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全オリジナル・アルバム Fromワーストtoベスト (第20回) マーヴィン・ゲイ その1 25〜11位

どうも。

では、今年に入って初めて、そして、平成では最後の企画、FromワーストToベスト、久々に行きましょう。

noteでは初めてなんですよね。でも、jugemのブログの方ではすでに19回もやった、当ブログの名物企画のひとつです。知らない方のために申し上げますと、要はあるひとつのアーティストのオリジナル・アルバムを全部聞いて、それに全て順位をつける、という企画です。これの前回にやったアーティストは映画「ボヘミアン・ラプソディ」に合わせてのクイーンだったりもしました。

今回の、記念すべき20回めのアーティストは、この人です!

もう、”ソウルシンガー”の代名詞的存在ですよね。セクシー・ヴォーカリストの象徴でもあります、マーヴィン・ゲイ。彼の全25枚のアルバムにランキングをあえてつけてみました。

なぜいま彼かというと、4月1日は没後35周年、2日が彼の生誕80周年にあたるためです。このため、今年は例年以上にマーヴィンの企画、多いんですけど、僕もマーヴィンは大好きなヴォーカリスト、そしてサウンド・イノヴェーターでもあるので、ぜひともやりたいと思っていました。僕も今回の企画はすごく楽しみにしていました。

では今回はその1、25位から11位までを見ていきましょう。

25.When I'm Alone I Cry(1964)
24.Hello Broadway(1964)

23.A Tribute To Great Nat King Cole (1965)

22. A Soulful Mood Of Marvin Gaye (1961) 

ここは一気にいきます。ワースト4枚は、彼がキャリアの初期、「実はジャズのスタンダード・シンガーになりたかった」ことを示す、ソレ系のアルバム群です。

ぶっちゃけ、作品の売り上げも、そのあとの需要のことも考えるとR&Bシンガーをやったほうが断然正解だったわけですが、そうは言っても、幼い時に憧れたもの、というのはどうしても人間、執着があるというか。ましてや60s前半でもあろうものなら、まだポップシンガーよりもジャズシンガ_のほうがステータスあった気もしますしね。元がドラマーだったマーヴィンならなおさらかもしれません。

この4枚は主にカバーから構成されていますが、そういう曲が悪いわけでは決してありません。ただ、「違和感」、これがどうしても強いんですよね。「その後のキャリアから考えて」というのも一応あるにはあるんですけど、でも、どちらかというと、彼の場合、「声質の向き、不向き」、こっちの方が強い気がします。最高のソウルシンガーとなったマーヴィンですが、このスタンダード系の曲を聴いていると、そうした歌を歌うには彼、声のロウのパートの出が弱いんです。もともと地声がソフトで高い声の人ですからね。スタンダードの場合、フランク・シナトラみたいに低音の出が安定している人の方がイメージとしてパッと連想されやすいですからね。その意味では「本人には申し訳ないけど」と言ったところですかね。

21. Easy (With tammy Terrell)(1969 US#184)

スタンダード以外の路線なら、これがワーストですね。「女性シンガーとのデュエット集」というのはマーヴィンのおなじみの路線の一つなんですが、これはその中でも最も成功したタミー・テレルとのものなんですが、このアルバムの問題は、もうタミーがこの頃、病床にあって歌えるどころではなく、それを埋め合わせるために、このアルバムでソングライティングも務めているアシュフォード&シンプソンのヴァレリー・シンプソンが「声が似ている」という理由で痔理で歌ってることなんですね。つまり「看板に偽りあり」。いくら事情があるからといって、消費者に嘘ついちゃいけません。タミーは翌1970年、脳腫瘍のために24歳の若さで他界してしまいます。

20. Together(With Mary Wells) (1964 US#42)

続いてデュエット集ですね。これが一番最初のもの。最初の相手は、当時モータウンの売れっ子だった、「My Guy」の全米1位のヒットでも知られるメアリー・ウェルズ。マーヴィンもモータウンの男性ソロでは1、2位の人気になりかかっていた時期で、レーベルの男女の看板同士だったわけですが、肝心なケミストリーがこのアルバムにあるか、というと、ちょっと微妙です。メアリーの歌声の堅さの問題もあるんですけど、なんか聞いててセクシーなニュアンスがいまひとつ伝わらないんですよね。

