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年間ベスト・アルバムに行く前に・・・。惜しくも選から漏れた10枚

どうも。

いよいよ2022年の年間ベスト、行こうと思いますが、その前に去年もやりました、「年間ベストの50枚に入れたかったけど漏れた、あるいは思うところあって外したアルバム」、これを10枚ほど伝えておこうかと思います。

 50枚という枚数は、発表する単位としてはすごく丁度良いとは毎年思うんですけど、ぴったり50枚良いと思うものが都合よく現れるわけではありません。そこに入れたかったけどもれるもの、あるいは「他の人だったら余裕で入ってたと思うけど、僕自身は良いとは思うけどそこまでじゃない」みたいな作品が結構あるんですよね。

 今年はそういう作品を10枚選ぶと、こんな感じになりましたね。


はい。どれもランクインさせないのには惜しいアルバムだとは自分でも思うのですが、それぞれ語っていくことにしましょう。


はい。まずはレディオヘッドのトム・ヨークとジョニー・グリーンウッドのサイド・プロジェクト、ザ・スマイルのアルバム「A Light For Attracting Attention」からですね。これねえ、複雑なんですよね。作品の内容にケチつけるところは何もないし、レディオヘッドの2016年の「A Moon Shaped Pool」の次の進化系も見せられてるとは思うんですね。ただなあ。レディオヘッドの長年のファンとして、どうしてこれをエドとコリンとフィル抜きでやってしまったのか。これをレディオヘッドという形でこそ聴きたかったのに。そう思うとそわそわして聴けなくなるんですよね。このあと、レディオヘッドの新作期待してたらいつになるかわからないわけで。なんでレディオヘッドに、しかも前作から6年も経ってるのにとっておかなかったのか。あと、これを上位とかに置くことで「ロックの若手は不甲斐ない。やっぱり救いはレディオヘッドだ」みたいな印象を与えかねないのを避けたかった意味もあります。彼らがいなくてもいい若手はたくさん出てきてるんでね。



続いてはブラック・ミディの3枚目のアルバム「Hellfire」。これも話題でしたね。BCNR、スキッド、ドライ・クリーニングとともにサウス・ロンド・ポストパンク四天王の中でもひときわ異色なクセもの、かつ、最もカリスマ性があるのは僕も認めるところです。ただ、彼らがその特異性を、元から指摘されていたプログレ的な手法で拡大すればしようとするほど、僕には刺さらないんですよねえ(苦笑)。超絶テクとか変拍子とか、表現者の才能としては立派だなとは思うんですけど、そこでグイグイ攻められても僕の快楽ポイントにはつながらないというか。理屈で卓越した表現者なのは理解できるんですけど、体が反応しない。そういう感じなんですよね。彼らに関してはいかに考えないで無意識に反応できるようになるかを待ってます。アルバムのタイトルは「ストレンジャー・シングス」の今シーズンみたいでそそるんですけどねえ。

続いてはエンジェル・オルセンの「Big Time」。これも作品の内容だけを問うなら当然入っておかしくなかったものだとは思います。実際、入れかけたんです。だけど、思いとどまってしまった。こんなクラシック・カントリーをリアルに表現出来るいまどきのインディ・アーティストもそうはいないのに。ただ、それをわかっていてもどうしても二の足を踏んでしまうのは、彼女の所属レーベルが、せっかくの彼女の才能を台無しにしてるんですよね。ジャグジャグウォー。一昔前はBon Iver筆頭にUSインディの最優良レーベルだったんですけど、ここのとこ、出すもの出すもの商業的に大失敗続きでエンジェルも評判のいいアルバム2作続いたのに今作なんて全米アルバムで100位圏外に落ちてしまった。同僚のシャロン・ヴァン・エッテンに至っては200位にさえ入らなかった。こっちも評判の作品続いてるのに。こういう状況が続くようでは、彼女たちはレーベル移籍しない限りは強い支持はできないですね。アーティストがいい作品を出して勢いのあるレーベルが強力バックアップする。インディ・ミュージックはそこも大事な見せ場ですからね。


これも一度入れかけて外してしまったアルバムですね。元ザ・ルーツのラッパー、ブラック・ソウツが鬼才プロデューサー、デンジャー・マウスと全曲タッグを組んだアルバム「Cheat Codes」。今年は正直な話、メインストリームのヒップホップにかなりの不満があったのでちょっと少なめにしようと思って枚数を限ったんですね。そんな中、マニア受けしたピリッと辛口なもの選ぼうとしたら、他のジャンルで入れたいものが結構あって枚数絞らなくちゃいけなくて。そうやって選んでたらはみ出てしまいました。このアルバム、ベテランのコンシャス系ラッパーのブラック・ソウツがラン・ザ・ジュエルズやマイケル・キワヌーカ、ジョーイ・バッダス、コンウェイ・ザ・マシーン、ウータンのレイクォンと、コンシャス、良心系をここぞと率いてる様はグッとは来るんですけど、ただデンジャー・マウスのディープかつブルージーなソウル系トラックが予想ができてしまうというか、そこまで個人的にグッとこなかったんですよね。もう少し意外性があれば考えたんですけど。


