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改訂版2010年代アルバム. 20~11位

どうも。

改訂版2010年代ベストアルバム、大詰めが近づいてきています。今日は20位から11位の発表。次のようになっております。

はい。では早速、20位から行きましょう。


20(10).Random Access Memories/Daft Punk (2013)

20位はダフト・パンク。解散を撤回しない限りはこれが最後となる2013年のアルバム「Random Access Memories 」。これは出た当時のウケがものすごく、遂には2014年2月に行われたグラミー賞でAOTY、最優秀アルバムまで受賞したほど。彼らの母国、フランスからしたら歴史的な快挙にもなりました。ただ、その後、「賞味期限が短かった」だの、「実はそんなに良くない」とかって声が国に関係なく聞こえて来るようにもなって評価下がってたんですけど、僕に関しては前回のトップ10から落ちてこそいますが、聞き直して思いましたが普遍的に素晴らしいアルバムですよ。人によっては、あのジョルジオ・モロダーのモノローグとか、70s初頭のソフト・ポップスの大家ポール・ウィリアムズによるイージー・リスニング張りの壮大なバラードとかいらないと思っているかもしれませんが、彼らのルーツそのものをエレクトロのアルバムという範疇を飛び越えて表現した大胆な試みだと思いますよ、あれ。さらにそんな自分の世界の体現者だと思われる、たとえばファレル・ウィリアムズだったりストロークスのジュリアン・カサブランカスだったり、さらにはディスコ全盛期のカッティング・ギターの名手としてのナイル・ロジャースだったりコラボのセンスも繰り出すポップソング、エレクトロのグルーヴとしても適材適所に光ってるわけじゃないですか。これまでも名作連発してきた彼らですけど、こと「楽曲」に関しては過去最高のアルバムだと思うんですけどねえ。今一度、聞き返してみることをおすすめします。

19(33).Push The Sky Away/Nick Cave & The Bad Seeds (2013)

19位はニック・ケイヴ&ザ・バッドシーズ。前回の時より14ランクアップしてますが、ただし前回はこのバンドの「Ghostin」というアルバムを13位にしてたんですね。あれが出たばかりの時に前回のランキングだったんですよね。あれはあのときの、2019年の年間2位でもあって。で今振り替えると、「興奮しすぎたな」と思い、今日、どっちが好きかとなった際にこっちの方が好きなので、こちらで一本化させていただきました。おそらく日本だとかなりの音楽マニアの方でも「年間ベストの時にいつも名前聞くんだけど、聴いたことないしどこからはいったらよいのかわからない」という方が結構いらっしゃると思う、というか実際にそういう人を何人か知ってもいます。たしかに名盤選にも80sや90sの名盤選でもギリギリくらいで掲載が見送られて、同世代のキュアーとかスミスとかと違って具体的に最高傑作のイメージわかないまま来て近年が最高潮だとたしかに戸惑うと思います。最高傑作に関しては指南することは別枠で可能なんですが、特にこのアルバム以降の3作はいずれも最高傑作に並びうるものではあるんですよ。ただ、個人的な見解を言わさせていただきますと、この後の二作、「Skelton Tree」(2016)と「Ghostin」というのは、ニックの亡くなった息子さんへの追悼アルバムなんですよね。作品の良い理由がそのことにされるのも、まあ、悪いことではないんですけどそれはときにすごくへヴィにも思えるし、あと、ニック一人の創作力によるものと誤解されかねないじゃないですか。やっぱり僕としては、バッドシーズという、バンマス的存在のウォーレン・エリスを中心とした有能なバンドと共にしっかり評価してほしいというか。2018年に運良く体験できたサンパウロ公演見てその思いがさらに強くなって。だとしたら、息子さんの件も関係なくバンド・アンサンブル色がもっとも濃い、かねてからファン人気も高いこのアルバムが初心者の方にもフラットに聴いていただける意味でも良いかと。そうでなくても「Jubilee Street 」なんて超名曲ですよ。

18(27).Be The Cowboy/Mitski (2018)

