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全オリジナル・アルバム FromワーストToベスト(第48回)エアロスミス 15~1位

どうも。

今日は3ヶ月ぶりにこの企画いきましょう。FromワーストToベスト。今回のネタはこちらです!

はい。これは悲しいニュースだったんですけど、つい先日、スティーヴン・タイラーの喉の回復が不可能との判断で、さよならワールド・ツアーが中止となり、実質引退となりましたエアロスミス。彼らを特集してみたいと思います。

僕、あんまり普段、彼らについて語っている印象、ないんじゃないかと思われている方が少なくないような気もしますが、とんでもありません。大学の時は上から数えた方が早いくらいに大好きだったバンドなんです。ただ、そういうバンドであったが故にその反動で逆に厳しくなった、という方が正しいかもしれません。エアロをとっかかりにして聞くようになった音楽も実は少なくない。今回のランキングでは、そういうことが垣間見れるのではないかなと思っています。

早速ワーストからいきましょう。

15.Music From Another Dimension (2012 US#5 UK#14)

ワースト1位となったのは目下のところの最新作「Music From Another Dimension」。これはもう、思い出すだけで悲しい作品ですね。あの時点で11年ぶりのアルバムだったんですけど、ある時期からついたサウンドの変な癖、例えばそれは大きくかけすぎたスネアのリバーブとか、必要以上に多すぎるスティーヴンのビートルズ風のナーナナー・コーラスとか、パターン化したバラードのイントロからAメロの入り方とか、僕としてはまさにそうしたものを根本的に直して欲しいのにそこがそのままだった上に、演奏に切れと覇気が感じられなかったんですよね。そこがもう、似たタイプのバンドでもAC/DCとは全く違っていて。なんか、ブランクのあった元世界チャンピオンのボクサーがカムバック戦やってボコボコにサンドバック状態でKO負けした試合を見るような、そんな寂しさを感じてしまいましたね。

14.Honkin' On Bobo (2004 US#5 UK#28)

ワースト2が「Honkin' On Bobo」。現状のラスト作の7年前に出た作品。これもいい思い出がありません。2004年にカバー・アルバムと聞いて正直ピンときてなかったんですけど、ほのかな希望として、それがこの当時隆盛だったホワイト・ストライプスとかハイヴスみたいなガレージ・ロックのリバイバルに近い感触のやつだったらいいなと思ってたんですね。それはエアロがもともとはそうしたロックンロールの源流であるブルース色の強い60sのブリティッシュ・ビートに強い影響を受けたバンドだから。僕もエアロ経由で勉強したんですよ。曲目を見たらヴァン・モリソンのゼムとかあったんですけど、ブリティッシュ・ビートのバンドがさらに手本としたマディ・ウォーターズとかリトル・ウォルターみたいなチェス・レコードのエレクトリック・ブルースのカバーが多いから「おっ」と思って聞いたら、サウンドがそういうゴツゴツした感覚に戻るどころか、その数作前から耳にしている大仰で締まりのないエアロ・サウンドのまんまで「いや、そっちじゃなくて・・・」と思ったんですよねえ。「これ、新作の曲が書けないから代わりに作ったろ?」と当時思ったんですけど、その後、スティーヴンのステージでの不可解な怪我の連続やドラッグのリハビリなどを経て、新作製作が遅れに遅れたのを見るに、そうだったんだろうねと思ってた次第でした。

13.Just Push Play (2001 US#2 UK#7)

ワースト3は「Just Push Play」。このあたりから欧米では微妙な感じになってましたけど、日本はこの頃、人気すごくてですね。2001年の日本の洋楽でこれが50万枚以上のセールスで一番売れたんですよね。まあ、これの3年ほど前の、あのアルマゲドンのバラードのヒット効果だったとは思うのですが、個人的にあの曲で完全に心が離れていた上に、ロックの王者扱いする国が日本以外には見えにくくなっていたのでファンとしては複雑な思いで見てました。このアルバムはスタジオ内でのエフェクトとか小細工に走りすぎて彼らの一番の持ち味だったライブ感がかなり損なわれてしまい、悪い意味でポップな曲が目立ってましたね。共作者とプロデュースも兼ねたマーティ・フレデリクセンと僕の好みが合わなかったところもあった気もしますけど。1曲だけ、シングルにもなってヒットした「Jaded」は、ちょっとスマッシング・パンプキンズっぽいというかシューゲーザーっぽいリフを使ったりして「おっ!」と思ったんですけど、その他の曲が印象に残りにくくて前2作の範疇から出るものがないし。このアルバムのツアーも行ったんですけど、ここからの曲があんまり多くなく、やたら古い曲がセットリストに多かったのも違和感あったんですよね。