19. MPG(1969 US#33)

1968年の末からの「悲しいうわさ」のヒットに便乗して、もう1枚似たタイプの曲を集めて作られたアルバムですね。この当時、R&Bにこういう、「シングルがヒットしたんで、似た曲と、あり合わせの曲を集めて」という、安易な発想のアルバムが多いんですよね。1969年にもなると、もう、そろそろそういうアルバムの制作理論が通用しなくなってくるだけに、これはちょっと時代遅れな感じのアルバムですね。マーヴィンも、そういうのにだんだん違和感を感じてきてたんじゃないかな。この2年後から、彼は先端のアルバム・アーティストになるわけですから。

18. Diana & Marvin(With Diana Ross)(1973 US#26)

モータウンのレーベルのキング&クイーンですね、マーヴィンとダイアナ・ロスが1973年に組んだデュエット・アルバム。ただ、これもなあ。どちらかというと、「蝶よ花よ」で育ててきたダイアナのために、モータウン社長の長年の愛人、ベリー・ゴーディJRがこしらえたアルバム、という感じがしちゃうんですけどね。マーヴィンはゴーディの立場上、義理のお兄さん(実姉のダンナさん。年はマーヴィンの方がだいぶ下なんですが)でもあったのでネゴシエーションしやすい状況もありましたからね。

内容的には、スタイリスティックスの「You're Everything」やドリフの早口言葉の原曲としても同じみのウイルソン・ピケットの「Don't Knock My Love」のカバー解釈の面白さなど聴きどころもあるんですけど、この当時、ダイアナが妊娠中でセッションが非常に難しかったことも災いしてか、ケミストリー、あまり感じさせるアルバムではないですね。

17.In Our Lifetime(1981 US#35)

これがモータウンでの最後のアルバムですね。このアルバムはもともと、1979年に「Love Man」のタイトルで出る予定だったアルバムをおくらにして、編集組み直して2年後にそっとだされたアルバムだったために成功しなかった、ちょっと不遇なアルバムです。

この中には、のちのヒップホップを先駆けたラップ・スタイルの名曲「Ego Tripping Out」という非常に重要な曲があって、それは僕もかなり大好きな曲なんですが、他の曲が中途半端にディスコっぽく、この先にマーヴィンがどう行きたかったのかがいまひとつ不透明な感じでもあるんですよね。この前のアルバムが起こした騒動でマーヴィンがモータウンと対立し、また、気分的にもかなり内側に内側に入って行き、精神的にも良くない時代でもありましたしね。ポテンシャルそのものはあったのに、そういう状況がいい作品を作らせるのを阻んでいた感じもなきにしもありません。

16. Dream Of A Lifetime(1985 US#41)

遺作です。マーヴィンは1984年の4月1日に、牧師だったお父さんから射殺されてしまい、それは当時、日本でも報道されたくらいにショッキングなものでもあったんですけどね。朝日新聞の死亡欄でもかなり大きく出てたの覚えてますから。

このアルバムは、その生前にレコーディングされていた未発表曲を集めた遺作なんですが、結構興味深いんです。シングルにもなった「Sanctified Lady」は、この前のアルバムで芽生え始めていたエレクトロ・ファンク路線をもう一歩進めた感じのものでしたし、他にも、「Ego Tripping Out」を思わせるマーヴィン・ラップの曲もあったり。彼、生きてたら、ラップ・スタイルのヴォーカルで新境地開けてたんじゃないかな。そのスムースな言葉の運びからして、マーヴィン、ラップかなりうまいので。

15. I Want You (1976US#4)

これは人気作ではあるんですけどね。タイトル曲そのものは、マーヴィンの曲の中でもかなり上位の人気曲で僕自身も大好きです。

ただ、このアルバムの制作の仕方のいびつさはあまり僕好みではありません。なぜなら、これ、もともと「I Want You」の作者でもあるリオン・ウェアという人のアルバムだったところ、マーヴィンにアルバムを作ってもらいたかったモータウンが、このリオンの作ったものを元にマーヴィンが作り変えた、いわば「編曲アルバム」だったんですね。そういう作品の割には、アルバム全体の構成にはまとまりがあります。ヴォーカル・ハーモニーの録音とか、クールに抑えたサウンドのトーンとか、70s前半の黄金期を築き上げてきた彼のサウンド・クリエイターとしての力量は発揮されています。

ただ、元々の持ち曲が少なかったこともあり、アルバム中、同じフレーズが何回も繰り返されるところなどは「もう少し、そこはなんとかならなかったのか」とも思えるし、全体に造りが大雑把すぎるんですよね。マーヴィン自身が最初から自分の意思で乗り気で作っていた作品ならばもう少し良かったのでは、と思います。