18位はミツキ。2018年の僕の年間ベストの2位だったことで2019年の前回のランキングの時点から順位高めではあったんですけど、それでもまだあの当時はその後みたいに英米のアルバム・チャートでトップ10に入ったりだとか、今年のように「My Love Mine All Mine」がSpotifyのグローバル・チャートでトップ狙えるほどの大ヒットを出すなどとは夢にも思ってなかったです。今やインディどころか世界の音楽ファンが存在に注目するようなときの人にまで成長しています。ただ、その人気の基礎を支えているのがこのアルバムの地味ながら息の長いロングヒットなんですよね。「Washing Machine Heart」の6億を筆頭に「Nobody」「Me And My Husband」「A Pearl」と、1億ストリーム越えてる曲が4曲も生まれてて。これ、本当に不思議なんですよ。いかに「サッドガールの女王」と称されているところで、彼女の曲、一般の売れ線でもなんでもないんですよ。しかも、この前までのアルバムだったらまだわかりやすいインディのギターロックなんですけど、このアルバム、曲の展開の予測のつかない極めて変種のサウンドですからね。で、昨年出た全編シンセポップのアルバムだとファンに不評でストリームが進まず、変種のインディ・フォーク、カントリーみたいな今年の新作みたいな作品だとビッグヒットが出る。ミツキ、これだけビッグになっても生まれ故郷の日本でまだ全然知られてないんですけど、このヒットの経緯聞いても非常にわかりにくく、日本の音楽リスナーをますます困惑させないかどうかは、実のところ僕は気がかりでもあります。

17(95).El Mal Querer/Rosalia (2018)

17位はロザリア。この人の本作「El Mal Querer」は前回からものすごい上昇になりましたね。約80ランク上がってます。「スペインに、フラメンコですごい才女がいる」と聞いて「えっ、フラメンコ?!」となってこのアルバムを聴いたのが2018年11月。聴いてみると、フラメンコ特有のハンドクラップに導かれながらR&B、ヒップホップを歌う。しかもMV見たらジャージを着てジャネット・ジャクソンみたいにグループでストリート・ダンスをキメる。これだけでもかなりのインパクトがあって、僕は慌ててその年の年間ベストの14位に入れました。しかもこの路線、このアルバムからの突然変異でその前のアルバムはかなりハードコアな正調フラメンコ。「えっ、一体どういうこと??」と思ってメチャクチャ気になり始めました。そのときから本国スペインではスーパースター。「面白いけど、この人、世界でウケるかな?」。そのとき、僕はそんな風に思っていました。甘かった。スペイン語圏は言葉で音楽が繋がる地域。ロザリアはレゲトンのフィーチャリング・シンガーとして各地で引っ張りだことなり、知名度をグングンあげ、ラテン・ミュージック界を代表するスターになっていたのでした。その矢先に昨年の衝撃のアルバム「Motomami」。遂には自分でラップも抜群にカッコよくキめ、ヒップホップもエレクトロもレゲトンも、さらにはクンビア(昔なつかしのランバダっぽいやつ)みたいなトラディショナルな南米音楽まで自在に取り入れ、ウィーケンドにスペイン語でデュエットさせて、ファレル・ウィリアムズの前で日本語で「HENTAI」と歌い。考える前に本能で動く世界最強レベルの女性アーティストになっております。

16(96).Ctrl/SZA (2017)

16位はSZA。このひともロザリア同様、今回の大躍進組ですね。前回より実に80ランクアップです。今年のグラミー賞最多ノミネート・アーティストでもあるわけで、この評価の上げ方も妥当だとは思うんですけど、自分でも驚いたんですけど、なんで前回こんなに評価低かったんでしょうね?おそらくこれ、思うに、ソランジュへの評価を高くしすぎちゃってたんだと思うんですよね。ソランジュとか、FKAトウィッグスもかな、彼女たちの作るビヨークみたいなネオソウルこそがカッコよくて、SZAは良いけどちょっと通俗的みたいな、そういう印象を抱いていたのかもしれません。2019年までだと、まだこのアルバムまでの印象でその後と見え方が少し違ったことも確かです。しかし、それが次の2、3年で大逆転するんですよね。SZA自身の「Good Days」、そしてドージャ・キャットとの「Kiss Me More」、この二曲でSZAは当代最高のソングライターぶりを発揮します。たしかに通俗的なのかも知れない。とはいえ、コード進行やアレンジに洒落たオカズは十分にあるし、リリックには日常の生活感や共感できるポイントが大いにある。さらに言えば若い女の子ウケするキュートな歌い方も出きる。神々しくないものの誰でも入っていけるシンパシーがある。もっと言えばR&Bという枠や人種の壁を超えて誰もが気持ち的に自己投影出きる親しみやすさがある。「ああ、これはやっぱりすごいのかも」と思った矢先、昨年暮れから今に至るセカンドアルバム「SOS」のビッグヒットですよ。ヒップホップが記録的な40%ともいわれるセールスダウンを記録した2023年にSZAだけがひとりがちです。今思えば、Ctrlの時点でその名も「ドリュー・バリモア」という、ハリウッドの脚本家ばりの洒落たセンスのストーリー・テリングと印象派クラシックみたいな曲調の名曲がありました。そのセンスがそのままスクスク成長した結果なのでしょうね。