続いてはスティーヴ・レイシーの「Gemini Rights」。僕の場合、ただ批評的に絶賛されてる人に加えて、「インディ寄りの立場から目立つヒットを出した人」というのは年間ベストで積極的に取り上げたい意向があります。「Bad Habits」を突如全米シングルで1位にした彼なんてその格好の例だし、前向きに考えました。ただですねえ、前から気になってた、「雰囲気良さげなスマートなオルタナ・ソウルは平均的にたくさん書ける」んだけど、「これはすごい!」と決定打になるような要素を今一つ感じないんですよね。今年、黒人でロック的な表現で面白いアーティストを最低で一組いれたくて直前まで考えたんですけど、どうしても踏み切れなかったですね。このアルバムを共作している黒人女性でフーシェイっていう黒人女性アーティストがいて、彼女が出した「SoftCore」というアルバムがもっと大胆にパンキッシュだったのでそれを代わりに選ぼうともしましたが、こちらも断念。ただ、今後の成長を見守りたい勢力ではあります。


今年は迷ったんですが、Kポップが1枚も入らなくなりました。一番近かったのでこのTXTの「Thursdays Child」。Kポップの場合はBTSがねえ、せっかくこれまでのKポップの特有の「2000s R&B」の基本フォーマットを破った方向性に行きつつある中での活動休止。いくらソロがあると言っても、やはり最終的な決定力を持つのは本体ですから、ここはバンタンの不在の間に誰かしらの台頭も求めることのできる時期でもあると思います。その意味ではHYBEの直の後輩のTXTが一番近いんですよね。曲調ももう2年前からロック主体だし。一昨年に突然変異で生まれたシューゲイザーの名曲「Ghosting」になかなか匹敵する曲が生まれないのがもどかしくはありますが、いい線は突き続けてると思います。女の子もブルピンがちょっと壁にぶち当たってる感じなのでチャンスだし(G)IdleとかNewJeansは面白いんですけど、もう一息かな。


できたら入れたかったところで惜しくも外れたのが、このヤングブラッドですかね。僕の場合、レビューでの評判の良さにプラスして、チャート的にも躍進が見られて、「フェスでの即戦力人気」につながるものを応援したいところがあって、彼なんかは典型的なそれですよね。それもちょっとエモ・ラップとかエモ・パンクにリンクする。そういうタイプの人って、ちょっと異色なことするといい意味脱線して面白くなるから期待してたし、実際にそれにも応えてる作品だとも思うんですよね。なんか全盛時のビリー・アイドルみたいないい意味での軽さとセンスの良さが彼にはあるんですが、本人も今回、意識的にか無意識的にかはわからないんですけど、そういう瞬間があるんです。ただ、その閃きがアルバム全体で続かなかったのが惜しかった。ライブも見たいし、次に期待したいですね。


このあたりは単純に僕の音楽的な嗜好として選びたかったんですけどね。ひとつめはアイルランドのジャスト・マスタードのアルバム「Heart Under」、もう一つがニュージーランドのバンド、The Bethsの「Expert In A Dying Field」。どちらも小さな国の、女性フロントのインディ・ロックバンドです。とは言えタイプは全然違って、前者はかなりダークでゴシックなシューゲイザー・バンド、後者はギターポップを力強く鋭角的にプレイしたタイプ。どっちも女の子がヴォーカルをとるバンドのパターンではあるんですが、ちょっとこれまで耳にしてきたタイプのバンドとは微妙にテイストが違い、なおかつ曲がしっかり書けているので気に入った次第ですね。候補の少ない年なら余裕で50枚に入ったと思うし、今年も入れようと思えば入ったとは思います。ただ、そんなに慌てて騒がなくてもいい気もしたので、次作以降でのさらなる成長を期待したいですね。

そして最後が大きなサプライズ。ウィーケンドの「Dawn FM」。実はこれが外れることになるのは、当の僕でさえ予想してませんでした。実際、「1月から3月の10枚のアルバム」にも入れてたし、あれに入ったらかなりの確率で年間ベスト入るのに。実は当初、入れる予定で組んでました。ただ、このアルバム、とりわけメジャー・デビュー後のアルバムの総決算をコンセプト・アルバムのスタイルで行った、本人的には気合の入ったアルバムで、それはわかったんですけど、案外早く聴かなくなってしまったんですよね。そうしたら、そういう人はどうやら僕だけではなかったようで、ロングセラーが多い彼のアルバムの中で異例なほど長く愛されてる曲がSpotifyでも少ないんですよね。これは一体どういうことなのか、と考えてしまいましてね。やっぱ、曲がいつものアルバムより入りやすかった分、飽きるのも早かったというか。やっぱり、もっと噛み砕きたくなるような発見の多い曲をもっと彼からは聴きたい、ということなのかもしれないですね。

・・ということで、年間ベスト、早ければ明日からスタートします!

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