14. Take Two(With Kim Weston)(1966)

これはデュエット集の第2弾。相手は、この当時、モータウンが売り出そうとしていたキム・ウェストンという女性シンガー。

このキム、ハイトーンのキレもいいし、なかなかいいシンガーで溌剌ともしていて、マーヴィンとのコンビネーションもこれを聞く限り良いんです。シングル・ヒットした「It Takes Two」も掛け合いとテンポ感のいい曲だし。世が世なら、彼女こそがマーヴィンのベスト・デュエット・パートナーだったかもしれないんですが、彼女、このアルバムの後にレーベルと給与の問題でもめてレーベル出ちゃうんですよね。彼女は移籍後も成功せずに終わってしまいます。なんかもったいない感じもありますが、その結果、マーヴィンにはタミー・テレルとのドラマが待ち構えることになります。

13.How Sweet It Is To Be loved By You(1965US#128)

いわゆる「ソロでソウルを歌うマーヴィン」としては第2弾アルバムです。タイトル曲は全米6位まで上がり、この時点での彼の最大ヒットになっています。

このタイトル曲はスプリームスで当てたホランド、ドジャー&ホランドのプロデュースですが、他にもスモーキー・ロビンソンなど、レーベルの売れっ子で作られたアルバムです。

この当時のモータウンらしいアルバムでその意味で聞いて楽しめるものではあるんですが、ただ、マーヴィンの場合、自分で曲も書ける人でもあり、そのイメージで聴くと、これらの曲はマーヴィンの曲としてはちょっと抑えめのライト・ウェイトな感じはちょっと否めません。もう少し豪快さのある曲の方が僕は好きですね。

12.That's The Way Love Is(1970US#189)

これは一瞬、「埋め合わせアルバム」のようにも見える作品なんですが、これはこれでちゃんと意味のアルバムです。タイトルこそ、シングル・ヒットして、前作「MPG」にも入っている曲からとったアルバムなんですが、本作は「悲しい噂」を手がけて、この当時、テンプテーションズのプロデュースでサイケデリック・ソウル路線の大家になりつつあったノーマン・ウィットフィールドが全編プロデュースをしています。

その縁か、ここではマーヴィン、ビートルズの「イエスタディ」やラスカルズの「Groovin」、ディオンの「Abraham Martin And John」といった、ロック、フォーク系のカバーをやっていたりもします。「この次に出てくる名作のリリックやサウンドのモチーフの原型って、この辺りにあるのかな?」。ここでのマーヴィンのロックへのアプローチを聞くと、そう考えたくもなってきます。その意味で、地味なアルバムではありますが興味深いものはあります。

11.You're The Man(2019/1972)

これがつい最近、3月29日に出たばかりの話題のアルバムです。1972年に、もしかしたら出るかもしれなかったアルバム「You're The Man」です。

このアルバムですが、マーヴィン自身は1972年の秋頃に出したかった作品なんですが、先行シングルになったタイトル曲が、かなり政治的な曲の内容も災いしてウケが悪く、それでガッカリしたマーヴィンがお蔵入りさせてしまった逸話があります。

この話は前から知っていたので僕としては「遂に!」と、かなり楽しみでした。ただ、いざ出てみると・・。確かに「What's Going On」と「Let's Get It On」という、ソウル・ミュージック史上に残る大傑作の間の作品です。曲が悪かろうはずはありません。この時はファンクを基調としつつも、洒落たキーボードのコード進行もあり、「グルーヴがありながらもクール」なマーヴィンらしいサウンドがしっかりと構築されています。

ただなあ。これ、驚いたことに、曲の並びがすごく雑な上に、途中でリミックス・ヴァージョンが混ざっているってどういうこと??しかも同一曲の別ヴァージョンも半端に混じっているし。お蔵入りする前に、これ、正式に完成してはいなかったのではないかな。そういう意味では、ちょっと騙された気もしてしまいましたが。

あと、これ、仮に世に出ていたとしても「What's Going OnとLet's Get It Onの間の地味なアルバム」の位置付けで終わっていたかもしれないなあ。一曲一曲のリリックはかなりポリティカルになってはいるものの、全体のまとまりが前後2作に比べて悪く、サウンドの一貫性の意味でもそれらに比べると弱い。「ソウル史」としては良かったかもしれませんが「マーヴィン史」の中では微妙だったかもしれません。

では、次回はトップ10、行きます。


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