15(19).Bon Iver/Bon Iver (2011)

15位はBon Iver。ボン・イヴェールなのかボニーヴェアなのか、ジャスティン・バーノンの一人プロジェクトなのかバンドなのか、10年以上経っても未だにはっきりわからない存在ですけどね。すでに何度か言ってますけど、今回のランキング、2000s後半から10s前半に大いにチャンスがありながら行かせることなく終わったピッチフォーク推奨系インディ・ロックのアーティストにかなり厳し目なんですけど、その中で唯一と言っていいほど落とすわけにはいかなかった、むしろ株上がっている存在こそがこのBon Iver。この人たちに関しては2019年の現時点での最新作がグラミー主要部門で複数ノミネートされただとか、ジャスティンが翌20年にテイラー・スウィフトと「Folklore」でデュエットしたとか、そうしたメジャーな話題性もあるんですけど、そういうことではなく、時代を代表する画期的な実力ゆえですね。なんか「最新テクノロジーにコントロールされた自然派音楽」というか。なんじゃ矛盾して聞こえるかもしれませんが、「ヴァーチャル・リアリティな自然」をこの人たちの音楽に僕は感じるんですよね。それは2008年のデビュー作の「For Emma, Forever Ago」の時からそうです。一見、寒い冬空の中人肌の暖かさのあるフォークを奏でているようで、実はその歌声はハーモニー、アンビエントな空気がテクノロジカルで機械的だったんですよね。あの感覚って普通のフォークには存在しないものだから不思議でね。そこからこのセカンドアルバムに進むと、同じくような感じではあるんですけど、今度は楽器の音色全体に電気加工してるみたいな聞こえ方になって。プロトゥールズをふんだんに使ってるような、普通に演奏してるだけだとまず出ない感じの音ですね。バランスとしては、これくらいがこの摩訶不思議フォクには一番いいし、この時点で誰も真似できないものになってます。ただ、そこから先の2枚「22 Million」(2016)や「i i」(2019)まで進んでしまうと、今度はエレクトロとテクノロジーが完全に支配する感じになって、曲名や歌詞まで記号化。4枚目なんてロボットのフォークみたいですからね。元から地名を曲のモチーフに使ってましたけど、これも一方で暖かな郷愁を誘いつつも、どこか使われ方が記号的でもありましたけどね。なんかそういう意味では頭良すぎてだんだんついていけなくなりつつはあるんですけど(笑)、振り切ったところから人間方向に回帰して欲しい気はしてます。


14(79).Pure Heroine/Lorde (2013)

