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(第22回)全オリジナル・アルバムfromワーストtoベスト マイケル・ジャクソン/ジャクソン・ファイヴ/ザ・ジャクソンズ その2 10−1位

どうも。

では、昨日に続いて

fromワーストtoベスト、マイケル・ジャクソンの回、その2、トップ10いきましょう。

こんな感じで行きました。

10.Ben/Michael Jackson(1972 US#5 UK#17 )

10位はマイケルのモータウン時のソロのセカンド・アルバム「Ben」。これは、この半年ほどほど前に出たファースト・ソロが予想以上に好調だったことが後押ししたんじゃないかな。ネズミを描いた映画「ベン」の主題歌を可愛らしく切なく歌う様がウケて世界的に大ヒットになります。この曲で14歳にして、ソロでもグループでも1位になるのだからやっぱ才能破格ですよね。あと、この曲でのちに定番となる「アルバムに1曲は泣きのバラード」の路線を先駆けたものにもなったような気がします。

9.ABC/Jackson Five(1970 US#4 UK#22)

9位はジャクソン・ファイヴのセカンド。アルバムの作りは「バブルガムなオリジナルと当時のヒット・ソウル・チューンのカバー」という、前作同様の作りなんですけど、こっちは「ABC」「The Love You Save」と全米1位の曲が2曲入ってますね。カバーの方はミラクルズ、スティーヴィー・ワンダーなどの60sの曲をやっていますけど、だいぶネタが切れてきたかな、というのも少し感じさせます。ただ、デビュー作のとこで言いますけど、このカバー、実はすごく重要な意味を持つものだと僕は解釈しています。

8.Maybe Tomorrow/Jackson Five(1971 US#7)

8位はジャクソン・ファイヴの四枚目のアルバム。僕はこのアルバムこそがジャクソン・ファイヴの、良くも悪くも最初の転機だったような気がしています。この前のアルバムで「I'll Be There」というバラード・ヒットも出した彼らですが、あそこまでしっとりとしたバラード調ではないものの、このアルバムでは「Never Can Say Goodbye」や、アルバムのタイトル曲のようなミドル・テンポの歌いあげ曲をマイケルが完璧に決めてしまっている。これがなかったら、もしかしてマイケルがこの翌年に出す二枚のソロ・アルバムはなかったんじゃないか。そのソロが、やけにこのアルバムにテイストが近いので、どうしてもそう勘ぐりたくなってしまいます。そしてジャクソン・ファイヴには、ジャーメインのテイストを強めて、もっとキッズ・アピールの強いものを。大人はそんな風に考えたんじゃないかな。それが昨日も書いたような彼らとモータウンの衝突にも繋がってしまうわけですけどね。

7.Dangerous/Michael Jackson(1991 US#1 UK#1)

7位は「デンジャラス」。これ、短期的な視点で見れば「大成功作」だったと思います。あの当時、ヒップホップやニュー・ジャック・スウィングの台頭で、「マイケルにストリートのエッジが表現できるか?」と思われていたところにマイケルがニュー・ジャックの寵児だったテディ・ライリーをプロデューサーに迎え、それが可能であることを十分すぎるくらい示した、かなりエッジィなダンス・グルーヴの聴ける一昨にはなっていたと思います。今聞いても「Remember The Time」「in The Closet」あたりはかなりカッコいいです。

しかし、ここから、「時代に乗る事」ばかりが最優先され、「Bad」で築いた彼のアルバムのフォーマットが方程式的に繰り返されるキッカケにもなってしまいましたけど。あと、皮肉な事に、ニルヴァーナの「ネヴァーマインド」に全米1位の座を明け渡した事でしばし言及される事で「旧世代」的なイメージを図らずも与えてしまいがちな作品にもなってしまっています。

6.Destiny/The Jacksons(1978 US#11 UK#33)

6位はジャクソンズの「デスティニー」ですが、今日まで我々が「マイケルの音楽スタイル」として知っているものはこのアルバムでできたのであり、これこそが、彼らがジャクソン・ファイヴの時にバブルガム・ソウルから脱して築きあげたかった音楽性ですね。

エピックに移籍後も最初の二枚はプロデューサーをつけられても仕事だったところを、このアルバムでは彼らのセルフ・プロデュース。曲を書いたのもほとんどがマイケルを筆頭とした兄弟たちですからね。そして、ただ曲を自分達で作っただけではないですね。ここで聞かれるマイケルのヴォーカル・スタイル、これもセルフ・プロデュースの生んだ産物だと思います。彼特有の、肉感の鼓動を刻み込むようなリズミックなヴォーカル・スタイル。いわゆる「ヴォーカル・ヒカップ」とも呼ばれるあの歌い方、あれが本格的に確立されたのもこのアルバムです。「Blame It On The Boogie」や「Shake Your Body」あたりは来るべきマイケルの次のアルバムの青写真ですね。

5.Got To Be There/Michael Jackson(1972 US#14 UK#37)

5位はマイケルの人生初のソロ・アルバムを。これのタイトル曲は、70sのモータウンを代表する名ミドル・ナンバーだと信じて疑いませんね。マイケルの歌う主旋律もすごくいいんですが、そこに重なるベースラインのメロディックな流れとのハーモナイズが最高です。そこに加えて、これもマイケルの代表曲になる、切迫感あふれるラヴ・ソング「I Wanna Be Where You Are」も普遍的な名曲だし、子供っぽいイメージを逆手に取った50sのカバー曲でヒットもしたロックンロール「Rockin Robin」と、バランスも良く取れています。

