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ライブ評 ロザリア(2021/08/22 サンパウロ) フラメンコもヒップホップもレゲトンも変幻自在!伝統に則る、無邪気な革新者

どうも。

それではお待たせしました。ライブ評いきましょう。

はい。ロザリア。僕のブログを以前からお読みの人でしたら、今年の3〜4月に僕がいかに騒いだか、覚えていらっしゃる方も少なくないかと思います。そのアルバム、今年のベスト作候補ですけど、「Motomami」これを引っさげてのツアーを、今彼女は展開しています。

このツアーは彼女の母国スペインで7月からはじまりまして、先週のメキシコ公園から南米ツアーが始まってます。ということで今回のサンパウロの公演はラッキーにもかなり早い方だったんですけどね。

 では、早速いきましょう。

 今回のライブですが、会場となったのはエスパッソUNIMEDという会場。前はエスパッソ・ダス・アメリカスといって、前のブログの時にライブ評よく書いてましたね。ニック・ケイヴ&ザ・バッドシーズの2018年のライブがここでした。

この会場、市内のライブハウスで最大規模のとこでして、8000人入るんですが、ロザリアはここ売り切ってます。やはり南米で彼女みたいなスペイン語圏のアーティスト、有利です。というか、最初実は僕のうちから近い4000人規模の会場だったんですけど、それが2時間で売り切れたのでこの会場に急遽差し替えてチケット追加で売ってました。

 このライブの日は夜の9時30分開演だったんですけど、もうぎゅうぎゅうの入りでして。集まった人は、まあアジア系は僕だけでしたね。たしかにラテンっぽい血筋の人多かった気もしますが、それ以上に目立っていたのはゲイですね。至る所で、今冬で寒いのにタンクトップ率高かったですからね。それでマスターシュ(口ひげ)生やすタイプの。あと、女性の比率も高かったですね。

 ショウの方は9時50分からバイクの「ブーン、ブーン」って音で煽る形ではじまって、ライトがついたときそこに

ロザリア登場ですよ!この日は、ちょっと冬で寒かったこともあるんですけど、セーター状の赤のミニスカのドレス。髪は二つわけにして三つ編みにしてました。

 ステージには演奏者はなく、10人ほどいたバックダンサーと彼女だけだったんですけど、これがもう完全にファッション・ショーのランウェイっみたいになってまして、なにもなくがらんどうなステージの上をシンプルなハイファッションで着飾った無表情なオール男性モデルがただ無表情に踊るだけなんですね。しかも、無駄に力まずスタイリッシュに。ラテン系の他のコンサートにはない、ハイ・アートなイメージでしたね。

 ただ、ロザリアはもうのっけから爆発です。アルバム「Motomami」同様、最初はきっぷのいいラップナンバー「Saoko」で挑発するんですけど、もうこの時点で僕の周囲、歌詞の最初から最後まで、バカでかい声で大合唱ですよ。ロザリアの声がかき消されそうなくらいに。こういう光景、ブラジルのライブでは普通と言えば普通なんですけど、とはいえやはり、彼女がブラジルにやってくるのがいかに待たれたものだったかは如実に物語っていたとは思いましたね。

 序盤は「Motomami」の前半の曲で主に畳み掛けるんですけど、キレのいいラップと、ロザリア特有のキンキンに響く高音がシャープに力強く伸びる熱唱曲がひときわ大合唱になりましたね。「Candy」とか、アルバムだとウィーケンドとのデュエットになる「La Fama」とか。

 ヒップホップとヴォーカルを交互に巧みに出し入れできる時点でかなりのものなんですが、ダンスもうまいんですよ、彼女!ミニスカの中にショートパンツ履いてこの日は出演してたんですけど、尻振りダンスのスピードが速いのなんの!しかも良いうごきなんですよ。細かくチリチリ猛スピードで痙攣するみたいで。真似してやるだけでお尻の筋肉つりそうな感じでしたけどね(笑)。

 で、MCに入るとロザリア、ポルトガル語で挨拶してここで大歓声受けます。彼女はさらにコミュニケーションを円滑にしようと、エリス・レジーナのボサノバの名曲「Agua De marco(三月の水)」やジョアン・ジルベルトの「Voce Vai Ver」の一節を歌って、ブラジルのファンのハートを掌握してましたね。やっぱ、ボサノバってこういうときに効きます。

 そして、アルバム未収録の弾き語り曲の「Dolerme」や今回のアルバムで唯一のフラメンコ曲の「Bulerias」になると、これまで散々踊ってたのとは一転、腹の底から押し上げられる、集中力抜群の圧巻の歌声で緊迫感とともにオーディエンスをひきつけ、息を飲ませた後に最後に「ウォーッ!」の大歓声を誘います。