14位はLorde。これも、見た目だけ取ると、前回より65ランクも急上昇したように見えますが、その一方で彼女のセカンドアルバム「Melodrama」(2017)を16位から一気に圏外に落としました。これは僕なりに「彼女の何に惚れ込んでいたのか」の改めての確認作業であると同時に、世間の批評に流されていたことへの反省ですね。僕は2013年、彼女が世界の音楽地図からはずれたニュージーランドからいきなり17歳の年齢で、実質、ベースとリズムだけで作り上げた「Royals」に度肝を抜かれました。ビルボードのシングル・チャートの下の方から猛烈に上がってきたときには毎週のように興奮したし1位になったときには「時代が変わる!」と大騒ぎしました。その興奮は「Tennis Court」「Buzzcut Season」「Team」など他の曲でもそのトーンが変わることのなかったこのアルバムや、翌年3月に彼女含め3人のメンバーだけでアルバムのサウンド通りに行ったロラパルーザのライブでも変わらなかった。そうしたらやがてデヴィッド・ボウイまでもが「Lordeは音楽の未来だ」と語り、それを遺言にするかのように世を去った。彼女が2016年、ブリットアワードでボウイ、そしてロックの殿堂でニルヴァーナのトリビュートで歌ったとき本当に音楽の遺産が受け継がれるのだと信じてました。そこに2017年、待ちに待ったはずの「Melodrama」で僕は本来なら万歳をして喜ぶはずでした。「現代の都会のケイト・ブッシュ」に進化したのは別に良かったのですが、このアルバムの芯にあった洗練されない闇の部分が消えてしまったことがどうにも引っかかって世間が騒ぐほど絶賛できなかったんです。別に音楽表現が悪くなったわけじゃないし、2018年に見たライブもダンサーはついたものの内容は充実していたので、僕の狭量のせいだと思おうとしたんですよね。ところが2021年の「Solar Power」は「この人、ギターで曲作ったこと、あるんだっけ?」と思えた不自然なフォーク作となり世間的にも初の微妙な評価。「ライブで挽回すりゃ大丈夫」と僕は当初心配してなかったんですが、22年、髪をブロンドに染め、ピンクのレオタードを着て、司会者が台本読んでるみたいな進行をしたライブに大失望してしまったのでした。「ああ、求めていたものの喪失の違和感ってやはり大事なんだ」と思うようにした次第です。


13(39).Paramore/Paramore (2013)

13位はパラモア。2013年にリリースされたセルフ・タイトルのアルバム。これも前回の39位から大幅アップです。このアルバムに関しては、以前からこのnoteをお読みの方なら僕がなんども言及してるのをご存知かもしれませんが、とにかく大好きなアルバムです。人間が大きく変わる成長の様をまざまざと見るような感じがですね。そうでなくとも、エモそのものが2010年代の前半は非常に影響力の大きなムーヴメントだったわけですから、本来ならそれだけでピックアップしたとしてもおかしくないんです。ヘイリー・ウイリアムスはそこで女性のフロントマンという立ち位置で女の子のリスナーを牽引したわけでもあるし。僕の知っている限り、その頃のパラモアの姿を追い求めているファンもかなりの数います。しかし、そうしたエモ・ブームのアイコンとして異常に大事なのは、ジョッシュ・ファロが脱退した後ですね。ジョッシュはソングライティングの大半を行ってきた。その彼が抜けたのだからバンドの生命にも関わる一大事です。パラモアはそこを機にヘイリーのやりたい音楽性に一気にシフトします。そもそもヘイリーのソロとして契約させられたところを男を従えたバンドにしたように自ら男臭いところにガッツある女の子として切り込んでいったヘイリーが、心理や音楽的な成長を素直に認め、心の赴くままに脱エモにトライ。キュートな「Still Into You」や
16ビートのファンクの「Ain't It Fun」、素直にヤーヤーヤーズを意識したとしか思えない「Fast In My Car」、オールディーズ・スタイルの「(One Of Those) Crazy Girls」などインディロックを中心にした自在の路線に移行。一部のファンは失いましたが、以前には得られなかった新しいリスナーを獲得します。これ以降もポストパンクやエレクトロ、フォークなど、パラモアとソロでの2枚ずつで音楽的追求を行い、音楽的には孤高のレベルに進化。そんなヘイリーの背中を追うように、今ではボージーニアスやアーロ・パークスといった優れた後輩が慕い、同世代のテイラー・スウィフトが一目おく存在となっています。ただ、こうした存在でありながら依然感情の起伏に不安定さを見せるときがあるなど、ヘイリーはリスナーと同じように等身大な不完全さも露呈する。こうしたところが精神的な意味でのエモ・クイーンであり続けていて、その意味でも強いんですよね。

12(30).ANTI/Rihanna (2016)