12.Done With Mirrors (1985 US#36)

12位は「ダン・ウィズ・ミラーズ」。これはエアロが80年代に再出発をしたアルバムで、一部人気がある作品ではあります。ただ、本人たち的にはドラッグがやめられない中ボロボロになりながら作った、自己採点的に評価の高くない作品です。僕もこれ、当時もそうでその後もずっと乗れない作品だったんですけど、今回改めて聞いてみてその理由がわかりました。当時に打ち出してた宣伝と実際にやってることが噛み合ってなかったんですよね。宣伝だと「ジョー・ペリーが戻ってきて、昔のラフで荒削りのエアロが戻ってきた!」みたいな感じだったんですけど、ドラム聞くといわゆるあの当時のエイティーズのはやりの、ハイハット抜いてスネアだけやたら強く押し出した・トッタン、トッタンっていうタメのないリズムで。ギター自体も別に粗っぽくもなかったし。あと、肝心なスティーヴンの曲も弱くて「熱く語れ」以外に頭に残る曲が書けてなかったし。「ジョーとブラッドが戻ってきて嬉しい」作品ではあるんですけど、この時点ではスタート地点に戻っただけでしたね。

11.Rock In A Hard Place (1982 US#32)

11位は「Rock In A Hard Place」。邦題がこれすごいんですよ。「美獣乱舞」。これはこのバンドからジョー・ペリー、ブラッド・ウィットフォードのギターの二枚看板が抜けた時期に作られたアルバムです。代わりを努めたのはジミー・クレスポとリック・デュフェイ。これ以外で名前を聞いたことがありません。この件があるためにエアロ・ファンからは「そんなものはエアロじゃない」として忌まわしい扱いをされている作品です。僕は実はこれが最初に知ったエアロ作品なんですけど1曲だけ聞き覚えがあっただけでヒットもしなかったから素通りで、その後も邪道扱いされてたから積極的には聴いてきてはいませんでした。ただ、大学の時にアルバム全部揃える意識で買ってると避けようがなかったので買って聴いたら悪いアルバムじゃないんですよね、これ。たしかにジョーのよい意味適当でルースなプレイよりはクレスポ、だいぶ腕っぷしの強い弾き方はしましたけど、曲調そのものはほとんど変わってないんですよ。というか、ジョーがいなくなった分、スティーブンが頑張って曲作った印象で、「Jailbait」とか「Lightning Strikes」みたいなシングル向きのキャッチーな曲あるし、ジャズのスタンダードの「Cry Me A River」みたいな気の効いたアルバムの中の良いアクセントもあるし、出来としては悪くありません。ただ、あの頃のKissもチープ・トリックもハートといった70s後半の人気バンド、みんなその被害にあってるんですけど、むしろエイティーズの、後で振り替えればダサいトレンドに乗らなかったことで流行に遅れた扱いをされたんですよね。むしろ、ジョーたちがいなかったことより、そちらの方での風評被害の方が大きかったんじゃないかなと、今にして思います。

10.Nine Lives (1997 US#1 UK#4)

10位は「Nine Lives」。1997年のアルバムです。今から考えたらバリバリのオルタナの時代ですけど、エアロってその中に混じっても1位取れてた唯一のバンドだったんですよね。今、そういう風に思われてるかわからないですけど、その印象が揺らぎ始めたのが実はこのアルバムです。アメリカのファンとかワーストに選ぶ例、少なくないです。僕はその印象ってむしろ、このアルバムの翌年に流行った「I Don't Wanna Miss A Thing」と混同してる人、絶対多いせいだと思うんですけど、このアルバム、曲を抜粋すればそんなに悪いアルバムじゃないです。シングルになった「Falling In Love Is Hard On The  Knees」や次のシングルの「Hole In My Soul」は彼らの60sソウル趣味が出た技あり曲だし、「Taste Of India」のサイケ風味とか「Full Circle」のカントリー・テイストあたりは「Pump」のときの渋い趣味性を感じたし、スピードナンバーでおそらく最後に良い曲かもしれないタイトル曲でもそれはしかりでしたね。そこだけだったらむしろこの前作より好きなくらいです。ただ、後の曲がちょっとパターンに沿った埋め合わせみたいでしかも収録曲が無駄に多いからそれが目立ったんですよね。結果、アルバムを代表したのが変化球っぽい「Pink」、まあ、これはたしかにこれまでにないパターンの曲ではあったんですけど、これになってしまった予想外の展開も生みましたね。