モータウンとしては、ジャクソン・ファイヴの他のメンバーでは歌いこなせないようなこうした楽曲を中心にマイケルを成長させたかったんじゃないかなと思えるんですけどね。これはこれで僕は十分に成長作だと思うし、こと、「声の伸び」に関しては歴代のマイケルでもこれがベストだと思います。ただ、これだけがマイケルでは決してなかったのも事実でしょうけど。

4.Diana Ross Presents The Jackson Five/Jackson Five(1969 US#5 UK#16)

そしてジャクソン・ファイブのデビュー作が4位です。これは世に、マイケル・ジャクソンという11歳の天才少年を筆頭とした物凄い兄弟グループが存在することを世に示した意味でものすごく重要です。あれから50年経ってますけど、そんなことができる存在、誰一人出てきてないわけですからね。ある意味、「少子化時代以前」の世が可能にしたマジックだとも思うのですが。

このアルバムは、今も代名詞代わりの「帰って欲しいの」が入っているアルバムとして有名なのですが、このアルバムでの重要な部分はむしろカバー曲だと思っています。ここで彼らはモータウンやジョニー・テイラー、さらにはスライ&ザ・ファミリー・ストーンのカバーまで披露していますが、そこで感じられるのは「子供っぽさ」よりもむしろ「子供だけど、大人顔負けにソウルできるよ」ということであり、彼らとしては「無邪気さ」よりむしろ「成熟」をアピールしたかったと思うんですよね。それがこの3年ほど後に「僕らはこんな子供っぽいことがやりたいわけじゃない」というフラストレーションの爆発にもつながったとも思います。

3.Bad/Michael Jackson(1987 US#1 UK#1)

トップ3は、やっぱり、最も有名な三枚ですね。3位は「Bad」。これ、世界的な現象となった前作の影にk隠れがちですけど、ある意味、前作より増強された1作だし、1曲ごとの平均では、むしろこっちの方が上なんじゃないかと、今の耳からしたら思えますけどね。

ファンキーな路線で言えば「The Way You Make Me Feel」や「Smooth Criminal」、ロックな路線で言えば「Dirty Diana」、バラードで言えば「Man In The Mirror」。このあたりは良い意味で、前作より味付けが濃くなってるし、楽曲的な知名度もありますよね。それプラス、「Another Part Of Me」や「Leave Me Alone」といったマスコミへのフラストレーションを募らせたふてくされソングがここから生まれています。ある意味、その後に定着するマイケルのアルバム・フォーマットはここで完成されたと言っても過言ではないと思います。ただ、それが繰り返されるようになったのは問題でもありましたけどね。  

2.Off The Wall/Michael Jackson(1979 US#3 UK#3)

2位は「オフ・ザ・ウォール」。これは今現在の世間の感覚からしたら1位でもおかしくないですね。昔から「こっちの方が好き」という人は少なくないし、僕自身の本音で言えば本当はこっちの方が好きです。プラス、昨今は「シティ・ポップ」のブームもあるでしょ?その感覚でいえば、こっちの方がよく聞こえてもおかしくないんです。

それくらいに、このアルバムは、マイケルが「ディスコ・ブーム以降の80sのアーバン・サウンド」を築きあげた意味で非常に意味深いんですよね。これまで流行ってたアース・ウインド&ファイアやPファンクの大所帯ファンクのサウンドをソリッドに削ってグルーヴをシンセ・ベースでテンポアップさせ、そこにAOR的なメロディを乗せた感じというか。これはこの当時に、黒人のメインストリーム・カルチャーが洗練化に向かっていく過程とも一致してるんですよね。このタイミングでマイケルがジャクソンズの「デスティニー」でつかんだ感覚をここで一気に爆発させて時代に乗り、黒人にも白人にも多くのファンをつかんだことはとりわけ大きかったと思いますね。

また、自作曲でも定評が出来上がってきつつあったマイケルが、プロデューサーにクインシー・ジョーンズ、ソングライターにロッド・テンパートンをパートナーに迎えたことで、本当に作り上げたい世界を完全に作れたことも大きかったと思います。今聞いても「今夜はドント・ストップ」、「Rock With You」はタイムレスに名曲だと思います。

1.Thriller/Michael Jackson(1982 US#1 UK#1)

ということで1位はいうまでもなく「スリラー」ですが、今回聞いてみて思ったのは、これ、ビートルズと一緒で、いくら「サージェント・ペパーズ」があると言っても、時代が変われば他のアルバムが1位になってもおかしくはないかな、ということですね。「Off The Wall」でも「Bad」でも、1位にしようと思えばできるな、と思ったので。

ただ、それでも、このアルバムを僕が客観評価するのは、やはりビルボード史上の最長1位記録が35年も抜かれていないこと、アルバムが1億枚売れたこと、音楽における黒人の台頭を促したこと、映像で音楽の枠を超えたことなどですね。ムーンウォークの 披露もこの時期ですしね。

あとアルバムにしても、全作よりファンキーになった上にアフリカを意識したテイストを加えたり、エディ・ヴァン・ヘイレンを迎えてのハードロックやポール・マッカートニーとのデュエット、ホラー映画のテイストを加えたエンタメ性など、前作のアーバン・テイストを残しながらもオーディエンスの層を確実に広げてますよね。あと、そういうものがやはり「Bad」よりは計算されずに自然に出てきているのも評価すべきポイントなのかなとも思います。まだ、聞いてて「深み」を感じることができる分、まだ1位なのかなとも思いましたね。

















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