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ロレッタ・リン逝く 今の人も必聴!時代を先取った、カントリー界異端のストロング・クイーン

どうも。

本当はデペッシュ・モードの、悲劇を乗り越えた再始動の発表会についてやろうかとも思ったんですけど、訃報が入ってしまったので、そちらを優先します。

ロレッタ・リンが亡くなってしまいました。すごく長生きされていたんですが、90歳でこの世を去ってしまいました。

 ロレッタ・リンってもしかして名前は聞いたことある人もいるのではないかと思います。比較的若めのロック・ファンの方には

2004年に、それこそ「Elephant」を出した翌年にジャック・ホワイトがかねてから大ファンだった彼女のアルバムをプロデュース。ステージでの共演もこうやってやっていました。

このとき72歳だったんですけど、キーンと通る高い声、もう伝統的なカントリーの見本中の見本の美声ですよ。

 あと映画ファンの方なら

1980年、ロレッタのでに映画「Coal Miners Daughter」、邦題「歌えロレッタ!愛のために」でも有名になりました。この映画、日本のDVDレンタルでも比較的よく置かれていた映画だったんですけど、評判もすごく高い映画でして、その年のオスカーの作品賞にノミネート。ロレッタ役を務めたシシー・スペイセックが主演女優賞を受賞しています。

 もう、その一生が今から40年近くも前、だから彼女がまだ40代の時代に電気映画されるくらい、カントリーの世界では、もう特別な存在だったんですよね。「男はジョニー・キャッシュ、女はロレッタ・リン」といっても過言ではないのではないか、という気もします。

 僕も、その前から名前は知ってたんですけど、やっぱりジャックのプロデュースで存在が気になって、ベスト盤なんかも輸入で買って聴いてたし、2010年代に入って伝記映画の方も見て楽しみましたね。

ただ、本格的に掘り下げたのはサブスクの時代になってからですね。2016年くらい。彼女もすごくサブスクの充実度がよく、掘り下げやすい状況だったので、1曲1曲すごく丁寧に聞いて行ったんですよ。そうしたら

歌詞がめっちゃくちゃ、おもしろい!


これが、すごい気づきでしたね。しかもすごくユーモアに富んでて笑えて、かつ、カントリーの女性ながら、社会に先んじたメッセージまで発してるんですよ!

ちょっと、そういう曲の数々を紹介しますね。

ロレッタはデビューそのものは早くなく、知られ出すのは1960年くらい、20代後半ですね。映画でも描かれるんですけど、その頃に当時のカントリーの伝説的女王だった同年齢のパッツィ・クラインと友人になりますが、彼女が1963年に飛行機事故で他界してしまうんですね。

 そんな彼女がヒットを続々と飛ばし始めるのは1966年からのことです。

https://www.youtube.com/watch?v=8_wwP8UZR1o

https://www.youtube.com/watch?v=OQz5Ligx65A

まず、この2曲ですね。「You Aint Woman Enough」は、夫の浮気相手の女性に対して「あんたなんて女としての魅力、イマイチね!」とタンカ切る曲です。「Dear Uncle Sam」は、これポリティカル・ソングでして、ベトナム戦争の兵士として夫が犠牲になってしまった女性の悲しみを歌った曲です。

 決定的なブレイクとなったのが

https://www.youtube.com/watch?v=YgylOni0JSI

このあたりですね。「Dont Come Home Drinking」「呑んでくるくらいなら帰ってくるな!」という曲。「Fist City」も面白い曲で、「羽伸ばして隣町でも行ってるんでしょ?帰ってきたらアタシの拳が待ってるよ」という曲です。まあ、いうならば「しばくかかあ天下」のイメージです(笑)。

 60年代終わりから70年代のあいだは何だしてもカントリーの世界ではビッグヒットしてたんですが、歌の方も冴えてまして

https://www.youtube.com/watch?v=U3kZcmxuD8M

1973年の「Rated X」は、この当時からアメリカで社会問題化していた離婚問題についての曲で「もうダンナから過去の女なんて思われたら、さっさと別れなきゃ」と言う曲です。

 そして、ポピュラー・カルチャー的におそらく彼女の一番有名な曲が1975年の「The Pill」。これは田舎の女性の多産問題を歌った曲です。これは、妊娠したくもないのに男の要望で一方的に子沢山にされた女性が「でも、もうこれからは違うの。だって、避妊用のピルがあるから」という曲です。これなんかは、今の世の中でも通用しそうな社会的メッセージですよね。

 このあたりの曲は当時、放送禁止になってたそうですよ。

https://www.youtube.com/watch?v=uhZn7Wdvdx0

そして、1980年に前述の映画の公開ですよ。シシーの隣に映ってるのは若き日のトミー・リー・ジョーンズなんですが、ロレッタの夫、オリヴァーを演じてます。

この夫というのが、ロレッタが16の時に結婚して、音楽の才能がありながらもそれをなかなか認めない、超関白野郎だったんですが、それをいったん認めて彼女が外で歌い始めてみるみるいちに成功を始めると一転して献身的なマネージャーになるんですね。

 で、この夫が話が進めば面白いやつでして、ロレッタを喜ばせようと思って、内緒で家買ってプレゼントするとか、そういうこと繰り返すんですね。そのたび、「頼んでもないのに、一言言ってよ!」というのが話のオチになっていきます(笑)。この旦那とは、彼が1996年に死別するまで夫婦でした。

80年代以降はちょっと忘れられていた感じになっていたロレッタですが、意外なファンが現れます。それがホワイト・ストライプス。シングルのB面で前述の「Rated X」のカバーを披露していたほどです。

ジャック・ホワイトのロレッタへの思いが実を結んだのが

このアルバム「Van Lear Rose」。これ、この当時、すごく大絶賛されたアルバムです。日本盤は残念ながら出ませんでしたけど、彼女のアルバムとしては全米チャート、この時点での最高位の24位を記録します。

その12年後の2016年、ロレッタは84歳になっていましたが、この「Full Circle」というアルバムを発表。これが全米19位とさらに記録更新。このあと、2枚アルバムを出して、最新作は去年出てます。

87歳のステージはしんどそうですけど、いざマイク持つと美声¥を轟かせるものでした。

 すごい若さですよね。彼女は昔のカントリー・ファッションを確立した人でもあり、盛りヘアと、スカートのでかいドレスがトレードマークで、それをずっと通した人でもあります。ある意味、スティーヴィー・ニックスあたりの元祖でもあるんですよね。

 彼女はすごく進んだ人でありながら、彼女自身は「炭鉱夫の娘」「田舎の女」と思い込んでいて「都会の女性の主張みたい」とフェミニズムを嫌ってたらしいんですが、読んだところによると、後年は自分が無意識にその原動力のひとつになっていたことも自覚していたようです。

 彼女のことはですね、彼女のアルバム、60年代のものですけど、それを「ロックな女性のアルバム100枚」という、僕のマガジンの中でも選んでますので、そちらにも注目してもらえると嬉しいです。

 なくなったのは残念ですが、その先駆性はレジェンドとして伝えられていくと確信しています。RIP

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