9.Night In The Ruts (1979 US#14)

9位は「Night In The Ruts」。このアルバムは70年代末の混乱の時期に作られ、ジョーがあまり参加せず脱退したことで、ファンが積極的に語ろうとはしなかったアルバムですね。本人たちも今一つ集中力がなかったのか、なんか未完成のまま投げ出されたみたいな中途半端な感じもありはします。ただ、断片的にはこれ、すごいかっこいい瞬間も少なくないんですよね、これ。特にA面に関しては歴代でもトップクラスにかっこいいです。「No Surprise 」「Chiquita」の二曲は彼らのライブ・レパートリーに加わってないのが惜しいくらいの決めリフがあるファストなロックンロールだし、「Cheese Cake」も同様のカッコよさ。その間に60sの伝説のガールグルーブ、シャングリラズのロッカ・バラード「Remember (Walking In The Sand)」のマニアックな渋いカバーが入る。さらにB面でも、通算3曲目、いみじくもクラプトン、ベック、ペイジいずれの時期もカバーしたことになるヤードバーズの「Think About It」もあって。ただB面はその前後がとっちらかってて、このあたりに未完成感が残るんですけど、そこを差し引いてもカッコいいです。ドラッグが名盤を潰してしまった一つの例ですが、そのときでも素材は一級品だったことはわかる一作です。

 8.Get A Grip (1993 US#1 UK#2)

8位は「Get A Grip」。世間一般にはこれが一番売れたイメージあるんじゃないかな。特に日本では。グランジ大全盛でかのガンズでさえその煽り食らったのに、その影響が少なくともこの時点では全くなかったですからね。それで尊敬してたところも当時の僕にはありました。うまかったのは、決して社会的なバンドではなかったんですけど、ベルリンの壁崩壊から湾岸戦争、さらにはLA暴動にアメリカ国内で噴出する社会問題での世の動乱を彼らなりにとらえた「Livin On The Edge」みたいな曲をリードトラックに持ってこれたのはすごく賢かったなと今にしてみれば思います。アルバムそのものも、大ヒット作となって、長老としてシーンのキングに立っていたタイミングにはふさわしいものを作ったと思います。「Pumpの大拡張盤」みたいなイメージでどっしりとしたもの作ってきたなという印象でした。ただ、今振り替えると、そこが今日のイメージ下げる理由にもなってるんですよね。スネアの音は過剰にうるさくなって、表面は前作と同じようなタイプの曲が多いのになんか大仰な感じがするし、「Livin」でも聴かれたビートルズ譲りのナーナナー・ハーモニーがここから過剰になっていくし、後はバラード!「Crying」「Crazy」「Amazing」と三曲もバラードがシングルヒットしてしまいます。3曲とも後の「I Don't Wanna Miss A Thing」みたいなお涙頂戴的な嫌らしさはなくあくまでロックバンドの自然なミディアム・スローではあるから許容の範囲ではあったんですけど、でもこれも、今日のSpotifyで顕著な「エアロと言えばバラード」のイメージをつけてしまった決断に結果的になってますね。彼らのストリームでもっとも人気の10曲のうち今や6曲がバラード。そのうち三つを占めるのがこの3曲なので。

 7.Draw The Line (1977 US#11)