それが終わるとまたダンス・モードに戻るわけなんですけど、今度は自分の曲だけじゃなくて、フィーチャリング・ラッパーやシンガーとして参加した曲を披露。今をときめくバッドバニーとの「La Noche De Anoche」や、この人のことは予習するまで知らなかったんですけど、ドミニカのトキスチャと言う女性ラッパーと共演した「Linda」という曲を披露したりします。

 そして、ピアノに向かって、これまでやってた三つ編みを解いてワイルドなウェイヴィー・ロングヘアになった状態で、「Motomami」内の渾身のバラード、その名も「HENTAI」を大熱唱。ここも一つの大きな見せ場になります。

 そして、またしてもフラメンコに戻って、2018年のセカンド・アルバムの「Pienso En Tu Mira」、そして、まだ正調のどフラメンコシンガーだったファースト・アルバムから「De Plata」を披露するんですけど、このあたりは内にとぐろを巻くようなサイケデリアがありまして、ロザリアは目をつぶって集中力を極限まで高めて、この日の最大音量の声で、フラメンコ特有の言葉にならないビブラートを振り絞ります。もう、これが圧巻でね!彼女、ヒップホップでも、レゲトンでも、ポップでもなんでもこなせはするんですけど、常に戻っていける基本がここにあるんですよね。そして、この基本で培った声や肉感的なエネルギーでコンテンポラリー・ミュージックに対応させてるんですよね。

なんでしょうね。伝統を極めるがゆえに、逆説的に革新的なこともそこで得た経験値をいかすことで可能にできるというか。僕にはそんな風に見えましたね。そして、この基礎がしっかりある限り、何やろうが軸ががっちりしてぶれない。これはやっぱり大したものだなあと感心することしきりでしたね。

 そして、そうかと思ったら、トラヴィス・スコットと共演したトラップ・ナンバーの「TKN」や、あのウィーケンドの特大ヒット曲「Bliding Lights」のリミックスに彼女が参加した時のヴァージョン披露と、今度は急に外向きな表現に戻り、現在、全世界中で大ヒット中の彼女の最新シングル、北半球ではさしずめサマー・アンセムの「Despecha」で大団円。このあたりはダンサーの動きも激しくなり、ロザリアがダンサーの背中の上で馬乗りになったり、ダンサー10人がかりで神輿にされたり、見せ方もかなり凝ったものになりましたね。そして2019年のレゲトン・アーティスト、Jバルヴィンとの「Con Altura」で一旦終了。こういうレゲトン曲はブラジルでも知名度があるので、客演であろうがやっぱりキラーチューンになっちゃうんだなと、改めて痛感もしましたね。

 そしてアンコールは、この日最も待たれたもののひとつですね、「Chicken Teriyaki」のラップで威勢良くタンカを切った後、大バラードの「Sakura」で戻して、最後は短く「Cuuute」でもう一回イケイケに攻め上げて終了。曲は全部で33曲でしたが、100分くらいの長さに収まりました。

 ヒップホップ、レゲトンからフラメンコ。他にも、ラテン・ミュージックの雑多なスタイルをかきまぜるだけかき混ぜた、まさに「Motomami」で展開した世界をやりきった感じでしたね。ただ、それをロザリアがさして特別なこととも思わずに、「それが私にとっての普通」とばかりに、フラメンコで培った圧倒的な音楽的才能を、今の若い人にアピールするタイプの音楽でも陽気(だいたい、ノリでHENTAIとかTERIYAKIを口走ってしまうんですから、笑)にかつアヴァンギャルドに発展させることが出来る様は、もう見ていて痛快すぎて顔に笑いしか浮かんでこなかったですね。

 あと、膨大な曲数を細切れにしていろいろ詰め込むスタイルも、DJカルチャー的な感覚で興味深かったですね。これもひとつの今時のショウの見せ方ですね。ただ、ロザリアくらい歌の上手い人なら、じっくり聞かせるものはもう少しゆったり聞かせても良いのかなとは思いましたけど、なんでもできちゃう人がゆえの贅沢な悩みだと思います。

 彼女は南米ツアー終わったら、9月から全米、11月からヨーロッパ・ツアーです。日本公演があるとしたら必然的に来年ですね。「ラテン・ミュージックは日本になじみがないから、なかなか呼びにくい」と思う人もいるかもしれませんが、ここまで痛快にジャンル横断できる才能、音楽的な背景がそこまでわからなくても、もう見るだけですごいですから、もう夏フェスに呼ぶしかないですね。それこそ今年のサマーソニックでのマネスキンが、ただ見てるだけで、その内包する圧倒的なオーラとパワーだけでオーディエンス持って行ったのと同様のこと、彼女だったら絶対できると僕は信じてますけどね。







































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