、あとから問題になったわけではなく、公開当時から問題作とされて上映禁止になったところも多かったんですけど、ジム・クロウ法の影響もあって保守的だった南部などでは問題なく見られて、結果、名作扱いも受けてきたわけなんですけど、さすがにこれは内容的に讃えられるべき内容では全く無いです。「反面教師」として見る分には意味があると思いますが、このネガティヴな逸話だけ覚えておくので十分な映画だと思います。

②メアリー・ターナー リンチ死事件(1918年)

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続いては1918年、ジョージア州で起きたメアリー・ターナー・リンチ事件。これは、この事件の前日に、地主と対立した夫がまず殺され、その翌日に異議申し立てを行なったメアリー・ターナーさんが、妊婦であったにもかかわらずリンチにあい、腹を切られ、赤ちゃんを取り出され、木に遺体を吊られた、という恐ろしい事件です。

 こういうことを平気でやってきてたんですよ。こういう、黒人のリンチされた被害者を木に吊るすというのは

ジャズの名シンガー、ビリー・ホリデイの「奇妙な果実」でも歌われたことで、頻繁に行われてきた悪しき習慣でさえあったのです。

③レッドサマー(1919年)

続いて、1919年、シカゴで起こった白人の黒人に対しての暴動事件、「レッドサマー」。これは当時、南部から北部のシカゴに黒人人口が労働者として移動してきた際に起こったことです。この大移動があったことで、南部の伝承文化だったブルースがシカゴに本場を移すことになり、それがロックンロールにも影響を及ぼすようにもなっています。

 そんな人口移動の矢先に、白人たちは「黒人にも平等の権利を与えるなんて、なんの共産主義だ!」という理不尽なキレ方をし、黒人を襲い、それが何日か続くという事態が起こりました。共産主義だから「レッド」なわけなんですが、コミュニズムとなんの関係もない黒人たちがとばっちりを受けて多くの人が殺されたわけです。

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ここでも、ウイル・ブラウンという人がひどいリンチに遭い、それが言い伝えられています。

④タルサ暴動(1921年)

続いて、1921 年の「タルサ暴動」。オクラホマ州タルサというところは、当時のアメリカ南部で発展した黒人社会が築かれていた場所で、整備された都市機能を人は「ブラック・ウォール・ストリート」とまで呼んでいました。

しかし、そんな場所にKKKの魔の手が伸び、白人たちが黒人たちを殺すことになります。このときは黒人側も暴動を起こしたとは言いますが、公式に残っている記録では、黒人31人に対して白人5人の死。「黒人だってやりかえした」の理論は通用しません。

この暴動は

HBOで去年はじまった「ウォッチメン」の第1話の冒頭でこれ、描かれてもいます。

⑤無実の14歳、ジョージ・スキニーの死刑(1944年)

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続いて1944年。サウス・キャロライナ州での14歳の少年、ジョージ・スキニーの死刑事件。今、14歳で死刑というのは起こりえない話ですが、これが起こった話です。

彼は白人の2人の女の子を、実際にやってなかったのに疑いをかけられ、白人弁護士と判事による不利な裁判で死刑宣告をされ、これが

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このように写真の記録としても残ってます。見るだけで気が重くなりますが、学ぶには大事なことでもあります。

⑥エメット・ティル リンチ事件(1955年)

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そして最後に1955年、シカゴで起こったエメット・ティルのリンチ事件でしめましょう。彼も14歳だったんですが、白人女性に口笛を吹いた、ただそれだけの理由でリンチにあい、撲殺されました。

ただ、彼がどんな暴力にあったかというのを

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両親が大量の写真にして公開して大問題になりました。これ、ちょっと見るに忍びないので、一番ショックの軽い写真をあえて載せましたが、「Emmett Till」で写真検索してみてください。ちょっとこれはかなり痛ましいです。

このエメット・ティル事件が、はじまってまもなかった公民権運動を促進させる原動力のひとつにもなっています。彼に関しては

デビューして間もなかった頃のボブ・ディランも、公式音源ではないですが、曲の題材にしたことで知られています。

また、ジョージ・フロイドさんに関して「現在のエメット・ティル」という呼び方をしてる人も少なくなく、再注目を浴びている最中でもあります。

こうしたことがあっての公民権運動であり、公民権が施行された後でも日常的な白人警官による黒人への暴力行為です。それを覚えておいたほうが良いと思います。



























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