7位は「ドロー・ザ・ライン」。このアルバムは70sのリアルタイムのエアロファンが好きな印象が強かったですね。90年に武道館に見に行った時にレザーか袖切ったGジャン着たストーンズ・ファンもかぶってるタイプのお兄さんたち。タイトル曲なんてものすごく盛り上がりましたからね。それが、その10年後くらいに見に行った時は、その曲の盛り上がりが正直いまひとつで他の収録曲をプレイすることもなかったから、そのくらいからあんまり語られるアルバムではなくなった印象がありますね。ただ、これ、かなりいいアルバムだし、70sのエアロ最大の意欲作ですよ。スティーヴンがすごくビートルズになりたかったのかな、というか「リボルバー」あたりの手法が目立つんですよね。それこそ「Critical Math」という曲はテープの逆回転使ってまんま「リボルバー」でのジョン・レノンの曲みたいだったし、「Hand That Feeds」は、こののちにスティーヴンのキャッチフレーズになる、ビートルズのナーナーナー・コーラス使った最初の曲です。さらに「Kings & Queens」は70sのイギリスのハードロック・バンドみたいな中世のファンタジーを意識した、これまで直線的楽曲で勝負してきたスケール感の大きな1曲になっていたり。そうかと思えば、「Milk Cow Blues」はキンクスの「Kink Kontroversy」のヴァージョンをファンキーに肉付けした力強さを表現し、ジョー初のヴォーカル「Bright Light Flight」は当時ぼっ興のさなかにあったパンクロックを思わせるものだったり。いろいろやりたすぎて方向性はややとっちらかって、それがバンド内対立も呼ぶ原因にはなったんですけど、意欲は買いたい1枚ではあります。


6.Get Your Wings (1974 US#74)

6位は「Get Your Wings」。セカンドアルバムで邦題「飛べエアロスミス」で、日本だとこれが最初に出たアルバムだった気がします。その当時、さすがに4歳なのでリアルタイムでは知る由も無いですけど。ここから先の作品に関しては、もう文句無いというか「クラシック・エアロ」と呼んで遜色無い作品ばかりですよね。このアルバムは、僕がエアロ好きになり始めた80sの後半の印象だとそんなに目立ったアルバムじゃなかったんですよね。ハイライトといえば、B面の「ブギウギ列車夜行便」、じゃなかった(笑)、ヤードバーズの、映画「欲望BLOW UP」での演奏シーンであまりにも有名な「Train Kept A Rolling」。あれを自分の持ち歌のようにライブでずっと演奏し続けている、という感じでしたね。あと、「ファンキー・エアロ」の方がともいうべき「Same Old Song And Dance」。あれはベスト盤に入ってる曲だったし、ライブでも欠かさずやってましたけどね。ただ、後年になるに従って「Lord Of The Tights」とか、「Season Of Wither」とかやる頻度上がっていきましたね。本人たち、好きなんだと思います。おそらく彼らとしては、ファーストの録音があまりにもチープな感じすぎて、演奏力もスティーヴンの歌唱力もそののちに比べたら声が出来上がってない状態だったところから、黄金期を支えたジャック・ダグラスのプロデュースでがっしりとヘヴィにグレードアップしたことで得た手応えが大きかったのではないかと推測しています。

5.Permanent Vacation (1987 US#11 UK#37)

5位は「Permanent Vacation」。これもおなじみのアルバムですね。ちょうどボン・ジョヴィやガンズ&ローゼズの人気でヘヴィ・メタル・ブームだと言われていた時期に、その親玉格として当時の10代、僕もそうでしたけど、紹介され、それが見事にドンピシャにあたり人気が完全復活したアルバムですね。あの当時の僕はイキってまして(笑)、「Permanent Vacation」はデスモンド・チャイルドみたいなポップなソングライターに助けてもらって売れたんだ。本当の復活はPumpからだ」みたいな偉そうなこと言ってたんですけど(笑)、今聴くとそんなにめちゃくちゃポップなことをしていたわけでもなく、「Done With Mirrors」で雑になっていたソングライティングを補正した感じの印象を僕は聞き直して受けましたね。そして「Pump」でさらに発展させた、実はこれこそが復活エアロの隠し味、60sのモータウンとかブリティッシュ・ビートのエッセンスがもうすでにここで芽生えてるんですよね。シングルヒットした「Dude (Looks Like A Lady)」ってそっくりな曲が60s末のモータウンにあるんですよ。エドウィン・スターの「25 Miles」ってファンク初期の曲なんですけど。エアロはこの前年にランDMCの「Walk This Way」のヒップホップ・カバーで復活したんですけど、そのままリック・ルービンとアルバム制作してポシャったんですけど、ヒントは得たんじゃないかな。プロデュース担当のブルース・フェアバーンも、ジョーイ・クレイマーのタメの効いた生っぽいドラムのグルーヴはしっかり活かして(Done With Mirrorsはここがダメだった)ましたからね。あとビートルズの「Help」の時期のロックンロール「I'm Down」もカバーして。これもポール・マッカートニーのリトル・リチャード風のヴォーカルが際立った曲だから、欲しいエッセンスとしては筋通ってた気がします。今の方が発見多いんですよね。ただ、バラードヒットしたお涙頂戴の「Angel」はこの当時から今まで大嫌いです(笑)。のちの「I Don't Wanna Miss A Thing」につながる爆弾も抱えていたわけです。