12位はリアーナ。現時点で一番新しいアルバムになってしまってますね。2016年の、しかもあの年の初めの方のリリースでした「ANTI」です。10年を2007年から16年という変則的な区切り方をして良いのなら、その10年に関しては僕はリアーナが世界の音楽界のMVPだったと確信しています。アルバムでいうと「アンブレラ」の入った「Good Girl Gone Bad」からこのアルバムに至るまでですね。その間、10年で出したアルバム6枚。2年に1枚を破るかなり早いペースですよ。そこに彼女はシングル単位で次々と先鋭的なエレクトロのクールな最新モードな曲を連発しました。その間、ビヨンセのところで書きましたけど、彼女が80〜90年代然としたR&Bディーヴァっぽい感じのままだったからビヨンセが退屈に見えてリアーナがこれまでにないタイプのポップ・クイーンのように僕には見えてましたね。バラード少なめで早めのBPMでグイグイ攻めるのがカッコよかった。ただ、そんなリアーナもカルヴィン・ハリスとの「We Found Love」でEDM路線がちょっと形式的すぎて単調になってきていたのでそろそろ路線変えて欲しいなと思っていたところにこの「ANTI」が3年ぶりの新作(いかにそれまでのペースが異常に早かったか!)として来たわけなんですけど、もうアンサーとしてはあまりに完璧でしたね。エレクトロを使ってないわけではないにせよ、もう電子音では勝負せず、ひねった和音の感覚や、ずっしりと重たくもたったリズムといった曲調そのもののユニークさで勝負する方向に進みましたね。これまでより重いビートのエレクトロのドレイクとの「Work」やギターソロ・フレーズが光るミディアム・テンポのロック「Kiss It Better」、50sのドゥワップ調のゆったりとしたグルーヴの「Love On The Brain」といったキラーチューンをはじめ、冒頭いきなり次の年にデビューして一大ブレイクを遂げたSZA、さらにはテイム・インパーラが自身の傑作「Currents」収録曲の別テイクとして寄せた「Same Ol Mistake」などゲスト選びも未来を予見するかのようなセンスが光っていて。そういう意味でもこれ、伝説化しやすい要素あったんですよね。そうしたこともあってか、このアルバムは、これまで作品を矢継ぎ早に発表することで縁のなかったロングヒットをビルボードのアルバム・チャートで記録しますが、それと歩調を合わせるように彼女自身がそこから活動を休止。今年も復活かと思いきや2人目の子供妊娠。出ると言われたアルバムも先延ばしです。このアルバムで燃え尽きてなければ良いですが。

11.My Beautiful Dark Twisted Fantasy/Kanye West (2010)

そして11位はカニエ・ウェスト。彼が放った最高傑作の一つに数えられている2010年の「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」。これがですね、前回のランキングと変わらず11位をキープ、という形になりました。今回、3枚のアルバムがトップ10圏外に落ちたのですが、本作がそれで昇格することはなく、他のアルバムが3枚入れ替わったのでした。僕、11位っていつもシンボリックな意味合い込めてましてですね。そのほとんどの場合が、「客観的に作品の凄さを認めている・・けど」というやつです。本当にすごいと思うんですよね、このアルバム。よくこの言い方されますけど、本当に「ヒップホップ界のプログレ」なんですよ。それはキング・クリムゾンをサンプリングしたという意味ではなくて、「スケールが壮大に大きなヒップホップ」という意味で。その最大の演出をしてるのが、特に序盤に本当に大きな音で響く生スネアの乱れ打ちですね。特にリアーナとの「All Of The Lights」の後の数曲ですね。ここでスネアがドカドカ乱れ打ちされていくことで、客の聞こえ方そのものがすごくビッグに聞こえるんですよね。ましてやそれがクリムゾンの「21世紀の精神異常者」の不穏なエレキギターとホーンの鳴り響いた次の曲からの展開でそうなるわけでしょ?そこから数曲導かれての、カニエ史上最大のクライマックス的名曲の「Runaway」になだれ込む。そして、この曲が9分の大曲なわけでしょ。もう、なんか普通のヒップホップ聞いてる気に全くならないんですよね。それが終わっても、同じような大きなスネアの煽りは続き、ジョン・レジェンドの華麗な7分台の大曲と、さらに締めに向かってのBon Iverとの曲になだれ込んでいくわけでしょ。もう、サウンドのスケールでもゲスト陣の豪華さでもお腹いっぱいですよね。ただ、これだけ作れてもここから先の言動はもう乱れっぱなしだし、それがリリックにも響いてき始めるのは正直いただけないし、それが僕の今日までの彼への打ち解けなさにも響いています。これが11位の壁を破るタイミングは果たして訪れるのか?

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