4.Aerosmith (1973 US#21)

4位は1973年リリースのファースト・アルバム。邦題は「野獣生誕」。この時の彼らに邦題は欠かせません(笑)。これ、かの渾身の名バラード「Dream On」と、70sのアメリカのハードロックの定番アンセムの「Mama Kin」の2曲の名曲がある割には、今日、そこまでアルバムとして名盤扱いを受けていません。そこんとこ不思議なんですけど、それはおそらく「Get Your Wings」のとこでも書いたように、本人たち的に照れ臭いところがあるからのような気がしますね。演奏も録音もかなり劣悪ですからね。このアルバム、先の2曲だけじゃなく「Make It」とか「Somebody」とか曲のクオリティ自体は高いから、レコーディングさえうまくいってりゃ名盤になってた気もするんですけどね。もっともパンクロック通った耳からすると、むしろこれくらいにラフな方がむしろカッコよかったりするんですけどね。折しも、彼らがデビューした当時の東海岸ってパンクの源流と言われたニューヨーク・ドールズが圧倒的に批評家に人気で、エアロはその二番煎じ扱いを受けて低く見られていた、という話を聞いています。Kissの前身のウィックド・レスターもそんな感じだったような気がします。僕は、当時の東海岸にグラムのシーンがあって、そこからの一部のエッセンスがパンクに流れていったのだと独自解釈していました。あと、所属レーベルのコロンビアに目を移すと、1973年ってエアロの他にブルース・スプリングスティーンとビリー・ジョエルもデビューしてるんですよね。そういう人たちが皆、明日を夢見るスターだったことを考えるとすごい時代だったんだなとも思います。あと、ストーンズとやたら比較されつつ実はあんまりストーンズっぽいことをやっていないエアロがここで、ローリング・ストーンズがファーストのラストにカバーしたルーファス・トーマスの「Walking The Dog」を同じく1stのラストにカバーしています。


3.Toys In The Attic (1975 US#11)

3位は「Toys In The Attic」。邦題「闇夜のヘヴィ・ロック」。これはエアロスミスがアメリカでブレイクするきっかけとなったサード・アルバムで、1975年に全米11位まで上がるヒットになっています。これがKissの「Alive」でのブレイクやクイーンの「オペラ座の夜」のヒットと時期的にも重なってて。この時のこの3バンドって、しかもリリースペースが早かったり、少し前の曲が後からヒットしたりで順番がわかりにくくもなる傾向もあって。そういうことから3つとも比べられて日本では「ロック御三家」として紹介されるようにもなります。そしてアメリカでは本作を最高傑作とするメディアがかなり多いです。それはこのバンドにとって最初のヒット曲である「Sweet Emotion」があり、のちのヒップホップ、ラップ・ロックに多大な影響を与えた「Walk This Way」の二大アンセムがあることが大きいんですけど、それ以上にエアロのアイデンティティを決定づけた意味で大きいんだと思います。二大ヒットに見られるファンキーなグルーヴ、タイトル曲でのスピードに乗ったロックンロール、ブラック・サバス的にヘヴィなリフで押す「Round And Round」、時にちょいと投げてくる変化球的持ち味のスウィング・ジャズ調の「Big Ten Inch」、そしてストリングスを配したバラードの「You See Me Crying」。こういう多彩なエッセンスがこの時期で揃ってたんですよね。バラードもわざとらしくなくて心こもった自然発生的な感じで良かったんですよね。この時点だったら、同じような音楽バックボーンにしてたバンドでもAC/DCよりはまだ上だったんじゃないかな。将来へのポテンシャルをすごく感じさせるアルバムだったと思いますね。

2.Rocks (1976 US#3)

2位は「Rocks」。トップ3に関しては何が1位になっても良かったんですけどね。これも、最近はToysに1位を譲ってるパターンを多く見はしますが、それでも一頃までは圧倒的にエアロの最高傑作認知でしたし、日本だといまだにそうなんじゃないかな。僕も大学の時にそう教え込まれて聴いてきたものです。これはToysのジワジワと下から上がってのロングヒットを受けたあと、ファンの待望感の中、リリースされたアルバム。もちろん期待値は最初から高く、それが全米3位という数字にも反映されてます。このアルバムの場合、多彩さで比べると前作の方が上です。ただ、ファンが期待するロックンロールの闇雲なエネルギーならこちらの方に分がありますね。それはもう1曲目の「Back In The Saddle」のヘヴィなドライブ感からしてそうだし、当時流行のディスコとファンクに対応したこれも彼らしいねちっこい「Last Child」 、豪快なファスト・チューンの「Rats In The Cellar」。この冒頭3曲のアゲアゲ展開だけでかなり持っていかれます。B面でもストーンズ調のロックンロールの「Sick As A Dog」にイントロのスネアの畳み掛けから煽る「Lick And A Promise」、そしてラスト、これはポール・マッカートニーのウイングス時代を彷彿させるピアノ・バラードの「Home Tonight」まで、勢いとバランスが取れた濃密な短時間燃焼のアルバムですね。この爽快感こそがエアロスミスだし、これが戻ってくることを待ってたんですけどねえ。

1.Pump (1989 US#5 UK#3)

そして1位は「Pump」です。エアロスミスの場合、「やはり70sこそが至高」と考える人が多く、「Pump」は「後期の最高傑作」的な言われ方をされることが多かったです。それで全体で3番目か4番目みたいな。でも、このアルバムで復活どころかロック界の頂点に立っていなければ、今ごろはもっと「懐かしのバンド」扱いになっていただろうし、今Spotifyに2200万人くらいのマンスリーリスナーが500万とか700万くらいまで落ちてたんじゃないかな。あと、僕はこの企画には必ず英米でのチャート最高位を記すんですけど見てください。70sまでって、実はエアロの人気、アメリカと日本で強くてヨーロッパ、いまひとつだったんですよ。この「Pump」が大ヒットしたことによって世界的なバンドへと上り詰めることも可能になった。その客観的事実も僕は考慮されるべきだと思います。このアルバム、何が良いって、パワーと老獪さが共に備わったことですね。「Young Lust」「FINE」の冒頭の2曲での猪突猛進なロックンロールは、まだあの当時、40代のバンドで表現できてた人、少なかったので驚かれましたね。「驚異の40代」という言い方もされてましたから。そこに続けて「Love In An Elevator」での彼らお得意なねちっこい、いやらしい淫らなファンク。「Monkey On My Back」でスライド・ギターかました渋めのロックンロール挟んで、「Jenny's Got A Gun」。児童虐待をテーマにした社会問題に言及したこの曲は、いきおいパーティ・アンセムだらけとも揶揄された当時のメタルのイメージにも一石を投じエアロのイメージもあげました。当時までで最大のヒット曲にもなりましたしね。で、B面がこれ良いんです。「The Other Side」は前作「Permanent Vacation 」で見せたモータウン趣味の第二弾。これ、フォートップスの「Standing In The Shadow Of Love」って曲にそっくりなんです。「My Girl」は前作でのビートルズの「I'm Down」のカバーの自分たちヴァージョンですね。ここでスティーブンがナーナナーやるんですけど、これが「Draw The Line」の「Hand That Feeds」以来でしたね。この頃まではビートルズ・ハーモニー、かっこよかったんですよね。多用してくどくなっちゃいましたけど。そして、ラストには、彼らのバラードでもベストなものの一つ「What It Takes」。アイリッシュ・フォークに根差したオーガニックな渋い曲調の失恋ソング。こういう感じだといいし、こういう側面を見直されてほしいんですよね。大仰なバラード・イメージはごめんです。このアルバムは彼らの良質な部分がみんな詰め込まれた、本来評価されるべき姿のアルバムだと未だに思いますね。

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